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2012-04-15(Sun)

「引越」のための選択

2012年04月15日(日)

引越の見積もりに一社来宅。これは元々ネットで頼んで絞り込んだ数社の予定の前に、不動産業者の紹介で「割り込み」で入って来た予定。だけに、熱意が凄い。「今、決めていただければ」ということですさまじく値引きを提示されてぐらっとくる。しかしこういう「営業が成績をあげるために仕事を安くとる」→「結果、実際の引越作業を行う作業員が悲鳴を挙げる」例は多いという事を良く知っているから、即決はしなかった。
「明日、廃品回収だけの見積もりが来るから、今出してもらった御社の廃品回収だけの見積もり、引越だけの見積もり、両方お願いした場合の見積もりを基準に、これから一週間見積もりに来てもらい続けて結果として一番安くて良さそうなところに決める」と包み隠さずに伝えた。
情実とか何もなしに、単純に値段の問題であること。区は変わるけど同市内で距離的にはたいしたことないが、何しろ廃棄物が多すぎる。ざっと見てもらっただけで2t車では無理、3tでギリギリかという判断。そしてこういう場合、積載しきれなかったりすることもある。ま、こちとら伊達に何度も引越してないし。土壇場で積み残しを出し、「ここから先は追加料金」と開き直った居直り強盗みたいな引越業者もあった。
そういう事も世間話で伝え、色んな業者を実際見てきたので、むしろ今回も色んな業者を見たいと思っている、と話す。
京都へ越す時の業者には、二人とも病人だったこと、急だったこともあって「お任せ」でやってもらい、結果もの凄く高かったけど楽チンではあった。
今回は引越そのものより、捨てていくモノの処理である。
聞くと生ゴミ家庭ゴミ、それからレンガだの土の類はNGという。そりゃそうだろう。しかし家庭ゴミはともかく、うちの場合ベランダで猫を遊ばせようと、夫婦二人で「ベランダ猫楽園計画」をたて、ネットやレンガを買ったものが北側のベランダにある。植木鉢(もちろん土入り)も大小合わせて数個ある。
それらを引越の荷造りその他をこなしつつ俺が一人で処理するのはちょっと無理っぽい。ていうか室内用の観葉植物の鉢のうち、二つほどは大人二人がかりでやっと運べるような大きい鉢だ。そういうものを部屋に置ける生活というのが俺たち夫婦の長年の夢であった、そしてこの部屋でその夢が叶ったね、嬉しいね、良かった! …でたった一年半でハイ終了。もう新居には全く置けない。
…というような話もし、全ての部屋を見て貰い、これは要るけどこれらは全部要らない、と逐一説明していく。
結果出た見積もりは思った通りの値段で、あとはそこからいくら勉強してくれるか…という問題も知っている。
そう、即決してくれれば安くしてくれるのだ。後に予定している全ての見積もりを断り、今、うちに決めてくれればここまで下げる、という金額の提示。
それがあった。ちょっとびっくりした。そこまで下げると、おそらく当日の作業員の士気は恐ろしく低いと思う。
俺は「とにかく他の見積もりも取る。そして決める。御社は一番早く来てくれたし色々事情も斟酌してくれた、その事はもちろん好意的に判断する」と伝えた。
明日は廃棄物引取だけの業者の見積もりがある。

しばらくして、先ほど帰った業者から電話があり、「本社とも連絡したんですけど、もう決めてくれはったらこれで」というとんでもない値段を出してくれた。
ふむ、確かに移動の時期は終わり、繁忙期を過ぎて大手業者とは違い地元の業者は暇な時期なのであろう。
しかし、…とんでもなく安い…。
安いと逆に不安になる。正直にそう伝えた。
「何度か引越経験しているけれども、営業の人の見積もりと、現場で実際作業しに来る人の作業の度合いが違って、作業員の扱いが悪くなったりテンションが変わったりするのを見てきた。だから安くしてくれるのは嬉しいけれども、逆に、おたくの提示した金額にこれだけ足して、廃棄と引越同時という事にしたらお互い気持ちよくないか。内部的にそれをタバコ代に使おうが小遣いにしようがこっちは関知しないし」と話した。
営業の人はちょっと驚いた風情で、「いやそこまで言うてくれはるのは有り難いです」というので、「とにかく明日の見積もりは取るよ、最悪、廃棄物引取は明日の業者になったとしても、引越はお宅に任せますよ」と話した。
「一円でも安くしろ言う客は多いやろけど、見積もりより高くしろという客は珍しいでしょ」と言うと「ほんまです」と笑っていた。
何となく話していてお互い人物を見ている。向こうは営業のプロだろうが、こっちも奇人変人凡人含めて人とあってナンボの商売を長いことやってきたニンゲンだ。そこで何となく波長が合った。
正直に言うと、それでも当初覚悟していた値段より相当安い。助かる。
向こうは向こうで何も仕事がないより、値引きしても仕事が入って助かる。
俺の方は、出来るだけ毎日不要なものをちょっとずつ処理をして、家庭ゴミとして出せるものは出して減らしていくから、と話した。業者はすぐに戻ってきて、段ボールを100枚くらいとガムテープをサービスで持ってきてくれた。うん、有り難い。お互いこれで気持ちいいじゃない。

さて。
これから本格的に、新居へ持っていくものと、「廃棄」する・つまり「不要」と判断するものを分けていく。
自分のものは何度も書いているように、もうほとんどない。衣類すら、俺のローテーションは季節ごとに2,3種類程度。
連れ合いは大学で教えるようになってから特に衣装が増えた。
本人が「いいよあるので」というのを、俺がむしろ「ダメだよ、オーバーオールは体のこともあって必須なんだから、せめてシャツとかセーターとか小物でお洒落しなよ」と勧めた。
そういうものがクローゼットを開けるとたくさん、視界に入って来る。

これらを「廃棄」か。

3年前からずっとかけてあり、時おりホコリを払い抱きしめていた赤い室内着をまた、ギュッと抱く。
もう、とうにあの人の匂いはしない。けれどもこれをゴミ袋に丸めて放り込む事など、出来るわけがない。考えただけで涙が溢れてくる。これはあの時着ていた服、ああ、これはあの時の。こっちはあれか…。
次女のゆうちゃんは昨日電話で「うち収納には余裕があるから、捨てられないものはとにかくどんどん送っていいよ」と言ってくれた。有り難い、でも限度があろう。辛い選択をしなければいけない。

ワンピースとセットになったレースの上掛けがハンガーにかかっているのを外す。
まるでそこに連れ合いが立っているかのようだ。とても捨てられず、ゆうちゃんに送る箱に丁寧に折りたたむように入れるのだが、ハンガーの肩部分を持ち、スカートの膝部分を折り、さらに胸の部分を折って箱に収納する。
人が、箱の中に崩れていくというか、畳み込まれていくような感覚。胸が詰まる。
ちょっと泣いた。

心を鬼にするのではなく、
安らかな、穏やかな気持ちで服を箱に詰めていく。ふんわり、優しく重ねるように。
俺が連れ合いの死後いつも抱きしめていた、ずっとかけてあった赤い部屋着は、やはり新居にも持っていくことにした。
抱きしめるものがない、存在がない事ほど生きるうえで悲しく寂しいことはない。
そんなのは単なるモノ、物質である事など言われなくても解っている。けれども、そのモノにすがるのが現世に生き、もがきあがいて暮らす人間というモノだ。
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コメント

それでも

読んでて私ももらい泣き。
寂しく思うお気持ちがひしひしと伝わってきました。
でも、それでも、今でも
そこまで愛されているやまださん、幸せな女性です。

Re: それでも

服や愛用品は、ストレートに「その人」の在りし日の姿に直結しますね。
その時の声、表情、光の感じだとか季節感など含めて、もの凄い情報量でこちらに「思い出」を訴えてきます。
同時に虚無感と喪失感と寂寥感も。
以前、某女性誌でお世話になった女性編集者の知人が、ご主人を亡くされた後数年経ち、「一生このつまらない感じ」をひきずっていくのでしょう、というような事をおっしゃられました。やまだを亡くした直後です。
あれから数年経って、本当にそうだな、と。
悲しさや辛さは薄れても、この「つまんねえな、あんたがいないと」という感覚。
自分の「連れ合い」、相棒、半身が失われた…という感覚はもう回復することはないのでしょう。
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シラトリチカオ

Author:シラトリチカオ
白取千夏雄/編集者。1965年函館市宝来町生まれ。元青林堂「ガロ」副編集長、97年よりフリー編集者・ライター・Web構築・管理他なんでも屋と、専門学校・大学講師など。
2005年夏、白血病告知・余命宣告を受けるが「慢性リンパ性白血病」に近いタイプと判明、無治療・対処療法、2014年より抗癌剤治療、巨脾へ放射線など治療開始。2015年夏左上眼瞼にメルケル細胞癌発症、眼瞼切除、再建手術、16年にかけて放射線も耳下腺に転移、郭清術、放射線治療中に再発、左眼球ごと摘出・皮膚移植。転移再発治療中ながらまだ生涯一編集者として生息中。
二十余年の東京在住ののち、07年から京都在住。09年5月、愛妻=漫画家・やまだ紫を脳出血で失った。
やまだ紫クロニクル

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