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2012-04-17(Tue)

エロ本

2012年04月17日(火)
今日も引越作業。休み休み、それでもへとへとのクタクタ。何しろ寝て起きても疲れが全く取れていない。
ていうか朝起きたら、疲れている。これじゃ一ヶ月後どうなってるのか怖い。
俺がまだ健康体で、連れ合いが原因不明の下血に悩まされていた頃、でかい引越をやったことがある。
長年暮らした団地と、近くに借りた仕事場と、その同じフロアに借りた長女の部屋を統合し、新しいマンションに移るという状況だった。13年くらい前か。

とにかく団地の不要物はすさまじい量で、狭い団地によくこれだけの荷物を入れたものだと思うほど。仕事場の方も、団地から仕事だけのために借りたはずがいつの間にか生活拠点になっており、余計なものが増えていた。
本当に、3人とも「死ぬかと思った」というくらいハードな引越だった。
廃棄物は4トンロング一杯で溢れ、見積もりで言われた金額より割り増しを取られた。こっちはこれくらいの量で何トンだなどという計算は出来ないんだから、そっちが言った金額で引き取れよ、と思ったが残されてっても困るので数万ふんだくられた。
「後は綺麗にしておきますから」と言ってたくせに、仕事場のマンションへ戻ってみると、カーペットや小物、何より外すと言っていたエアコンがそのままだったり、ひどい有様で、結局自分たちでそれらを片付け、粗大ゴミの回収連絡をし、金を払ってシールを買い、指定された場所までエッチラ運んだのだった。
やれやれと思ったら大家から電話があり、こちらが「不法投棄をした」とカンカンに怒られた。俺たちがキチンと置いた荷物を誰かがあさったらしく、崩れてめちゃくちゃになっていたらしい。それを見た事情を知らない近所の人が、おたくのマンション借りてた人が運んで来たと目撃談を語ったらしい。ていうか漁った連中の方を目撃してろよ、と思ったがしょうがなく、俺たちは事情を説明したが、ひどい事をさんざん言われて凹んだものだ。
その時、連れ合いは病弱だったことにハードな引越とストレスが重なって、下血をしたのだった。
俺も今回はやばいぞ、冗談抜きで毎朝血尿や血便が出ないか恐る恐る確認する日々である。尾籠であるが本当なのでしょうがない。

…朝起きるとすでに疲労困憊で、のろのろと体を起こすと脇で寝ていたユキも一緒に起きて、「にゃあ」と鳴く。一緒に階段を降りる。足腰、腕や肩が重い。部屋の中は台風の後のような状況。しかしゆっくりとではあるが、着実に進んではいる。問題はその「ゆっくり」という速度で間に合うのかどうか。地球滅亡まであと…じゃなくて引越当日まであと37日。
とにかく壁に飾ってあるやまだ紫の油彩画や水彩画の額を外して、他の写真などと一緒に養生しつつ丁寧に梱包。大きな絵と描きかけのキャンバスなどは、虔十書林の多田さんが預かってくれるというので、お送りさせていただいた。
多田さんご夫妻には蓮根にお店がある頃からずっとお世話になりっぱなしである。
今、お店は神田小川町にある。やまだ紫が描いた猫の看板が目印で、本を買うと袋にもちゃんと印刷されているから、ファンの方はお店へ行って本を買って下さい。お願いしますよ本当に。

廃棄にしても次女・ゆうちゃん宅へ送るにしても、新居へ持っていくにしても、とにかく本は重い。
本は断裁処分するのでなければ、通常ヒモ掛けはしない。業界では「端本」「ヤレ本」など色々言い方はあるが、要するにヒモがあたる上下の2冊は、ヒモの食い込みで本が傷む。結束が20なら1割がヤレ(=ダメ、エラー、使い物にならない…とかまあそういう意味)になってしまうから、書店にとっては大きい。雑誌ならまだいいが書籍ではあり得ない。

ところで普通、引越となると本は皆さん段ボールに梱包されるであろう。
一応コツを言っておくと、なるべく小さい箱にキッチリ詰めること。大きな箱に詰めると重いし、腰をやります。
我々元零細版元の社員編集者=土方は書店、取次への配送の梱包も当然流れでやっていたので、大口の注文は段ボール箱に入れるが、十~十五冊程度の場合は上下に充て紙をあてて、ヒモでがっちり縛った。
充て紙はもちろんヤレ本を出さぬためで、これには返本で汚れたカバーを3枚、折りたたんだものを使っていた。暇な時はこの「アテガミ作り」も仕事の一つだった。
熟練してくると、15部ほどの本の上下に宛て紙を充てて、業務用の太いビニール紐をくるくるっと3回まわしがけ、角でガッチリと食い込ませた後、ささっと結んで専用のカッターで切るまで7~10秒くらい。
今はもちろんそんな事したら手の平から血が噴き出すが。

あと、結束ではなく梱包(大きな紙で本をくるむ)を作ると、意外と楽に運べます。
新聞紙は弱いのでダメ、出来れば我々版元が使っていたようにクラフト系の紙がいいんだけど、普通の家にそんな紙、しかも大きいのはないから、引越ならロール買いしたエアキャップ=通称プチプチを切って、A5判の本ならだいたい厚さにもよるけど15冊程度で1梱包作ります。5部ずつ向きを変えて重ねると、後で梱包を重ねる時楽。
エアキャップのキャップ側、空気の入ってる方を「外に」して、平らな方を内側に、本を重ねて、あとは包んでテープで止めるだけ。片手で持てるくらいの本の塊になり、投げられても大丈夫だし、リレーも楽チン。
なぜエアキャップの空気側を外にするかというと、内側にするとその凹凸で本の角がやられるからです。クッションなのにそれで本を傷めちゃ意味ないわけ。

まあそんな事を思い出しつつ、連れ合いの復刊本でばらけていたものは梱包し直し、蔵書は小さい箱へ詰めていく。
メゾネット=二階の本棚は空になってきたが、押し入れの下にはいくつか段ボール箱が残っている。これらがみんなやけに重い。ヒイコラ出すと俺の集めていたCDがぎっしり入っていたり、連れ合いのLPレコードのなぜか一部だけだったり。東京から京都へ越して来た時の、引越会社の段ボール箱だ。一応開けた形跡はあるが、そのまま4年半、動かしていない。
東京→京都の引越は、とにかく連れ合いの通勤と体力を考え「もう引越ちゃえ!」とドドドッと勢いで決めて実行したので、こまけえこたぁいいんだよ状態だったのである。
その一番奥から、やけに重い箱が2つ出て来た。小さいがこの重さで「ち・掲載誌」と書いてある。
俺の掲載誌だと?ああ、コート紙が多い…あれか。

昔…というか若い頃、ガロ編集部に居た当時、本当に安月給だった。
やまだ紫と団地で暮らすようになったのは21-2歳くらいだったと思うが、「ヒモじゃないんだから」と家にお金を入れたら、昼メシや自腹の「交際費」を引くとほとんど残らなかった。(自腹の交際費については過去に何度も書いてるので略)
長井さんは本業に差し障りがなければバイト黙認だったので、手当たり次第にイラスト似顔絵捨てカット、レイアウトデザイン何でもやった。本当、エロ本業界にはお世話になった。特に三和出版さん。N戸さんが早くから仕事をくれ、その他の部署の人たちからもよくしていただいた。最盛期(?)には銀座のマガジンハウスさんまで出かけて、平凡パンチの記事ページで似顔絵まで描いた。
で、2回の引越を乗り越え、残されていた箱を開けると、二十代前半の頃にバイトさせてもらったエロ本の「掲載誌」がドカッと出て来た(笑)。樹まり子がデビュー数ヶ月で「注目新人」みたいな事を書かれている。林由美香がセーラー服でグラビアに載っている。もっと前のものはさすがにどっかへ行ってしまった=何度かの引越で捨てたらしい。
80年代のエロ本って今お宝なんじゃないのかな、とチラッと思ったけど、今そんな事いちいち考えている余裕はない。
捨てるのか、売るのか、持っていくのか。
連れ合いの原画原稿は当然保存なのは言うまでもなく、インタビューなど本人の掲載誌ならとりあえず保存。漫画作品を連載した雑誌のバックナンバーは、単行本化されたものは本人が「ガロ」などを含めて執着しなかったので、それに倣う。
しかし自分の、しかも若い頃にバイトで描いたカットやらイラストAV評やら、読者投稿欄の隅のどうでもいい捨てカットだけのエロ本など、コート紙が多い分やけに重いし、どうでもいい気がする。
でも間違いなくこの時、俺たち夫婦は裕福ではなかったけれども日々幸福で、仲良く穏やかに暮らしていた。外で家族で何かを食べるのはたまの贅沢、家族が家でご飯を食べるのが当たり前。夜になったら子どもを寝かせ、ゆっくりテレビを見ながら二人で晩酌。
連れ合いは「いやらしいわねえ(笑)」と言いながら俺の「バイト結果」に苦笑し、「子どもたちに見せないでよ」と釘を刺したっけ。グラビアのアオリ(編集者が考える、台詞だったりキャプションだったりするアレ)を読んで吹き出したり。ま、楽しかった。

そんな時に「本気でまた漫画描こうとは思わないの?」と聞かれたこともある。
俺は「いやいや、あなたを始め、ガロ編集部に居たら凄い作家さんの作品、場合によっては生原稿まで見られるでしょ。自分がいかに才能がないか、小物でしょーもない非才であるかよぉぉぉく解ってますから」と答えた。
皮肉とか卑屈な気持ちで答えたのではなく、本気でそう思っていたし、今でもそう思っている。普通の日常、夫婦で晩酌か何かしてる時の他愛もない会話、何かの流れでそういう話になった時じゃなかったか。
メジャー誌の漫画家さんたちは、読者アンケートや売上げという言い訳の出来ない「数字」で突き上げられ、編集から容赦ない「指導」や「要求」を受ける。俺には無理だ。殴ってしまうかも知れない。
「ガロ」では、それこそ日々接している、見たことのないような新しい才能たちに、自分が勝っているとは到底思えない。
そう、「分を弁える」という事。
エロ本で名前も出ないカットを一枚いくらで、絵柄も「これ風に」とか「これ真似て」とか言われて「ハイハイ」と小器用にころころと変えて、金に換えて糊口を凌いでいるくらいがお似合いだと、もう知ってしまった頃だ。
そう考えると目の前にあるエロ本(笑)も、ちょっとそのままポイと捨てるのも自分の青春を否定するようで、「とりあえず保存」にしてしまった。
連れ合いのことだけではなく、色々と自分の事も考えねばならないんだなあ。
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シラトリチカオ

Author:シラトリチカオ
白取千夏雄/編集者。1965年函館市宝来町生まれ。元青林堂「ガロ」副編集長、97年よりフリー編集者・ライター・Web構築・管理他なんでも屋と、専門学校・大学講師など。
2005年夏、白血病告知・余命宣告を受けるが「慢性リンパ性白血病」に近いタイプと判明、無治療・対処療法、2014年より抗癌剤治療、巨脾へ放射線など治療開始。2015年夏左上眼瞼にメルケル細胞癌発症、眼瞼切除、再建手術、16年にかけて放射線も耳下腺に転移、郭清術、放射線治療中に再発、左眼球ごと摘出・皮膚移植。転移再発治療中ながらまだ生涯一編集者として生息中。
二十余年の東京在住ののち、07年から京都在住。09年5月、愛妻=漫画家・やまだ紫を脳出血で失った。
やまだ紫クロニクル

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