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2015-11-23(Mon)

これまでのあれこれ2

11月12日の続き。

…抜糸後は、切開し縫合した部分にそって保護テープが貼られ、要するに昔の貧乏な家みたいに、割れたガラスのひびに沿ってテープで補修してあるような顔面。
ただ、再建して貰った左目はまだ半開きしか出来ず、腫れているので完全に閉じられない。点眼麻酔はとうに切れた頃合い、でも視界はぼんやりしたまま。
開いているのに見えない、ぼんやりと霞んだ視界が、まともに見える右目の視界に重なって、視界全体がぼやける。
これはちょっと困るなあ…というわけで念のため視力を確認。
部屋の清潔環境のチェック票にある助手Tさんの小さく几帳面そうなカタカナ文字。右目の方では、裸眼でも近づけば、メガネありなら1mくらいの位置から眼を細めれば、見える。けっこう小さい文字だ。
今度は左目だけで見て見る。
裸眼でもメガネでも、近づいても遠ざかっても見えない。かなり近寄ってもぼやけたまま。これは老眼ゆえしょうがないとして、メガネをして、調整したはずの距離に下がってもぼけぼけ。
うーんこの…。

まあしょうがないか、とりあえずはずっと塞いでいた左目の保護も兼ねて、メガネONサングラスをかける。腫れて半開きの目を晒さないで済むのと、動いた時に風が当たらないので乾燥防止の意味もある。ほんま今回このグッズ大活躍。ゆうちゃんありがとう。
部屋の外にあるビニール袋に借りたタオルを入れておこうと、ドアを開けて袋に手を伸ばした…、としたところで隣の部屋に行っていたM君が出て来て、俺の様子を見て爆笑。
俺が中腰のまま「怪しいもんじゃ、ないですよ」というと「いや怪しすぎますよ」と笑われた。まあ、こんなグラサンしてるのに下パジャマで顔テープだらけだし。そんな男が中腰で袋に手を伸ばしつつ顔だけをひん曲げて自分の方を見ていたら、「く、曲者!」と叫んでしまいそうだ。

で何気なく目の話で俺が「目のピント調節ってそういえば筋肉やねえ」というと「そうですね」というので「ひょっとして、一ヶ月ほぼ片目やったんで、それが衰えてるって事もあるのかも」というと「あー、でもどうなんでしょう、よくある目の筋肉の鍛え方で遠く見た後近くを見るとか、は聞きますけど」というので「それでリハビリになるかなあ」と話す。
でもまあ、それなら今なかなかピンが合わせにくい事も理屈には合うか。使わない筋肉は衰えるもんな。
編集者のせいか理屈に合わない事が嫌いなんだよな。
原因が分かり、理屈が説明されれば納得する。
病気だってそうだし、治療だってそう。

何で俺が、ああ悲しい、畜生、とかにはならない。いやなるけど理性で抑制される。だってなっちまったもんしょうがないもんな、次を考えねば、というのがまっとうな人間の思考だと思っているから。
直前に食事が来たので、M君と別れてそのまま部屋で飯を食う。
常食一歩手前のやらかいご飯と、ソフトおかず。魚の煮物、ブロッコリーと何かの煮こごり、あとローソンの納豆賞味期限過ぎてたけど大丈夫そうなので食ってしまう。それにインスタント味噌汁プラス。この味噌汁が「病人用」じゃないから、うまいこと…。
ちょっと前まで口が開けられず、流動食食ってたのになあ。
まだがふがふ爆食というわけには行かないが、少しずつ、でもちゃんと食べる。何でもそう。
サッ、とすばやく動くという事をなるべくしない。そろりそろり、と動く。強い力、加重や付加が急に一点にかかるような事は避ける。ほんま、免疫力と同じくらいの老人のような動き。でもそれが病人にはちょうどいいのだ。
飯は完食。

下膳する際、下で右目の乾き用に、抗生物質の入っていない普通の目薬を買おうと思い、財布を持ってふらふら詰め所まで行く。まだ手すりの確認を常に意識していないと、形成外科の病棟には車椅子や歩行器といった「トラップ」がけっこうあるので、ぶつかったりもする。
詰め所に病棟を出る旨報告しようと思ったが出払っていたので、エレベータへ。

ここのエレベータもいい加減古いので、三基あっても、全部一斉に上階に上がったりする。最近の製品のように制御されていないんだな。
ていうかもう本当に、こういう病院には潤沢な予算をあげてくれよ! iPS細胞にも、臨床の現場や病棟にも、何かせせこましい貧乏な思いとかさせないで治療に専念させてあげて欲しい。患者ももちろんそう。
とか考えていると、エレベータ三基のうち、一番左の小さいのが来た。
ドアが開く前、中から男女の親しげな会話と笑い声が聞こえたが、俺が乗り込むとシーンとなった。
何か申し訳ないのと、緊張に耐えられず思わず「怪しい者じゃ、ないですよ?」というと、男性の方が堪えきれずドカーンと笑ってくれた。
こちらも「いやー目の手術をしたので…」と言うと「ですよねえ、そのテープの形を見てああアレか、と思いました」と言うので「そうです、アレです」と言って、地下でお辞儀をして先に降りた。
アレというのは眼瞼再生では一般的だとE先生が解説して下さった、眼瞼再生の際の手術法。男性の方は白衣を着ておりおそらくドクターらしいので、当然ご存知だったのだろう。
とにかくああいう対応が一番こっちも気が楽だよなあ。
「しっ、見るんじゃありません」とかが一番困るし気まずい。
それにしてもそんなに俺、怪しいかなあ(笑)。
DSC_0053.jpg


売店は閉店支度をしていたので、「あっ終わりですか」というと、「6時半で閉めますけど大丈夫ですよ」となぜか「ヘイ、カモン!」的な動作。時計が無かったがたぶん6時15分あたりじゃなかったか。
…結局この売店に目薬は売って無く、聞いたら南北に長い地下の廊下途中にある薬局に置いてあるそうで、それはもうとうに閉まっているから明日行けばという。
なのでチョコ菓子とかクッキーとかジョージア微糖ブレンドとかペットのミルクコーヒーとかを仕入れて戻る。
こういう甘いものへの欲求が出てきたのは、自分の経験上体も正常に戻ろうとしている途上。欲しているんだから、迷わず与える。今は「我慢」すべき時ではない。

左目の方はまだ、裸眼でもメガネでもぼやっとしたまま。
これを書いている途中、お世話になっている編集プロダクションO舎の社長Hさんからメールが来る。
お願いしておいた、アパートに溜まっていたであろう郵便物は無事回収していただけたようで、明日病院に定期受診に来るというK山さんが持って来てくれるという。
うう、ほんま助かります…。
K山さんには結局また迷惑かけちゃったなあ。申し訳ないなあ。
にゃほやまさんこと谷川さんには手術後も「気」を送ってもらってるしなあ。
先生がたも驚くくらいの回復の早さ、基礎疾患が白血病なのに、人間の体って凄い。
そして気力をしっかり持つこと、それも大事。
何よりストレスが一番良く無い。
エビデンスとかどうでもいい。これは十年間病人やってきての実体験。
いや、五十年生きてきての実感か。
ストレスは確実に人を病へと導く。絶対に断言する。
適当に解放して下さいよ皆さん。

7時半過ぎ、服薬確認に看護婦さんが無防備に「白取さーん、夕方の薬…」と言いつつ入ってきたので、グラサンのままグッ、とサムアップしたら馬鹿受けしていた。うーんしばらくコレで笑い取れるな…。
でベッド上であぐら状態のまま、もう一回今度はエアギターのチューニングをする格好で「服薬確認やね」とちょっとくだけて言うと「似合いすぎますよ~」と受けた。
でまあ笑いを取ったところで瞼を見せて、「顔、変わっちゃったけど」と言うと「ショック受けはりませんでした?」というので
「いや、命と引き替えですからね…。それに文句言うたら丁寧に綺麗に作って下さったE先生たちに失礼やし」と話す。
元の顔に戻るなんて思ってなかったし、それは無理。命の方が大事、と話す。
それは本音だ。
この病棟は形成外科だから、やっぱり乳癌での乳房切除などで再建とかの前、ショックを受ける人もいるそうだ。あるいは四肢の切断などもあるだろうし、まあ、いろいろあるだろうな。
でも、今回の俺の場合はもうほんまに進行、転移の早いクッソいまいましい凶悪な癌だったので、とにかく取ってくれ、とこっちからせっついてお願いしたくらいだからと。
それから先ほどエレベータでドッカン笑われた話をする。
正直、自分も部屋に入ってきて最初見たときにウッと笑いそうになったそうだが堪えた、しかしサムアップで決壊したという。
そうか、ポーズも重要やな。
極限と滑稽は紙一重。

正直一年後死んでるかも知れへん人間が、健康な人間に笑って貰うというのは嬉しい事でもある。
笑う事は免疫力アップにいいから、ほんのちょっぴりでも笑えれば良い。笑ってもらえれば幸い。その人にほんの少しではあるが、役に立ったことになる。
とりすがって「なんでそんな顔に」と泣かれる方がこっちも辛い。
そういう意味でお袋が電話口で「なんであんたがこんな目に…」と言うのを聞くのは、正直きつい。

8時半あたりから病棟はシンと静まりかえる。
年寄りは早い人はそろそろ寝たりするし、詰め所では引き継ぎだろう。
こちらは一応サングラスをかけた今の顔をスマホで撮影、ブログを更新するときアップしようと思ったが、結局短い文章だけにした(11/12)。
ま、記録はつけてあるので追い追い。

消灯前後、他の部屋の確認などが次々終わっていくが、軍曹が来ないので待っているのも何だしと、外のビニル手袋して皮膚用のゲンタシン軟膏は自分で瞼と周辺に塗り、眼球用のタリビット軟膏は粘性が強いため、うまくまだ眼球上に入れられそうにないので、しばらく逡巡したあげく、結局処置室へ行く。
そこへちょうど軍曹が来たので、「これ入れて欲しいんですけど」と言うと「ええよ~、今行こう思てたとこやったし」というので処置室の椅子に座ると「ここでええの?」というので「はい」といって、入れてもらった。
ややこしいのは、ゲンタシンはあくまで皮膚用の抗生物質、タリビットは眼球用の抗生物質軟膏、つまり眼軟膏なので、使い分けないとならんという事。
眼球は当然タリビットになり、再建された周囲の瞼はゲンタシンになる。
で軟膏塗ったはいいが、寝る時万が一寝返り打っちゃったら困るな、と思い部屋に戻って見回す。
そういえば、最初の術前に買って、余り意味が無かった片目用の「貼る眼帯」、ちゃんと中アテ用ガーゼとセットで滅菌小分けパックだったので、「これだ!」と思い、部屋の前にあるゴム手袋を消毒してから、中アテパッドにもゲンタシンを中心部を除いて塗って、左眼窩全体を覆う感じで貼る。
おお、なかなかの安定感!
DSC_0062.jpg

また片目になったが、どうせまだ視力が片目しかうまいこと働いてないし、抜糸当日は乾燥・感染防止で保護優先だ。
先生は寝る前に軟膏塗って…しか言わなかったけど、今日抜糸で、他の皮膚の縫合痕はテープ保護されているのに、眼瞼部剥き出しは怖いな、という自主判断。本当は塞がずなるべく曝した方が治りも早いのかも知れないが、ま、一応易感染者という事で抜糸当日くらい見逃してもらおう。

それにしても片目になった途端に快調。
やはりこれは、一ヶ月ちょいの片目生活に完全に順応したからだろう。
それはそれで困る。今後は両目での生活に戻らないとアカンので、この左目の保護も、感染の恐れがひとまず落ち着いて、やめるようにした方がいいのか。でも世の中隻眼の人もいるしなあ。
まあ眼科の先生にも診ていただく予定なので、そこで聞こう。素人判断は禁物。

軍曹はさっき軟膏の時、「それにしても綺麗綺麗、顔も腫れてないしねえ、思ったより」と言ってくれ、俺も「瞼もね、充血して腫れてますけど、正直顔はもっとしばらくは腫れてる思いました」という。「でもスッキリして良かったですね」というので「ありがとうございます」と言って戻った。
うん、順調、なんだろうなあ。有り難いなあ。
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シラトリチカオ

Author:シラトリチカオ
白取千夏雄/編集者。1965年函館市宝来町生まれ。元青林堂「ガロ」副編集長、97年よりフリー編集者・ライター・Web構築・管理他なんでも屋と、専門学校・大学講師など。
2005年夏、白血病告知・余命宣告を受けるが「慢性リンパ性白血病」に近いタイプと判明、無治療・対処療法、2014年より抗癌剤治療、巨脾へ放射線など治療開始。2015年夏左上眼瞼にメルケル細胞癌発症、眼瞼切除、再建手術、16年にかけて放射線も耳下腺に転移、郭清術、放射線治療中に再発、左眼球ごと摘出・皮膚移植。転移再発治療中ながらまだ生涯一編集者として生息中。
二十余年の東京在住ののち、07年から京都在住。09年5月、愛妻=漫画家・やまだ紫を脳出血で失った。
やまだ紫クロニクル

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