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2006-01-22(Sun)

ご先祖様、ごめんなさい

1月22日(日)
前の夜は12時過ぎに猫のシマと一緒に寝る。このところずっと、こちらが寝るとなるとてててて!と走ってきて、脇の下で丸くなってゴロゴロ言って一緒に寝るのが可愛い。耳の聞こえない白猫のユキは、なぜか足元のダンボール箱が無造作に積んである一番上に載り、それをじっと見つめた後、そこで寝てしまう。
この日は2時くらいまで寝たり目が覚めたりで、朝方5時くらいに猫たちの出入りでまた目が覚め…で朦朧。7時前に連れが一度トイレに起きて戻ってきた後、こちらも尿意で起きると、居間が大変なことになっていた。
連れ合いはメガネをしてなかったので気がつかなかったようだが、電気をつけると居間の壁面一面に据え付けてある飾り棚の一番上にあったお盆が下に落ちており、乗せてあった茶碗が一つめちゃめちゃに割れていた。一番上の棚というのは、我々夫婦それぞれのご先祖様の写真などを飾ってある棚で、仏様の前にはお盆があり、その上にはお水やお茶をあげる二つの茶碗、また俺が入院した時に抗癌治療が始まるからと外した結婚指輪ともう一つの銀の指輪、連れ合いに昔プレゼントされてずっとしていたネックチェーンが乗っていた。指輪の類は、抗癌剤投与でむくんだりすると指が締め付けられて激痛が生じることがあるという。それで、入院直後に外して連れ合いに預け、連れは帰宅してそれを仏様の前に置いたわけだ。
とにかくそれらが乗ったお盆が下に落とされていた。お盆そのものと一つの茶碗は無事だったが、もう一つの茶碗は粉々に割れて散乱しており、指輪やチェーンもない。すぐにお盆と割れてない茶碗を拾い、さらに足元を探すとチェーンと銀の指輪は見つかった。だが掃除機をかけ、茶碗の破片を片付けつつ探すが、どうしても結婚指輪だけがない。重い台をどかしてテレビの裏まで見るがないので、一旦諦めた。
こういうことは身軽で耳が聞こえないために「おいた」をして叱っても効力がない、従って「悪いことであること」を覚えないユキがやったに違いないが、叱ろうとすると察知してビクビク逃げ回る。
その様子を見ていて、ハッと思い出すことがあった。
以前、ここに引っ越す前に蓮根というところにあるマンションの3階に住んでいた。その頃、部屋にはマルという名前の(04年1月急死)雑種のメス猫一匹がおり、長老のそう太やマイちゃんという二匹はまだ引き払っていなかった、蓮根以前に住んでいた団地に分かれていた。
その当時、連れが病気で入院していて、出版社で編集という忙しい生活を送りながらも毎日病院へ通っていたのだけど、ついつい線香やお水を忘れていた時があった。そんなある日、疲れて帰宅すると、マルが妙に走り回り、狂ったように部屋の中を駆け巡って閉口した。当時は寝室の低い洋服ダンスの上にご先祖様の写真立てと線香類、お水など一式(われわれは「仏壇」と呼んでいた)が置かれていたのだけど、マルが飛び回った挙句たんすの上に飛び乗り、それら一式を下に蹴落とした。当然線香の灰や水などがカーペットの上に散乱した。
もちろん当時も日記をつけていたのではっきり記憶している。自分の不徳を晒すようで恥ずかしいのだけど、引用してみる。

・・・マルを叩いて怒り、片付けようとして、あまりの惨状に思わず一人の部屋で
「もういい加減にしてくれよ、俺たちが何したって言うんだよ!」と声が出た。マルは部屋の隅に隠れて赤い目でこちらを凝視していた。
 世の中いい加減にチャラチャラと過ごしている奴らが大勢いる。人を傷つけたり押し退けたりしても平気で生きている奴らがいる。金とか異性だけを目的に刹那的に暮らし、下らぬ価値基準で親や子を平気でないがしろにするようなバカな若者で溢れかえっている世の中だ。でもM(連れ)はクソが付くくらい真面目に、子供たちを育て、時流に迎合することもせず(そうすればもっと経済的にも社会的にも楽だっただろう)真摯な姿勢で漫画を描き、人と接して来た。その挙げ句が誤診続きの入院の繰り返しか。神や仏がいるのなら、Mを助けてくれ。ご先祖様も、俺なんかどうでもいいからMを何とかしてくれ! 言ってはいけないと思いつつ、泣き言が漏れた。
 マルは相変わらず部屋の隅の机の下で目を丸くしてこちらを凝視している。布団にもカーテンにも、茶と線香の灰が混じったシミが出来てしまった。タンスの横にあったMの洗いたてのジーパンにも。だが、マルが倒したご先祖様のコップは、お茶を入れるのを2日ほど忘れていた。前にMが入院した時は、必ず毎日お茶を入れ替え、線香を立ててMが健康になるよう祈っていたが、ここ2日ばかり忙しさもあって忘れていた。コップの途中にはお茶が蒸発していった証の線がくっきりついている。
マルにその事を指摘されたような気がしてきた。すぐに新しいお茶を入れ、線香を立てて手を合わせた。
ここまで書いていて、マルを探すと、風呂場の前のタオル入れの中で丸くなって寝ていた。餌が欲しかったわけではなく、Mが入院したことで寂しかったのか。普段と違い無人の家に放置されて、こいつも寂しかったのだろう。寝ているマルを抱きかかえて「ごめんな」と謝り撫でてやってるうちに、情けなくて少し涙が出てきた。自分も少し精神的に参ってるのだな、と思った。


今回落とされたご先祖様の茶碗には、水は入っていなかった。水は干からびてカビカビになっており、ずっと水、お線香をあげていなかったことをこれで突きつけられたような気がした。すぐに片付けた後、線香とお水をあげてごめんなさいとお祈りする。
人間というものは、自分の都合のいいように神仏を持ち出し、願い、祈り、あてにする。そうして何かが改善されれば感謝を忘れ、改善されなければののしったりもする。何と傲慢不遜な生き物だろう。そして自分もまた、全然進歩していないのだなあ。
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コメント

マルちゃん

死んじゃったんですよね・・・
青い部分、何か身につまされて。泣きそうになります。
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シラトリチカオ

Author:シラトリチカオ
白取千夏雄/編集者。1965年函館市宝来町生まれ。元青林堂「ガロ」副編集長、97年よりフリー編集者・ライター・Web構築・管理他なんでも屋と、専門学校・大学講師など。
2005年夏、白血病告知・余命宣告を受けるが「慢性リンパ性白血病」に近いタイプと判明、無治療・対処療法、2014年より抗癌剤治療、巨脾へ放射線など治療開始。2015年夏左上眼瞼にメルケル細胞癌発症、眼瞼切除、再建手術、16年にかけて放射線も耳下腺に転移、郭清術、放射線治療中に再発、左眼球ごと摘出・皮膚移植。転移再発治療中ながらまだ生涯一編集者として生息中。
二十余年の東京在住ののち、07年から京都在住。09年5月、愛妻=漫画家・やまだ紫を脳出血で失った。
やまだ紫クロニクル

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