--------(--)

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
2005-09-20(Tue)

いったん「両者休戦」か

9月20日(火)
なぜか夜中に1時半、2時半、4時、5時半と小刻みに目が覚めて、朝はちょっと辛かった。6時前に自発的に起きて洗顔歯ブラシなどを済ませ、PCでメール確認をすると仕事データが入っていたのでDL。そのうち採血で夜勤だったナースのKさんが来る。「すいませ〜ん」が口癖のKさんはゆっくり丁寧に針を入れてくれるので、この人の採血が一番痛くない。なので終わった後「うまいですねー、全然痛くないよ」と言ったら「ええ?本当ですかぁ?」と意外なような喜び方をするので「ゆっくり丁寧に針を入れてくれるから痛くないし、たまに慣れた手つきで雑に入れる人がいるんだけど、そっちの方が全然痛いよ」と言うと「そうですかあ?良かったー」と喜んでいた。言われたことないのだろうか。いや、本当に「私こういうのは慣れてるから朝飯前だし」みたいな風情の人が、一番困る。こちらの痛みなど全く考えずにブスリと乱暴に入れるから、そういう人にやられると実際かなり痛いし、そういう時は針を抜かれた後でも痛みが尾を引くことも多い。その後はダウンしたデータで仕事、朝食完食を挟んで完了。今日はエアエッヂ君(PCカード)の調子は比較的良かった。電波の感じは日によって違うみたい。
9時半ころ日中の担当のナースKさんが検温と血圧測定に来たので、ちょっと抗癌治療について探りを入れるが、看護婦さんとしては若くて体力もある人なら、抗癌剤を使って「キチンと治す」のを勧めるような気配だ。もちろん医師ではないのではっきりそうとは言わないが。にしてもとにかく、現在の方針未定、病名も未確定、という状態での「待ち」がストレスにはならないか、ということを心配してくれているようだ。なので俺は「いや、病院にいる方が精神的にも全然安心ですし、連れ合いの体も弱いので、家にいて世話をさせるよりは気持ちも楽ですよ」と言う。それは事実であり、実際部屋にいて入室者が手洗いとマスクをしてくれる分には感染のリスクもほとんどない。あとはこちらが外出する場合はマスクをし、人ごみをさけ、戻ったらうがいをキチッとするという自己管理に徹底していれば、何の問題もないからだ。何より万が一、の時の安心感が全く違う…そんなようなことを話すと、「じゃあもうちょっと我慢してくださいね」と言われる。
もともと俺は癌と戦うためにここへ入ったので、そのための準備を整え、万全の体制でリングに上がるつもりでの「待ち」だったし、今でもその意識は変わらない。全ては癌に勝つためであれば、何にも辛いことなどない。

10時過ぎに風呂へ入って体を洗い終わり、髭を剃っているとノックと共に「失礼します」とドアが開く気配。どうやら主治医のS先生の声のようだが、こちらは全裸なので出るに出られず。すぐ出て行ったようなので、やれ急げと体を拭いていると再びノックとドアが開いた気配。また間に合わず。慌てて風呂を出て着替え、風邪を引くとまずいのでクーラーを切りベッドに座った…というところで改めて教授回診。何度もT科長以下医師団に足を運ばせてしまったようで申し訳なく、その上俺が風呂あがりでホッカホカ、部屋は冷房切ってあるという状況なので教授のT科長、よく見たら玉の汗。T先生はいろいろ調べてみた結果、どうも進行もほとんど見られず経過も悪化しているという状況ではないので、今すぐに急いで治療をしようという状態にないという。あと今後のことは担当の先生とよく相談してね、ということ。触診でリンパ、脾臓の腫脹も確認されるが、「うーん、やっぱり全然変化ないようだねえ」とのこと。
T教授以下Dr.、研修医各位が帰った後、主治医のS先生と研修医のSさん(♀)が残り、状況の説明をしてくれる。
血液学会で件の大家と言われる先生とお会いしたので、俺の症例を直接聞いていただけたそうだ。結果、俺の細胞サンプルをまだ見てないとはいえ、手紙や口頭での所見から判断するに、悪性の血液腫瘍であることは間違いないものの、T-PLLのような白血病の例とも違うのではないか、という。悪性腫瘍つまり癌であることは、遺伝子の検査によっても確定している。だから俺は癌患者だ。だが今度はその悪性度ということで言うと、必ずしも高くはないように思える、と。したがって、白血病の場合に用いるような治療方法や抗癌剤が効くかということになると、確かに疑問もある。そしてここ数ヶ月、さらに採血その他のデータを見ても、ほとんど進行が見られない。なので現段階での最もいい選択肢としては、外来で定期的に血液や骨髄の検査をしっかりとモニタして様子を見ていき、もし悪化するようなことがあれば、その段階で速やかに治療に入る…というのが望ましいのではないか、ということだ。
で、血液中の顆粒球、この場合はばい菌を食べる方の顆粒だが、これが減少しているのはやはり脾臓の腫れによるものだろうと。したがって選択肢としては、その場でS先生が聞いて下さったそうだが、脾臓摘出ということも確かにある、けれどもそれを取ることのリスクと比較してどうかというとになる。場合によっては十数倍にも腫れる人もいるが、俺の場合はすぐに摘出…というほどではなく、取ったことによって何が起こるかということを考えると、やはりこちらも様子を見るべきだろうということ。
つまり結論は、「退院して外来で経過を注意深くモニターしつつ、治療時を見極める」ということだそうだ! ただ、あともう一人の権威であるJ大学の先生の意見がまだということ、那智勝浦の先生にしても細胞サンプルそのものを見てないということ、それらを鑑み、より診断というか治療方針を確かなものにするためには、そうした最終見解が集まるまであと一週間か十日ほどかかりそうということ。俺は国内の血液の権威お二人の見解・意見が出揃い、また入院している現在のN大の先生方の見解も一致して「経過を見よう」ということになったならば、それこそ安心して堂々と(?)退院させていただきます、と話す。

今朝の採血の結果では、白血球数は1200まで下がっていた。ただ好中球数は604、感染が心配なレベルではあるがギリギリ外来でもOK。肝心の病名であるが、T-PLLすなわちT細胞性前リンパ球性白血病であるかどうか、は不明。現在ある「なになに」という病名にあてはまらないというか、どこへ入れてもちょっと違うな、という感じのようだ。「こういうのはしょせん人間が作った分類ですから」とS先生も話されたが、とにかく珍しく、広い意味でのリンパ性疾患であり、血球の癌・悪性腫瘍であることは間違いない。T細胞性であることも間違いない。ただそこから先の「こういう名前の病気」という診断の確定がなかなかできないということだ。

このよく言われる「血液の癌」、一般にはその実態もあまりよく知られていないようだし、俺も実際自分がこうなるまでは、ほとんど知らなかったと言ってもいい。またまた付け焼刃の知ったかぶりで専門用語を並べるのは恥ずかしいのでやめるが、我々が癌といって連想するものと違うところは、全身のどこから発生するかが決まっていないし、発生した段階で良性ということはないのですなわち悪性腫瘍であり、種類・症状・タイプが実に多様であり、それゆえに治療法も多様、予後も多様、ということだ。一般的に固形癌と違い、リンパ節を通じて全身に癌細胞が広がるから、ここの部分に癌があるからそこへ放射線をあてて、というような治療も出来ない。なので、通常は化学療法がスタンダードな治療方法となる。使う薬剤もその組み合わせなども、病気の型などによってさまざまだ。
俺の場合、最初に疑われたのは白血病でも悪性リンパ腫でも日本では珍しい「T細胞性」の癌だった。例えばもし成人T細胞性リンパ腫でしかも急性だった場合は、悪性度も非常に高い「高々悪性度」であり、週単位で進行するという恐ろしいものがある。その場合はいわゆるCHOP療法という複数の抗癌剤を組み合わせた標準治療もほとんど効果がなく、7ヶ月から1年で死に至るケースがほとんど。ところがこの成人T細胞性リンパ腫にも「くすぶり型」があって、放置しても長期生存している例もあるというからややこしい。そして俺の場合は成人でT細胞性であることは間違いないが、リンパ腫なのか白血病なのかがよく解らない。なので広い意味でのリンパ性疾患、と言われている。そしてどうやら、自分でも解るが急性ではないようだ。(今はかなりの情報、症例、論文などをWEBで得ることが出来ます。そういえばたまたま今月の「がんサポート」10月号には、悪性リンパ腫の解説が詳細に載ってましたね。)

S先生も、こういうくすぶり型だとこのまま無治療で寛解することもあり、必ずしもそうした場合は骨髄移植をすることもないという。「俺が、俺の癌を、自分で倒す」とはそういうことだ。そうなればいいが!
俺は「これは悪性腫瘍つまり癌の中で言うと、変な話ですがいい・悪いでいうといい方なんですかね」と、わざと幼稚な質問をしてみた。S先生は「もちろん症例自体が少ないので無責任なことは言えませんが、これまでの経過とも照らし合わせて、いい方だと思います、この癌はおとなしいというか。」とのこと。で、調子に乗ってさらに「あと変な話ですが、最初に外来に伺った時に(前任の主治医)U先生に、『このまま放置すれば余命一年ないだろう』と言われたんですが、それは各種検査を経て、入院して一ヶ月経過を見ていただいた今では、正直なところどうなんでしょう」と聞くと、「それもまあ自分の個人的な印象で言えば、一年とか、ここ数年でどうという感じではないように思います」とのこと。つまり、あの段階で疑われた悪性リンパ腫や白血病だとしたら、余命一年ない、という意味だったそうだ。そうか、俺は生きられるかも知れないのだ! 良かった! ならば生きていこう! 神様、ありがとうございます!

先生が帰られた後、すぐに電話で連れ合いに報告をする。近いうちには一旦出られるんじゃないか、と話すと喜んでいた。思えば入院の時、このままこの家に帰って来れないかも知れないと、チラとだが思った。それに現実に、抗癌剤投与の一歩手前まで行ったのだ。だがとにかく希望が出てきた。この勝負、勝ち目が出てきたぞ。俺はこれまでの自分の生き方…タバコばかばか酒がぶがぶストレスだらけの生活を改め、免疫力を高め、癌を撲殺もとい撲滅する。自分で自分の癌を退治してやる。そして生き延びるぞ!

明るい気持ちで昼飯を食う。今後「外来で経過を見つつ治療のタイミングを計る」という方針が確定すれば、退院だ。ああ、何だかひどく嬉しく明るい気持ちだ。けれども脾臓の腫れは現実として存在し、食事の後は圧迫感があって苦しい。そして実際に白血球が少なく免疫が低下してもいる。もちろんマスクは欠かせず、感染のリスクには十分注意しながら生活して行かなければならない。癌はなくなったわけではないし、まだ癌に打ち勝ったわけでもない、ただ癌の方が今のところおとなしいだけなのだ。だが大人しくても癌は癌、敵は敵、悪党は悪党。いつ鎌首をもたげ、暴れだすとも限らない。急性に転化しない保証もなく、した場合は命に関わる事態に直結するかも知れない。だが負けるもんか。
スポンサーサイト

コメントの投稿

管理者にだけ表示を許可する

コメント

初めて書き込みます

同業界の端っこにいるものです。
いつも興味深く拝読しております。

本日の日記、確かな希望と生きていく事への力強さに
溢れていて、非常に心動かされました。

一日も早い退院と現場復帰を、ささやかに、でも
心より祈っております。

笑って下さい

今日の似てる人々

井上和香とかっぱのカータン
サーヤと竹中平蔵

どうでしょう?

なんかもりもりしてきた

わたくしもなんだか元気が出てまいりました。
こちらが励まさなきゃならないはずなのに、へんしゅうちょの文章を読むと力が湧きます。
なんとなく「あーいえおーいえ」と唄いたい気分であります。

雲の陰から光が差して

よりによって書き出しが「スプリング・サンバ(by大場久美子)」でスマン。

「俺が、俺の癌を、自分で倒す」
今年聴いた一番心奮い立つ言葉です。
このままイケイケで(<下品だなぁ)殲滅しちゃってください!
カレンダー
07 | 2017/08 | 09
- - 1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30 31 - -
最新記事
カテゴリ
最新コメント
最新トラックバック
メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

広告
アフィリエイト・SEO対策
検索フォーム
プロフィール

シラトリチカオ

Author:シラトリチカオ
白取千夏雄/編集者。1965年函館市宝来町生まれ。元青林堂「ガロ」副編集長、97年よりフリー編集者・ライター・Web構築・管理他なんでも屋と、専門学校・大学講師など。
2005年夏、白血病告知・余命宣告を受けるが「慢性リンパ性白血病」に近いタイプと判明、無治療・対処療法、2014年より抗癌剤治療、巨脾へ放射線など治療開始。2015年夏左上眼瞼にメルケル細胞癌発症、眼瞼切除、再建手術、16年にかけて放射線も耳下腺に転移、郭清術、放射線治療中に再発、左眼球ごと摘出・皮膚移植。転移再発治療中ながらまだ生涯一編集者として生息中。
二十余年の東京在住ののち、07年から京都在住。09年5月、愛妻=漫画家・やまだ紫を脳出血で失った。
やまだ紫クロニクル

シンプルアーカイブ
リンク
RSSリンクの表示
QRコード
QR
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。