--------(--)

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
2008-10-04(Sat)

連れ合いが低血糖発作

連れ合いであるやまだ紫は、十数年前に膵炎を「単なる胃炎」と誤診、放置されたために手当が遅れ、以後「1型糖尿病」を患うことになった。

1型というのはインスリンを作り出すための「β細胞」が何らかの原因で破壊され、体内のインスリンの量が絶対的に不足するために、慢性的に高血糖状態になる恐れがある病気だ。(ちなみにいわゆる生活習慣病としての、よく昔から「贅沢病」とか言われた糖尿病は「2型」である。こちらはインスリンが全く出ないわけではない)
インスリンが全く出ないとどうなるかというと、食事をするたびに分解された糖分つまりブドウ糖がインスリンによって分解されることがないから、血液が高血糖状態になってしまい、それが放置され続けると血管がボロボロになったりする。血管障害としては有名なのは心筋梗塞だが、他にも重大なものに神経障害(末端、特に足なんかは気づきにくいので、外傷を受けても気づかずに放置し、化膿して切断…ということもある)や、透析が必要になったりする腎症があるし、糖尿病性網膜症といって最悪失明に至ることもある。

これらが糖尿病の恐ろしい、いわゆる「合併症」だが、糖尿病だと解れば、普通はこうした合併症を防ぐために、徹底したカロリーや血糖のコントロールと、定期的な血液や血管、臓器や眼底などの検査が必要になる。生活習慣病としての2型糖尿病の場合は、初期だとカロリー制限や運動などを勧められ、注意すれば進行を抑えることが出来る。しかし1型の場合は、インスリンが全く出ない(ことが多い)から、高血糖状態を防ぐために食前、必ずインスリンを自己注射し、外部から取り入れなければいけない。

この三度三度、毎回の食事の際に必ず注射をする(ちなみに就寝前にも就寝中の高血糖状態を防ぐための遅効性インスリンの注射をする)、という行為がどれだけ大変かは、本人や周りの家族以外には全く想像がつかないことだろう。それだけでも大変なストレスと苦痛である。外食などに出かけても、食前のインスリンは即効性のものなので、直前に打たねばならないから、トイレみたいな不衛生な場所で打つか、あるいは衆目の環境でそっと打たねばならない。健康な人なら何にも考えなくていい様々なことを、食事のたびに強いられる。見ていても可愛そうに、大変だな、といつも思う。俺もまあ癌という重病患者ではあるが、とりあえずは「癌であること」そのこと自体(=いつ死ぬか解らないことを受け入れること)に慣れてしまえば、幸い慢性タイプの白血病なのでそれほど目に見える日常的「苦痛」はない。

さてこの血糖だが、本当にコントロールが厄介だ。つくづく健康な人はランゲルハンス島に感謝すべきであろう。高ければ合併症を引き起こすだけでなく、ふだん極度の高血糖になると昏睡状態になったりする。さらに、では低く抑えておけばいいのかというと、低血糖はそのまま昏睡から死へと直結するので、もっと恐ろしいのだ。
例えばこれから食事へ行こう、と家で注射を打つ。連れのように全くインスリンが出ず、糖尿病歴も長くなると、インスリンもけっこうな「単位」を注射することになる。しかも即効性のものだ。この状態ではまだ、何も食物を摂取していないのに、「急激に血糖値を下げる薬を注射した」状態だ。そうして近所へ食事に出かけて、10分程度ですぐに食事が摂れれば多くの場合は問題ないのだが、まあそれでも万が一を考えて、なるべく直前に、出来れば品物が目の前に来てすぐに食べられる、という状況で注射をするものだ。

もし、うっかり注射した後、かなり長い時間食べ物が来なかったらどうなるか。

注射によってグングン血糖値は下がる。しかし食べ物は入ってこない。血糖値は下がり続ける。そうしてやはり、昏睡する。普通は意識が混濁してきて、端から見ていると眠いのか、あるいは酒の席なら酩酊しているかのような状態に見える。反応が鈍くなってきて、こちらの問いかけにも面倒そうに、ゆっくりと応える感じだ。さらに低血糖が進むと、今度は自分の体を支えていられなくなり、目も閉じてきたりする。こうなると危険で、脳に損傷が与えられる場合もあるから、すぐに糖そのものを送り込む必要がある。
ご存じのように、脳にとって唯一のエネルギーは「ブドウ糖」である。これはもちろん、通常は毎度の食事から分解され血液中を通って脳へ供給される。しかしこれが途絶えると、脳は数分で死に始める。時間が経ち過ぎればもちろん死に至るが、直前で何とか死は回避できたとしても、脳の損傷場所によっては何らかの障害が残る可能性も高い。
糖尿病は患者とその予備軍を合わせると、日本人の10%を超えるという。いわば国民病のようなものだろうが、「メタボ」などとセットに気楽に語られる割には、このように、大変恐ろしい病気なのは言うまでもない。

今日、夕方連れと近所に食事へ出かけることにした。そこは歩いても1分ほどで近く、カウンタだけの店なので、いつも直前に右腹部をあけて注射を打つのだが、そこは当然人が来ればモロにその場面を見られることになるし、あまり気持ちのいいことではない。なので家で打ってしまうと言って、注射した後に出た。
カウンタに座ってオーダーをして、ちょこちょこっと突き出しみたいなものをいただく。そのうち、お酒も飲んでいないのに、ロレツがおかしくなってきた。「ん? これはおかしい」とすぐに思った。慌てて連れのバッグを探すと、ブドウ糖の2.8gタブレット2錠入りのパックが出てきた。すぐこれを飲めと含ませ、冷たいお茶でかみ砕いて飲み下させる。いつもだと、これでしばらくすると回復するのだが、この日はどうも戻らない。
戻らないとどうなるか…。低血糖はもちろん放置すれば昏倒する。そうなったらすぐに糖を補給させなければ脳に損傷が出る。まずい、と思って食事もそこそこに会計をしてマンションへ連れ帰ったが、まだどうも朦朧としている様子。血糖値を測定してみると、47(mg/dl)。低い。(60歳以上だと空腹時110mg/dl以下、食後1時間160mg/dl以下が正常のめやす)
なのでソファに横にならせて、ブドウ糖タブレットをもう1錠飲ませ、そこら辺の糖分の多そうなお菓子やコーヒー牛乳を飲ませたりするが、20分ほど経ってもう一度測定すると、62。あまり治っていない。今までこんなことは無かった。
放置しておくわけにはいかないので、かかりつけの京大病院へ9時ころに電話し、状態を報告する。それはすぐに連れてきてくださいと言うので、タクシーで救急外来へ向かう。しかしタクシーが救急外来の入り口が解らず、30分ほどロスしてようやく搬入した。本人はもうフラフラで、すぐにベッドに横たわらせ、当直の先生は俺の話を聞き、「すぐ糖を採らせた処置は正しかったと思います、ですからもうちょっとして測定すればきっと回復傾向になっていると思いますよ」と、血糖値が測定された。すると何と37に下がっている。「これは…すぐ注射で糖を入れましょう」ということで、静脈から直接ブドウ糖を注入、さらに溶液を500ml点滴で念のため入れましょう、ということになった。
とにかく高血糖も昏睡まで行けばまずいのだが、高い分にはインスリンで下げれば済むけれども、こうして低血糖発作を起こした場合は、とにかく一刻も早く糖を摂取させないと脳に障害が出る恐れがあるし、最悪は死んでしまうわけで、やはり低血糖の方が怖いですよ、と言われる。インスリンなら自己注射出来るが、ブドウ糖の静注や点滴は医療機関じゃないと出来ないから、一刻を争うことになるのだ。
とにかくこれでもう安心と、ホッと一息。連れの表情や反応も明らかに回復してきたので一安心。先生も「じゃあゆっくり点滴入れますから、終わったらお帰りいただいていいですよ」と言って去っていった。その後1時間半ほど病院通路にいて戻ってくるが、まだ半分も落ちてなかったので、いったん家に帰り、終わったとメールをもらってタクシーで引き取って帰宅。1時半ころだった。

5日、やまだの勤務する精華大で入試があり、専任の出席がどうしても足りないと他の先生から頼まれていて出席する予定があったのだが、もちろん無理はさせられないので、急遽休ませていただくとメールを入れる。
ここ数日、血糖のコントロールがうまくいっていなかったせいもあると思うが、どうもフラフラする、貧血かと話していた。低血糖は怖い。
関連記事
スポンサーサイト
カレンダー
09 | 2008/10 | 11
- - - 1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 31 -
最新記事
カテゴリ
最新コメント
最新トラックバック
メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

広告
アフィリエイト・SEO対策
検索フォーム
プロフィール

シラトリチカオ

Author:シラトリチカオ
白取千夏雄/編集者。1965年函館市宝来町生まれ。元青林堂「ガロ」副編集長、97年よりフリー編集者・ライター・Web構築・管理他なんでも屋と、専門学校・大学講師など。
2005年夏、白血病告知・余命宣告を受けるが「慢性リンパ性白血病」に近いタイプと判明、無治療・対処療法、2014年より抗癌剤治療、巨脾へ放射線など治療開始。2015年夏左上眼瞼にメルケル細胞癌発症、眼瞼切除、再建手術、16年にかけて放射線も耳下腺に転移、郭清術、放射線治療中に再発、左眼球ごと摘出・皮膚移植。転移再発治療中ながらまだ生涯一編集者として生息中。
二十余年の東京在住ののち、07年から京都在住。09年5月、愛妻=漫画家・やまだ紫を脳出血で失った。
やまだ紫クロニクル

シンプルアーカイブ
リンク
RSSリンクの表示
QRコード
QR
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。