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2005-01-22(Sat)

イッセー尾形演じる昭和天皇ベルリン映画祭に

イッセー尾形演じる昭和天皇ベルリン映画祭に (WEB報知<--YTDさん)

 いやあびっくりしましたね。巨匠・アレクサンドル・ソクーロフ監督のロシア映画「太陽」に、イッセー尾形が昭和天皇役で出演とか。皇后役は桃井かおりだそうで。桃井はどうでもいいですよ〜(byだいたひかる)なんだけど、イッセー尾形は「都市生活者カタログ」時代からのファンなんで。
 若い人には最近だと時々CMに出てる変なオッサン、という印象しかないかも知れないが、この人天才ですよ。天才というか、努力型の天才的演技者、という方が正確か。このところ若手お笑い芸人ブームとやらで、一人芝居系の役者も出てきている。劇団ひとりとか友近とか青木さやかとか陣内智則とか。はっきり言って、イッセー尾形の足許にも及ばないですな、全員。もっともっと精進せんとあかんですよ。
 例えばもう十年以上前の「バーテン」の演技。伝説の「アトムおじさん」。今思い出しても凄いの一語に尽きる。うちなんか今でも普通に
「もっとクーラー、きっかっせっよ」(byバーテン)
とか夫婦で使ってますからね(笑)。もうほとんどの人知らねえ、つうのこんなネタ。
 最近では「歌モノ」と言われる楽器(主にギター)を使ったものもあって、芸域をさらに広げている。中でも昔のアングラフォーク女性歌手を演じる「歌姫」、演技も凄いがその「歌」そのものが傑作。本当に当時あったあった、と言われそうな傑作だ。ここ数年の歌モノでは「大好きマイルーム」も凄い。というか、80%以上は間違いなく傑作(たまに?もあるが)。

 というわけでイッセー尾形が昭和天皇を演じる、ということだけで必見の感じがしないでもない。んがしかし、1945年・終戦直後の日本を舞台に昭和天皇の苦悩を心理的描写も中心に描いた作品…というから、問題はやはり昭和天皇の「描かれ方」だろう。
 我々の世代だと親は戦前に生まれ、祖父は実際に各地へ戦いに行った。で、けっこう「昭和天皇は短気で有名で、御前会議では戦局が悪化するとイライラして怒鳴ったりしてた」とかいう話は普通にあちこちから聞こえてきていた。いやもちろん、御前会議でそれを直接聞いた人からこれまた直接聞いたわけじゃないですよ。でも知り合いのオッサンに右翼がいて、その人でさえ認めていた。「陛下は戦後日本の平和のために、生かされたのだ」つってたし。それが生き証人がどんどん死んでいくと、いつの間にか「軍部とりわけ陸軍の暴走で、陛下は心をいためておられた」…とか美談になってるし。そうして結局世界三代独裁者=「ヒトラー・ムソリーニ・ヒロヒト」は日本だけ「東條」と教えているわけだ。それどころか最近じゃ「朝鮮併合」も「731部隊」も「南京大虐殺」も「従軍慰安婦」も、日本人が「悪いことをした」つっただけで「自虐史観」呼ばわり。いやはや右傾化物凄い昨今。

 戦前の大日本帝国憲法では間違いなく国家の最高権力者であった「天皇」が、「戦争遂行の罪」であるA級戦犯に問われることもなく、生かされた。もちろんそれはマッカーサーら日本占領軍、アメリカが共産主義陣営との対立構造をにらみ、日本を防共の防波堤にするためにとっとと舎弟分として立ち直ってもらわなければならなかったからであり、結果的にそのために天皇を利用しようとした側面がある。
 歴史に「もし」「たら」はない、とよく言うが、もし天皇が「Death by hunging」になっていたら、日本人は一億総火の玉になり占領軍と徹底抗戦しただろうか、今のイラクのように日本全土がゲリラ戦で焦土と化しただろうか。民主化が遅れただろうか。
 あるいはGHQの当初の占領政策が「戦前の右翼国家主義の駆逐・日本の民主化」から「防共」へと大転換していなかったら、もし当初の目的通り戦犯の断罪をキッチリ行っていたら、日本は解放された社会主義者や共産主義者など左翼勢力が跋扈して、結果スターリンが欲した北海道を取られて日本は南北に分断されただろうか。
 まあいろいろ想像は勝手なんだけど、「もし原爆を落とさなかったら日本は本土決戦をやろうとしていたんだから、間違いなく戦場となり焦土と化していた。だから原爆投下は正しい」という論理にちょっと似てる。もちろんこの論理は「ありもしない『最悪の仮定』を引き合いに出して『自分たちの悪行』を肯定する」卑怯な論法であることはもう明らかなんすけどね、アメリカ人以外には。

 日本は戦争中、悪いことをたくさんしました。でもいいことも、しました。アメリカも同じです。戦争というものはそういうことでしょう?

 そんなこんなでもう、日本の戦争への道、戦争で行った所業、そして戦後をフガフガしないでキチンと描いてもいいと思う。それがロシア映画ってところが何かアレですが(笑)、興味深いことは興味深い。イッセー尾形が演じることも併せて、楽しみだ。
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シラトリチカオ

Author:シラトリチカオ
白取千夏雄/編集者。1965年函館市宝来町生まれ。元青林堂「ガロ」副編集長、97年よりフリー編集者・ライター・Web構築・管理他なんでも屋と、専門学校・大学講師など。
2005年夏、白血病告知・余命宣告を受けるが「慢性リンパ性白血病」に近いタイプと判明、無治療・対処療法、2014年より抗癌剤治療、巨脾へ放射線など治療開始。2015年夏左上眼瞼にメルケル細胞癌発症、眼瞼切除、再建手術、16年にかけて放射線も耳下腺に転移、郭清術、放射線治療中に再発、左眼球ごと摘出・皮膚移植。転移再発治療中ながらまだ生涯一編集者として生息中。
二十余年の東京在住ののち、07年から京都在住。09年5月、愛妻=漫画家・やまだ紫を脳出血で失った。
やまだ紫クロニクル

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