2013-03-15(Fri)

「寄生少女」顛末

三条友美先生の新刊「寄生少女」、無事3月14日のホワイトデー…じゃなくて三条先生の誕生日に発売されました。

いろいろと裏話を聞きたい知りたい教えて欲しい、そんな方のお声が複数届きましたんで、ちょっと早いですが出版に至る「顛末記」を。
これは俺が死んだ後おおかみ書房血風録 第一巻序章」に、千葉代表の手によって加筆改稿のうえ収録されるはずなので、よろしくお願いいたします。

さて事前に予約された方にはもう届いていることでしょう、そして14日からは全国の「まんだらけ」各店と「タコシェ」でも発売が開始されたので、もうお手元にこの素晴らしい「リリカル・ホラー」がある方も多いと思いますが。

発行元のおおかみ書房・千葉ちゃんは本が部屋に大量に届いてから、
geu_20130316042906.jpg
(▲部屋に置くと圧倒的存在感の1000部の迫力)

こつこつと予約の注文をシールにすべくデータ化し、家内手工業でもってプチプチ入り封筒に(ソフト書籍ゆえ、表紙が折れたりしないよう)そっと入れて、封筒を閉じたところにシャチハタで「割り印」を押すという作業を続けていた。

発売日前に届いた遠方の人もいれば、ジャスト発売日だったという近畿地方の人もいて、まあとにかく遅れずに届いたんだので早い分にはいいでしょう。

何回でも書きますが、
実にいい本です。

ここに至るまでの経緯は劇画狼がブログにて、珍しくまじめに
三条友美ホラー短編集「寄生少女」、本日正式発売&皆さまへのお願い。
として書いてくれているので、(ていうか俺のサイトの日記も作業進行記録として引用されている)ぜひご覧ください。

俺はTwitterをやめてしまった(キチガイに粘着されたので、あはは)のでFacebookで基本知ってる人としかつながらないことにしているが、彼のTLには届いた、手に取った、読んだ、すごい! という感想が続々と寄せられている。
嬉しいことだ。

本が出来上がって、家に届いた日に「裏話的なことはどうでもいい」というようなことを書いた(3月6日)し、先日のフライングお渡し会(3/9於・大阪心斎橋)に来て下さった方々にはこのあたり、二人でけっこうお話をしたのだけど、「お渡し会」に行けなかったという東京その他の方から「裏話だけでもちょっとだけ…」というご要望を意外に多くいただいた。
そして、そのほとんどが新刊を買って下さった方々という…。
お客さんは大事にせなアカンやろ。

というわけで、もう一回整理しながらつらつら思い出しています。
劇画狼こと、おおかみ書房代表である千葉ちゃんから
「ねえ、本出したいんやけど、まず何すんの?」
というシンプルな質問が来たのが1年くらい前だったか。
その前、「なめくじ長屋奇考録」の年末恒例「このマンガがひどい!」の2009年から連続でゲストで出させてもらっていたので、「いずれマンガの雑誌(あるいは単行本)を出すのが夢」ということは聞いていた。なので「ほほう、本気なんだ…」とちょっと感心した。

彼は熱心に、三条友美先生の「ホラーM」(ぶんか社)さん連載作品のうち、単行本「きりきりぎったん」未収録作品がけっこうある、「人妻人形アイ」がもし続きが出なかったらもちろんそちらを出したかったが無事出ることになったので、じゃあぜひ「ホラーM」未収録作の方を世に送り出したい…
というようなことを、飲みながら話してくれた。
だが彼は出版はおろか編集にも全くといっていいド素人である。ゆえに「なにから始めたらいいの?」と可愛いく小首をかしげたのだ(それはウソ)。

まず、原稿は? 何ページくらい? 予算は? みたいな基本的な話を聞き取りした。
この段階でやるべきことは、まず作家さんにキチッと趣旨を説明し了解を取り付けて、原稿を引き上げてくることからだね、と話す。
何しろ彼は三条先生にもよく知られ、作中にもときどき登場するとはいえ、この段階では単なる一読者、一ブロガーに過ぎない。
で、あとは熱意でしょ、と話した。
たぶんこいつ以上に熱意のある奴はいないので、それが三条先生に通じるかどうか。
要は意気に感じてもらえるかどうかだけど、この時はっきりと劇画狼が言ったことがある。

「出さしてもらうからには、商業誌に負けない、いやそれ以上のものを作りたい」

俺もそれを聞いて、こちらもはっきり言った。
「出すからには当然だ。そして、だから三条先生には商業誌と同じだけの印税をちゃんと払うこと」

彼は俺にも「ちゃんとギャラは払います、ただし初版がすごいスピードで売れたら…」とニコニコしながら言うので、
「いらねえよ」
と答えておいた。
言っておくけど、今に至るまで、一銭も対価をもらってないからね。これから儲かったら判らんし、彼は絶対払う! と言ってるので、たぶん絶対払われるのだろうけど。それが100円であったとしても、俺が納得すればギャランティとなる。

要するに意気に感じて、好きだからやるってことだ。三条先生にきっちり「大手と比べても恥ずかしくない比率の印税」をお支払いさえしてもらえれば、こっちのギャラとかこまけえこたぁいいんだよ! というスタート。
ほんとうにこんな感じでスタートして、んでこないだゴールしたんだ。

彼はこの話し合いの後すぐ三条先生に電話をして了解を取り、後に上京して原画を受け取ってきた。
ていうか、三条先生と二人で一から作品を仲良く読み返したという。
その嬉しそうな報告を聞いて「あ、こりゃいい感じになってきたぞ」と思った、本当に。

その後、時々「台割って何?」「写植ってどうするんスか?」というような質問を交えられつつも、俺も協力するからにはそういうことを優しく丁寧に教えつつ、
「原画というものは世界に一つの一点もの」
「基本的に作家さんの意向が第一、編集はお手伝い」
「編集は作品の並びと、どんな本にしたいかというイメージ、あとは管理能力」…

などなど、それ以外にも俺が30年近くかけて培ってきた「マインド」も刷り込んだつもり。
「編集は裏方」というマインドは、今回のおおかみ書房はしょうがないので封印、何しろ編集人と発行人が同じなので、出版の両輪たる「編集/営業」が同一人物だということ。こりゃがんがん前に出て売ってもらうのも仕事。俺は従来通り、裏方ということ。生涯一編集者だ。

6月の末、大阪・なんばで飲みながらライブイベントの打ち合わせと、単行本の進行確認。

7月22日には大阪・阿波座のnu thingsさんで「この漫画がひどい!劇盛」というライブイベントを二人で行った。(俺は笑って相づちを打つ係)
ここで、はじめて「年内目標(この時は)に、三条友美先生の単行本を出します」と公表。

前にも書いた通り、
こんなにすばらしい作品があるのに、どこも出さない。
このままだと埋もれてしまう。
なら俺が出す。


…この心意気はあってもなかなか実行に移すとなると厄介なことが多い。
印刷・製版・製本。流通。宣伝…。
しかも「台割って何?」レベルの人間をカバーするプロの編集者が必要だ。
で、まあ「おおかみ書房編集最高顧問」とかいう持ち上げられ方をされ、実際は「編集実務」をちまちまやるという「経験者」は自分ということでいい。
出版費用は彼が用意するのだが、正直、商業印刷は無理だ。
けれど同人印刷なら製本までグロスでやってくれるところを数カ所アイミツ(見積もりを複数とること)取って、交渉すればいい…と教える。
彼はちゃんとノートにメモをとりながら話を聞いていた。本当だよ。
聞くところは、マンガの経験があるか(同人なのであるだろうけど)、薄い本以外にも作ってるか、一番大事なところは「アナログの漫画原稿とデータ入稿の混在」が可能かどうか…などなど。
「アイミツとかそういう交渉ごとなら得意なので任せろ」と、彼の目が異様な光を放ったので、きっと大丈夫だろうとこちらも思った。
全部最初から編集方面は任せとけ、と言って俺がやっても良かったのだが、彼が覚えたいというのと、俺もその方がいいと思ったのと、それと俺がいなくなっても大丈夫で続けて欲しいから。←ここ加筆したけど、本当ですよ

そこからは何度かスカイプやら電話のやりとり、あとは彼が京都へ来て、次は俺が大阪へ行き、というのを交互に何度か。その間に特に議論を戦わせ、内容に関して詰めていった…わけでもなかった。もう出すと決めたのであとは劇画狼いわく「俺が金を用意さえすればもうGOですから」、というわけでもっぱら将来的な展望も含めた先の話まで、出版界のことや編集のことなど大小とりまぜてあれこれと。


10月、「資金のめどがつきそうだ」という報告があったあと、彼は上京して三条先生に原稿を受け取りに行った
それからしばらくして「原画を全部コピーして収録順を考え、並び替えたものをクリアファイルに入れた」と、それがドカッと俺の部屋に届いた。

「マンガ原画は繊細なもの」。当然ソーターなんかにはかけられない(写植が脱落したり、詰まったりした場合に原画が破損する危険性がある)から、一枚4円コピー機で、当然一枚一枚コピーを取ったわけ。
あの筋肉質でむちむちの男が丁寧に一枚一枚、200枚くらいの原画をコピーしている様子を想像すると、何かおかしい。そして、ちゃんと漫画の原画は貴重で大切なものだということが伝わっていて嬉しい。

とにかく、受け取ったファイルを一気に読んだ。
すぐ立て続けに3回、読んだ。
普通「これとこれ入れ替えた方が」だの「これ最初じゃない方が」とか「最後これかな」など、編集者同士の意見交換があってしかるべきであるし、そのために奴も俺にファイルを送ってよこしたのだが。
いやもう、1作たりとも並べ替える必要が無かった。
俺もこう並べただろうか、と考える。
最初の一作目から中盤への流れと、特に中盤からの一気のドライブ感がすごい。読み終えたあと、ふう、とため息が出る。
なんだかもう一回最初から読みたくなる。

三条ホラーは、基本的にハッピーなのである。
もちろんグロい描写やバッドエンドも多いが、本人は幸福だったり、何よりグロや不幸の前面に「かわいい」が大きく手を広げて立ちはだかっている。その後ろにウジ虫とか臓物とか死体とか「ぎょほっ」とかがチラチラ見えるけど、それらを「かわいい」が覆い尽くしているのだ。

リリカル・ホラー」だ。
だからグロなのに、ホラー作品なのにかわいい。かわいいから手元に置きたい。手元にあると飾りたくなる。手に取りたくなる。ホラーなのに。そういう本になればいい、そうなれば成功。
ファイルに並べた漫画読んでっただけで、もうこれが本になったところを早く見たくてしょうがない。
こういう感覚は久しぶりだ。

正直、ホラー漫画というジャンルはあまり捕捉していなかった。
劇画狼が押しているので時々手に取るものもあったが、三条先生の作品も数年にわたっているし、既読のものがむしろ少なかったのも、先入観無く読むことに幸いした。
うん、並びは完璧
これで「編集」の仕事の8割くらいは終わったようなものである。


11月のはじめ、彼が「じゃあ次は何をすればいいの?」と小首をかしげたので、一回家に来てもらうことにした。
部屋では大の男二人(それもオッサン)が全作品のファイルをキャッキャウフフ言いつつ読み返し、「シャカシャカぴえろ」がなぜか俺のツボにはまって大笑いしたりしつつ、並び順を再度、お互いに「これで問題なし、いや完璧」だと確認。
タイトルは彼が寄生少女」がいいんじゃないか、というので、異議無し。

版元名は「ウルフブックス」「狼書房」で「狼書房」が残り、次にやつが「おおかみ書房の方がかわいい」と抜かすので、「おおかみ書房」になった。

印刷所も知り合いの大阪の業者からネットであれこれ、その他口コミを調べたり当然アイミツも取った結果、POPLSさんに決めようと思う、と連絡があった。
POPLSさんっておい…。正直、ちょっと驚いた。
というのは、POPLSは俺もよぉぉく知っているところだったからなのだ。
もちろん同人誌なんか作っている人たちには老舗だし、よく知られていると思うが、俺の場合のおつきあいはそれこそ20年以上前に遡る。

「ガロ」のバックナンバー持ってる人は探してみたらいいと思うけど、POPLSさんはしばらく本文4分の1、1色ページに広告を出して下さっていた。他にもちょっとしたご縁があったりもした。

そういったことは全く劇画狼こと千葉ちゃんは知らないわけで、数多ある印刷業者の中からPOPLSを選んだということ。また担当のU田さんが腰が低く丁寧でいい人だったと感激しており、やりとりでも安心感があったという。
何かいい方向へシャカシャカ進んでるぞ! と思い始めた。いや本当です。

これは劇画狼という一ブロガーが企画を立て、作家に了解を貰いコネクションを良好に保ち、版元らの了承もつけ、自分で全てのカネを出し、宣伝もし、完成後の実店舗での販路も開拓しつつある。
俺に出来ることは、彼が出来ないこと、すなわち「編集実務」や実際の「本というかたち」に仕上げていく課程の作業である。
我々は明確な「編集意図」をもって、ことにあたった。「編集とは理詰め」。
編集方針を具体的に本へ落とし込む。それだけだ。

劇画狼…いやもう「おおかみ書房」代表の千葉ちゃん曰く
「中学生がまんだらけに来てオッ!と思っても、手持ちのお小遣いで買える値段にしたい」…からある程度安くしなければならないが、だからといって「商業出版に負けないクオリティで出す」という高いハードル。
あとは「ちゃんとホラー漫画であること」(これは三条先生作品なので問題なし)
と「読み終えたら三条先生、そしてこの本が好きでたまらなくなっていること」。

エクセルで台割を作り、本の仕様を書き入れ、さらに工程などもいろいろ素人の千葉ちゃんのために出版というか編集の基礎からあれこれ教え、単行本にするまでの道筋を教える。
仮台割のあとは今後とにかく何を、何からすればいいのかというので、まず手元にある生原稿を「完全版下」にする工程を説明。

台割が決まったのでまずは全ページの精査。
台割順にノンブルを貼り(結果的にノンブルは印刷で入れてくれることになった)、写植の脱落や誤植があったら出力して貼り直し、版元の指示が入っているだろうけれども白抜きやフチククリなどは改めて「今回の単行本作成用」に全て一から指示を入れる。
タイトルも無いものは作らねばならないし、雑誌掲載時のアオリは全て不要なので外した場合のバランス、単行本としての統一感を出すためにも、タイトルも全て作り直しとする。

あと、後半の3本はまるまる写植がなかったので当然、全部出力して貼る。
といっても写植…つまり写真植字、さすがにこれらは新規発注は出来ない。何万円もかかってしまい、ただでさえ信じられない高い原価率を押し上げること必至。
じゃあそれらはまず、千葉ちゃんが手打ちでテキスト形式でいいから打って、と指示。
あとは俺に任せろ…とは言ったものの、漫画本文の写植以外に、その後カバーや表紙、帯、扉、目次、対談ページ、初出一覧、奥付などなどツキモノ関連の作業には業界人必須のイラレやフォトショ、インデザなどがいる。

…でまあ、うちはとっくにバージョンアップ期限の切れたソフトしかなくて…ですネ、
ローンで買いました。ええ。CS6。


これでまず、彼が写植の抜けている部分をテキスト化している間に、すでに収録済・著者校済の作品解説的な対談テキストがあったので、インデザで版下を作ってしまう。
kaisetsu_20130316062448.jpg

ところがテキスト量が多く、見開きではとても無理と判明。最初に文字数聞いておくべきだった。
急遽台割変更。
このあたりも、適宜Facebookのメッセージでやりとりを細かくしながら進めた。

そんな中、いいタイミングで三条先生のカバーイメージラフも届いたそうなので転送してもらう。
kisei-image.jpg
(▲最初期バージョン。ロゴ位置がちがうがテイストは決まり)

こちらは本におおかみ書房のロゴ入れなくていいのかと聞くと、千葉ちゃんは「入ります。とてもかわいく入ります」とか意味不明のことを言うので、元になる画像をくれと伝える。で、送られてきた画像。
nyanjo.jpg
(▲作品中に出てきたとてもかわいい猫のキャラクター、通称「ニャンジョー」)

これを元に…ていうかもう、超拡大してタブレット&イラレでトレスした。
でベクトルデータでロゴが出来た。
logo.jpg

(これは後でハンコ作ったら面白いな、と思ったので勝手にシャチハタを発注。おおかみ書房の船出のお祝いにプレゼントした。通販で皆さんの元に送られてくる封筒の割り印は、これですよ)
hanko.jpg


12月に入って、とうとう三条先生の表1と表4用の原画が上がってきた。
絵力(えぢから)、すげえ!!!
さっそく版下のフォーマットに取り込み、カバーの作成にかかる。
Tomomi-cover_20130316062908.jpg
(▲VIRGINESのスペルミスはコピペ間違い。あと英文法上どうこう、という野暮ではなく「語感」大事)

われわれの想定していた、「ホラーなのにかわいい」イメージ通り、いやそれ以上の美麗な画像。
あーもう、あの作品群がこの絵でくるまれるのか。そう思っただけで8割方「いい本」決定。
ただ画像データがRGBだったので、蛍光ぽい緑がなかなかうまくCMYKの4色では出せない。というより蛍光色は再現不可能。4色製版は再現できる色域が狭いうえ、蛍光は特色じゃないと出せないのだ。

さてここからはオペレーターモードで、いろいろと画像パラメータをいじる。
いかにこの素晴らしい原画を、いかに綺麗にカバー版下に入れ込むか。
そしてカバーを取ったときの「表紙」は、新鮮な驚きか、新たな感動か。
こういうことを考えている時が一番楽しい。
(ちなみに、カバーを取ったところがどうなったかはぜひお買い上げのうえ、ご確認されたい。三条先生にもお褒めいただけました。それとPOPLSさんのすさまじい「いい仕事」! ちょっと前だったら美術印刷かというくらいの再現も、ぜひ見て欲しい)
色調整の過程で背景の汁を赤にしたり、色調整も派手バージョン=成年コミック風とか、レトロ昭和貸本漫画風などを作ってみたり。
CIMG4472.jpg
ただ、この「絵力」を殺すような余計なデザイン的処理、今風のデザインテイストをかぶせるのはやめる。
目指すのは「いかがわしい、可愛さ」とそこから薫る「エロティシズム」。三条先生が今はもうほとんど見られなくなった「セーラー服」を、「記号」「象徴」としてかたくなに描いていることも、同じ意味だと思う。
そのテイストをうまく纏ったとき、この本は「本というかたち」であるがゆえのフェティシズムの対象になる。簡単に言えば、モノとして愛されるようになる。
まあアホながらいろいろ考えてあれこれ作業をしたのです。

余談ながら、この前後にうちの十年選手だったA3ノビ対応のインクジェットプリンタが死亡した。

…ええ、買いましたよA4までだけどカラーレーザープリンタ
ほぼ、この本のために。
だって写植出力しなきゃ、ですから。
一銭の対価も貰っていないのに、出費10万突破!
でも無問題!だって楽しいから。



で新年も作業。だって楽しいから。
sanjo.jpg

新年早々、ていうか彼は奥さんと実家へ帰省し帰ってきて、翌日は写植張り作業(笑)。その様子は下記リンクで。
1月4日
この日、千葉ちゃんが買ってくるよう画像とアマゾンのリンクまで教えたにも関わらず、ペーパーセメントを間違って買ってくるというトラブル(笑)があり、すったもんだの挙げ句(なにしろ正月なので、画材店が全て休み中)販売店サイトでLOFTに売っていることが判明、買いに行ってラーメン食って帰ってくるという顛末。これで3時間くらいロスして、この日の夜には写植張りは終わらなかった。

なので翌週1月12日も続けて作業。
前回持ち帰って、彼が貼った部分をこちらがチェックしつつ、曲がりを直したり、あとは各ページのタイトルを出力。
titles.jpg
それらを貼っていくのと、吹き出しとのバランスを考えて打ち直しなどの分をプリントしたり。
時間的なこともあり…というより前回は電車の時間ぎりぎりまで「作業」だったので、今回こそは「お疲れビールタイム」を残したかった。なので、俺も途中から中腰で切った貼ったを手伝い、白フチや反転などの文字指定を付箋やトレペに入れていく。

重要部分はある程度やり終え、あとの確認と残った作業は千葉ちゃんが家へ持ち帰り「自分でやります」と言ったので、無事近所で一杯やれたのであった。

余談ですがレーザープリンタから写植用に出力する場合の用紙はいろいろ試した結果、これが一番だと思いました。すいませんアフィリンクで。

表面が写植の印画紙を彷彿させる光沢ある質感。厚みはそれほどなく、昔の写植より薄く、初期電算写植の出力印画紙…と同じかやや厚めくらいかな。プリンタ通しても丸まらないし、紙質はピンピンしていて、ペーパーセメントとの相性もいい。
(そんなことはどうでもいい、という人の方が多いか)

翌13日は日曜なので、とりあえず午後からはカバーや表紙、帯、本文のデータの詰めとpdf化などを夜まで。
ふむ、先が、ゴールラインがはっきりと目視できてきた。
(後で、千葉ちゃんは正直どこまでやったらゴールラインが見えるのかが全然見えなくて、実は不安だったと言っていた。ああ見えて繊細な男なのである)

14日はデータ入稿の最終確認。
午後から夕方まで精査と変更、書き出しまで終えた。それもこれも2月中の発売を目指してのことだったのだが、千葉ちゃんは明日イベントに出るらしく、正直そちらで手一杯という感じ。
だが奴は宣伝担当、営業担当でもあるので、きっちり宣伝をしてくれるだろう。
こちらはきっちりやることはやる。
tukimono.jpg

粛々とデータDVDを焼き、出力見本やカラー部分の諸注意のための出力&書き入れなどを済ませたものに、プロじゃないとなかなか判らん部分を書き入れといた印刷注文書なども含めて発送用に梱包。しかし残念ながらヤマト運輸はこの日の集荷終了でがっくり。
結局千葉ちゃんにfacebookで連絡すると明日発送でいいですよという。まあ、そうだわな…と理解しつつ脱力。

しかしファイルを貰ったときから「シャカシャカぴえろ」に俺がハマってしまい、写植貼り、タイトル貼り、原稿精査、常に「合い言葉」のようになっていた。読んで貰えれば判りますが、小品なんですけどね。
でまあ無事にデータと諸注意、出力したものなどが千葉ちゃんのところへ届き、過日全て完成させた彼の手元にあるアナログ漫画原稿と合体させ、送付。

こうして2月5日、無事に原稿とデータはPOPLSさんに到着。担当のU田さんが確認の電話を入れてくれたそうで、一安心。今後は金額のことや納期など以外の、データに関することや原稿の指定など、製版や印刷に関わる専門的なことはこちらへ直で連絡を入れてかまわないということにしてもらう。
POPLSさんはサンプルを出してくれるそうなので、千葉ちゃんに見本が届いたら何をすればいいのかということを詳細に伝えた。
通常の商業印刷なら、校正刷りなどをチェックする場面だが、同人印刷の場合は会社によってもいろいろあるらしい。つまりそうした「向こうの仕様」に従うことにより、廉価に本が作れるという利点がある。
とにかくサンプルでGOを出したら、それが1000部出来上がるんだから…と伝えると「普通に緊張しますね」という。
で、そのU田さんが確認で千葉ちゃんに電話をしてきた時のこと。
申し訳なさそうに、「あのう…、原稿の裏にですね、一枚はがれたと思われる写植がついているんですが…」というので、「何の原画ですか」と聞いたら
シャカシャカぴえろなんですが…」

この逸話を千葉ちゃんから聞いた時に、ああ、ゾーンに入ったなと思った。
まあよくある、アスリートなんかが成功するときのアレだ。ボールが止まって見えたとか他の選手がスローモーションに見えたとかいう何というか不思議な空間。これ、「寄生少女」入っちゃったよ。
あの腰の低いU田さんの丁寧で済まなそうな口調で、はからずも向こうから「シャカシャカぴえろ」という単語が出てきてしまった。

だいぶ前に「豚小屋発犬小屋行き」(もちろん最初の青林堂版)という根本敬さんのトンデモない本を担当させていただいたことがある。A5版でブ厚くて、そしてとても下品で死体写真漫画なんかも入った問題作である。俺の描いた絵もちょろっと入ってたりもする(絶対判らないと思うけど)。
それの制作時、というよりそもそも「豚小屋と犬小屋」とは何かというと、根本さんは「人間、格好つけたって結局豚小屋と犬小屋の間みたいな、間抜けな空間から抜け出せないんですよ」的なことを言っていたわけで、その本を担当しているとき、まさに俺はその「間抜けな空間」のゾーン内にいた。
根本さんの仕事場へ行く途中で変な人や変な事件に必ず遭遇した。一度や二度ではなく、毎回、必ず。
渋谷駅から地下鉄か、あるいはバスで向かったのだが、いずれにしてもおかしな客…電波系みたいな人になぜか遭遇してしまう。(どういう人たちだったかは、先日「お渡し会」に来た人にはお話したけど、まあちょっとアレなので割愛)
で、そういう話を打ち合わせや作業で伺った時に根本さんに報告すると、「まあこんな本作ってる間はしょうがないよね」とにやにや笑うのであった。まさしくその「豚小屋と犬小屋の間の磁場」みたいなところに完全にはまって仕事をしていて、だからイイ本(根本さんの言うところのイイ顔と同義)になる、と思った。

長ったらしくわかりにくい説明で恐縮だけど、今回も、もうこの段階で「これはいい本になるよ」と俺は千葉ちゃんに断言した。「だってシャカシャカぴえろにつかまってるし」というわけの判らない理由で。

本が出来上がるまでの間、彼は「さて、あとは僕が売るだけですね」というので、名刺を作ってあげることにした。
これ。両面印刷です。
meisi.jpg
しかも500枚。
別に嫌がらせではない(笑)。
配りまくれ、売りまくれ! という願いをこめました。ええ。
有名になって、もっと本を作れ。
大きな会社が出せない、でも世の中に求めてる人が1000人ちょっとくらいは確実にいる、そんな一人一人に向けて、本を作っていけ。

俺の屍を乗り越えていけ! みたいな。
いやもう実際、俺はこんな体というか病気なので、いつチンケな風邪が悪化してコロッと死ぬかも知らん。
実はここひと月ばかり体調があまり良くなかったのだが、この本の出来上がりを見て免疫力がちょっと上がった気がした。

そんなこんなを経て、無事発売なった「寄生少女」。
本当にいい本です。
先行お渡し会も出来て、
DSC_0014.jpg
(▲非売品の特大表紙ポスター。迫力満点)

予約していた皆さんの手にも無事届き、好評をいただいています、が、
しかし!
劇画狼も言っているように、次です。
次もありますから、ぜひ他の方にもオススメしてください
とんでもない原価率で、これがほんまの採算度外視ちゅうんじゃ! くらいなもんを作った。
これで信用して貰えるでしょう。
いい仕事をしますよ、俺ら。いや、奴は。

寄生少女」通販お申し込みはこちら。
閲覧用、保存用、布教用にぜひどうぞ。
おおかみ書房
スポンサーサイト

テーマ : 漫画
ジャンル : アニメ・コミック

tag : 三条友美 寄生少女 おおかみ書房 劇画狼

コメントの投稿

管理者にだけ表示を許可する

コメント

No title

泣いた
ポチった
そして、俺も何かしなきゃならんと思った

ありがとうございます!

すごいマンガとすごい絵を描いた三条先生、それを自腹でド素人のくせに世の中に出した劇画狼。

俺なんかなんにもしてませんからね。
(と謙虚なことを言ってみる)劇画狼の脳内ではそろそろ
「そういえば全部俺一人でやったんだよな、俺ってすごいな、これじゃモテるよな」
という感じに変な物質によって記憶が変質しているでしょう。
でもまあ、それでいいんです本当に。
名作名著数あれど、編集の名前なんか誰も知らない。「オレオレ」と本人がしゃしゃり出てこなければ。
今回の本は三条友美先生の本を、劇画狼が頑張って本にした。
そういうことです。
いい本です。

No title

この後、さっそくチェックします。三条さん!ギャグのセンスに圧倒されます。

ポプルスさんという懐かしい名前にもびっくり。
人生で唯一参加した同人誌がポプルスさんで、印刷してもらったもので、
その頃は東福生駅近くの米軍払い下げの白塗りの建物に入っていらっしゃいました。
カレンダー
02 | 2017/03 | 03
- - - 1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 31 -
最新記事
カテゴリ
最新コメント
最新トラックバック
メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

広告
アフィリエイト・SEO対策
検索フォーム
プロフィール

シラトリチカオ

Author:シラトリチカオ
白取千夏雄/編集者。1965年函館市宝来町生まれ。元青林堂「ガロ」副編集長、97年よりフリー編集者・ライター・Web構築・管理他なんでも屋と、専門学校・大学講師など。
2005年夏、白血病告知・余命宣告を受けるが「慢性リンパ性白血病」に近いタイプと判明、無治療・対処療法、2014年より抗癌剤治療、巨脾へ放射線など治療開始。2015年夏左上眼瞼にメルケル細胞癌発症、眼瞼切除、再建手術、16年にかけて放射線も耳下腺に転移、郭清術、放射線治療中に再発、左眼球ごと摘出・皮膚移植。転移再発治療中ながらまだ生涯一編集者として生息中。
二十余年の東京在住ののち、07年から京都在住。09年5月、愛妻=漫画家・やまだ紫を脳出血で失った。
やまだ紫クロニクル

シンプルアーカイブ
リンク
RSSリンクの表示
QRコード
QR
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる