2012-09-23(Sun)

やまだ紫の猫

2012年09月23日(日)
半年に一度、「知遊」という医療業界紙にやまだ紫の詩画集「樹のうえで猫がみている」(思潮社)の中から毎回一篇、再録掲載をしていただいている。何度か書いているが、当初は再録だけというお話と勘違いしており、実は毎度自分がやまだとの思い出や作品についての文章を書かねばならないという過酷な(?)連載である。
ちょっとでもやまだ作品に触れたことのない人に興味を持ってもらい、そこから本格的に他の作品へ興味を持ってもらえたら、ファンの世代をまた次へ伝えられたら…という思いで、下手糞な文章を何とかかんとか絞り出し、生き恥を晒す思いで毎度掲載いただいてきた。

その編集の佐藤さんは「編集会議でも評判いいですよ」と言ってくださり、先日は詩人の井坂洋子さんからお手紙で「いいお文章だなあと、読み耽りました」とお世辞をいただきました。お世辞を。
あの、井坂洋子先生が俺のクソみたいな文章を褒めるなどという事は天地がひっくり返ってもあり得ないので、絶対にお世辞だという確信と自信がある。(とはいえ井坂さんが軽々に、他人行儀にお世辞を言う方ではないわけで、要するにその、謙遜と照れです)

それはそうと、ちょっと前に次女のゆうちゃんと電話で話をしていて、引越をした際にいったん預けた大きな絵だが、元々ある方に売るために描かれ、結局その方は(その人のバブルが崩壊した的な感じで)キャンセルとなってしまい、行き場がなかったのだが、思い切って預けている古書店主の多田さん(虔十書林)に、
「この絵を買いたいという人がいたら、売ってもらってもいいのではないか」という話をしたことを伝えた。
元々生前から売るために描いた絵で、それが宙に浮いていたもので、何となく可哀想にも思えた。
ゆうちゃんには
ママの絵は正直、一枚たりとも手放したくない。でも、それは自分一人でママの作品を独占し、死ぬまで抱え込んでいくということ。作品は本になり遺っていくけど、本にならない漏れた作品の扉絵、一枚絵もたくさんある。正直、それらを全て俺が生きている間に電子化する時間も体力も財力も、ない。
 だから、多田さんは何しろ一番のやまだ紫ファンだし(いや、一番は俺だから二番か)、その多田さんがこの人は本気でやまだ紫の絵が好きなんだな、ずっと愛してくれるんだな、と思ったんならその人に売ってもいいんじゃないか、と話したんだ

と伝えた。
ゆうちゃんは「うーん、でも確かに、ママの絵がママを好きな人のところで色んな人に見て貰える方が、絵もママも嬉しいかも知れないね」と言っていた。
もちろん、作家が死んだら原画たたき売り、そういう話ではない。
彼女が原画展を京都で落ち着いたら開くんだ、と言って書いていた水彩画や、昔のイラストを額装したものなどは、出来れば一度展示会みたいなのをやって、欲しい人には販売したらどうか、と。
とはいえ、彼女の水彩画は展覧会をすればほぼ全て毎回完売した。油彩画は油彩自体が元々少なく、有名な青林堂版「性悪猫」の初版カバーの油彩画は、長井勝一夫人の描いたピエロの水彩画と交換したそうで、手元には無い。
50号は家に置けず預かってもらっているし、もう少し小ぶりの好きな小物を集めた油彩画は京都精華大学へ寄贈した。展示会をやるほどの量は実はもうないのだ。
やまだ紫の、水彩画も、油彩画も、もう大変な貴重なものになってしまったのである。
あとは復刊「性悪猫」の表紙(油彩)だが、これは元々の約束通り多田さんにお預けしてある。
ずっと、神保町にお店を移す時にはロゴと猫の絵を買い取ってくださったり、いつもいつもお世話になってばかりだった。なので、生前やまだが「ターさん(多田さん)にお任せするから」と言っていた絵なので、引越で預かっていただく絵を一緒に、もうお送りしてある。
今回、復刊された「性悪猫」のカバーに使って貰えたし、絵としてもずっと残るし、多田さんがお持ちになるにしても、あるいは違う誰か熱心なやまだファンの方の元にいくにしても、その人が飾ってにっこり、素敵な気持ちになってくれたら、本人も嬉しいだろう。

絵は人に見せるために描かれる。
俺が個人の所有物のように、死ぬまで抱き抱えて死蔵させるものではない。

ここ半年ほど、5年前より確実に「死」に近付いていることを実感している。
いろいろと自分自身の人生の店じまいと、何より連れ合いの大切な画稿のことも、何が一番いいか考えざるを得なかった。
やまだ紫は漫画家であり、絵を描いてそれを大量に印刷される雑誌や本にすることで対価を得てきた人だ。
ただ、単行本としてまとめたものに関しては、元の原稿、原画がなければ次の復刊が出来ない。だから俺は絶対に守る。その前に健康に自信がないけど、死ぬまでは守ってみせるし、死んだ後はゆうちゃんが守ってくれる。
それらにしても、原画は死守するが、これもだからといって復刊できなければ死蔵である。まだ知らない人に見てもらいたい作品や絵がたくさんあるのだけどなあ。

…で、別な知人に、これも最近たまたま
「やまださんのイラストで限定カレンダー手作りで作ってくれたことあるじゃないですか、ああいうの、例えば昔の絵とか名場面なんかを複製して、ポストカードでもしおりでも、シャツでもカレンダーとかまた作って欲しい」と言われた。
いや、マニュファクチュアなのでけっこう大変なんすけど、どうなのかな、需要があれば作りますけど、クリスマスまでには。ちょっとfacebookとここで告知して、ここでは「いいね」と思ったら左のメールフォームからご意見下さるなり、皆さんのご希望含めて募集します。忌憚なくご要望その他、お寄せください。
好きな場面とか、絵があったらそれも教えていただけると嬉しいです。これまでの絵もだいたい保存していますので、「あの展示会の時のあの絵!」とかでも結構です(笑)。
★以前の絵などは、(やまだ紫クロニクル)内の「OLD CONTENTS」→「ギャラリー」から見ることも出来ます。

そういえば、以前作ったやまだTシャツ(石、伸びをする猫、水洗トイレで用を足す猫)がけっこう在庫があって、さいたまのゆうちゃんちに迷惑をおかけしておりますがゆえ(いやほんま迷惑かけてすんませんね、狭いもんでこっち)、そこら辺も時々「あれどうなったんですか?」という問い合わせをいただくんですが、近日ちゃんとお知らせするつもりでおります…。
ジロー月みてないた
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卓上カレンダーなんか欲しいです。前にあったみたいな。

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どうもです。
卓上、だと工程が一つ増えますね…
壁掛けとかなら、家内手工業でも割合楽なんですけど。

あとメール欄より「マグカップ欲しい!」というご希望があったんですが、さすがに俺、手作りは無理です…

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シラトリチカオ

Author:シラトリチカオ
白取千夏雄/編集者。1965年函館市宝来町生まれ。元青林堂「ガロ」副編集長、97年よりフリー編集者・ライター・Web構築・管理他なんでも屋と、専門学校・大学講師など。
2005年夏、白血病告知・余命宣告を受けるが「慢性リンパ性白血病」に近いタイプと判明、無治療・対処療法、2014年より抗癌剤治療、巨脾へ放射線など治療開始。2015年夏左上眼瞼にメルケル細胞癌発症、眼瞼切除、再建手術、16年にかけて放射線も耳下腺に転移、郭清術、放射線治療中に再発、左眼球ごと摘出・皮膚移植。転移再発治療中ながらまだ生涯一編集者として生息中。
二十余年の東京在住ののち、07年から京都在住。09年5月、愛妻=漫画家・やまだ紫を脳出血で失った。
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