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2006-07-28(Fri)

メディアについて思うこと 3(ていうか補足?)

亀田兄弟のことについて触れたところ、メールで以下のような文面が寄せられた。
メールアカウントは匿名の保証されるフリーメールだし、そもそも匿名なのでこちらも礼を尽くす必要もないと思うので勝手に公開する。

@前略(挨拶の前略ではなく前置き部分をこちらが略した、という意味です)@
…ところで白取さんの「亀田批判」ですが、私は彼らの大ファンで、彼らがマスコミに露出してああいう態度を映像を通じてばら撒くことに、何ら不快感も疑問も持っていません。彼らがああいう、白取さんの言う「礼を失した態度」を振り撒くことには、ちゃんと意味があるんです。ボクシングの世界は、選手たちの生活は本当に厳しく、これも白取さんが書かれている通り、専業すなわちプロで試合だけで食べていける選手などホンの一握りなのです。ご存知かも知れませんが、日本の場合は興行権も何も、全て力のあるジムが仕切っており、その代わりプロモーションや試合相手のブッキングなども面倒見てくれますから、弱小ジムの選手などは大手の言いなりになるしかありませんし、そうしなければ試合などできないというのが実情です。
亀田兄弟は確かに、「作られたスター選手」であるかも知れません。ですが、そうしなければ彼らはボクシングで生計を立てることは出来ません。ではボクシング以外のことをやれと言うのはまた違う次元の話です。問題の彼らの言動ですが、それらも「作られたイメージ」であること、想像に難くないでしょう?つまりあれは「亀田兄弟」というブランド、ユニット、イメージ、何でもいいですがそういった「商品」の一つの意匠に過ぎないのです。

@後略@

と、こういう内容でした、匿名とはいえ、メールありがとうございました…って誰だか知らないけど。
えーと、俺よく読んでる雑誌というか大好きな雑誌(笑)に「サイゾー」があるんすが、この先月号=7月号にちょうど「亀田の強さは本物か?」という記事があったんすよ。内容は『亀田興毅の「実力の正体」 伝説のボクサーになれるのか?』と題して、日本のプロボクシング業界の仕組や現状解説、そしてその中での「亀田一家の戦略」みたいなものを書いてくれており、興味深い。
匿名氏がメールで書いてくれたように、現在日本のプロボクシング界は、一部の大手ジムによって牛耳られている。もちろん亀田兄弟が所属している協栄ジムもその中の一つであることは言うまでもない。驚くべきは、弱小ジムは満足な興行さえ打つことが出来ず、さらに一般人がジムオーナーになろうとしても、1000万円といわれる「加盟金」を協会に支払わねばならないというハードルがある。その上興行を打つにはプロモーターライセンスの取得が必要で、これまた金がかかる。そうしてもしジムオーナーになれたとしても、狭い業界、大手ジムの「顔を潰す」「興行を脅かす」ようなことが出来るかどうか、想像してみたらいい。
さて有望選手(もちろん実力は言うまでもなく、スター性をも兼ね備える亀田のような)を見つけたら、その選手を他の国内有望選手とぶつけることはまずないという。選手に自信をつけさせるために、いわゆる「かませ犬」と戦わせ、「無敗」「連勝」という付加価値をつけ、商品価値を高めるのだという。…という、といってもほとんどの人はそんなことにはとうにお気づきだと思う。亀田興毅が戦ってきた相手はみな、外国の無名か格下、引退寸前のようなボクサーではなかったか。亀田本人はそんなことは関係ない、ほんならお前やってみろや、みたいなことを言うのだが、それは無理。あとは亀田本人が、タイトルマッチで実力をそれこそ自力で証明してみせればいいだけの話。
話を匿名氏のメールの件に戻そう。
亀田兄弟、あるいはその父親も含めての「亀田一家」の傲慢不遜な態度について。匿名氏はそれらを見ても何ら不快な思いは持たず、まさしく「ボクシングで食っていける稀有な選手」ゆえに許されるのだ、という。さらにその「礼を失した態度」も含めて「作られたスター選手」の「商品の意匠」である、という。
なるほど、確かにそれはそうです。もし亀田興毅がリング外では「優等生」であったら、ここまで人気が出ていなかったかも知れません。でも本当に彼の「傲慢不遜な態度」は作られた意匠、キャラ、芸風だろうか? 「サイゾー」7月号では、渡辺二郎(元世界チャンピオン)がビシッ、とそのあたり気持ちよくインタビューに応えている。「いつも兄弟3人で練習しているやん。自分より弱いやつが相手でしょ?」「(亀田本人が自分のボクシングスタイルを「ケンカだ」と言っていることについて)それが彼の美学やったら人がとやかく言う問題やない。(中略)だけど、チャンピオンになっても、あんなにキャンキャン吠えていたとしたら、どうかと思うよね。」…さらにリングサイドで吼える父親にも苦言を呈し、最後には「ご近所さんには、えらい嫌われてるって報道されてましたやん。大阪を捨てておいて、何が『浪速の闘拳』やねん、って書かれてた。今は『浪速のスピッツ』ぐらいにしておいたほうが可愛げあるけどな」と宣うた。
渡辺二郎、さすがである。(ていうか「サイゾー」、今もっともいいぞイケイケ! と応援している雑誌である)
親父も含め、亀田一家のああいう全く礼儀を知らぬ不遜な立ち居振る舞いというものは、確かにテレビ的で受けはいいだろう。皆もそれを期待している。だが「芸風」つまり演じているものではないことは、渡辺の指摘からもよくわかるし、「ご近所の皆さん」が一番よくご存知であろう。父親は以前、自分の子が学校でいじめにあったら、自分がドツきに行った、つまり子供のケンカに親が出たことを得々と語っていた。何だこいつ、と思った。つまり彼らは本質的に野蛮なのであり、「力こそ正義」であると確信しており、その本来の「性質」でそのまま生きているに過ぎず、マスメディアはそれを「許容」しているだけの話ではないのか。
だから、亀田一家はプロモータだのジムだのに「やらされている」のではなく、好きでやっているし、あれ以外のスタイルなどやるつもりもない、いや出来ないのだろう。余談ながら、通常はジムが所属ボクサーのマネジメントを一手に引き受け、テレビ出演やタレント活動、キャラクタビジネスなども仕切るという。だが亀田の場合は親父がボクシング以外のマネジメントを他の会社へ渡して、ガッチリと息子で稼ぐ体制を固めている。だからあれだけの露出が可能なわけだし、ひとたびメディアに許容され、お茶の間に蔓延させられた「亀田像」はもう「アリ」なわけで、つまりは亀田一家の思う壺である。
問題はその「許容」にあると言っている。礼儀をわきまえず乱暴な言葉遣いを平気で大人に対して行い、力こそ全てという価値観をばら撒く、いやそれを良しとしてばら撒くのはマスコミである。ちょっと前には金こそ全てという価値観をばら撒いていたマスコミは、ホリエモンや村上逮捕、さらには福井日銀総裁の守銭奴ぶりなどを経ても、拝金主義はとどまることがない。テレビという巨大なメディアが全国に向けて、力が強けりゃ何してもいいよ、金さえあれば何でも出来るよ、という価値観を国民に、子供たちに植え付け続けている…といったら言い過ぎか?
仮に匿名氏が言うように、亀田一家のああいう態度が芸風、意識的なキャラだとしても、それでも青少年(笑)に「あれでいいんだ」「ああなりたい」と思わせるには十分だろう。一人の亀田興毅クン、それが作られたキャラであっても、それを見て数百人数千人の亀田もどきが全国に生まれる。そいつらはキャラを作っているのではなく、「本物」だよ。そういうガキに何か非礼を注意しようものなら逆ギレされ、力こぶを盛り上げ拳を突き出し「何やコラ、文句あんならかかってこんかい!」と言われますよ。周囲を見渡しても大人たちは知らん顔。頼みのそのガキの親を見れば、「何じゃいコラ、うちの息子に何か文句あんのか!?俺が相手したろかボケ!」である。
プロスポーツ選手は現役時代に一流であればそのプレーで人を感動させることが出来る。一流でなくても高校野球のひたむきさに感動させられることだって、実際にある。そのスポーツにおいて、最も輝くべきは、選手そのものであるべきで、選手がスポーツをしているときであるべきだ。だから亀田クンはリングの上で戦う時が最もカッコ良く、輝いている時のはずだ。それ以外では、ボクシングのリング上ではないのだから、キャンキャン吼える必要などないし、礼儀正しい一人の若者であっても何ら問題ないはず。
イチローはマスコミ嫌いで知られ、その対応ぶりはサッカーの中田ヒデや現役時代の貴乃花(横綱の方)などに共通するものがあり、選手はプレーで見せるもの、というスタイルを貫いているものと勝手に、好意的に解釈していた。たいてい現役を退いてベラベラしゃべり出すと、オツムがアレな人は馬脚を現すことが多い。現役時代からベラベラとイタい状況に陥る選手もけっこういるが。
亀田クンはリング以外で渡辺二郎が言う通り、吼えすぎである。そしてプレー、試合では選手として一流であるかというと、実はまだ実績はないに等しい。であればこれも渡辺の言う通り今はまだ『浪速のスピッツ』ぐらいが適当であろう。
関係ないかも知れないが、「サイゾー」8月号掲載の敬愛する高橋春男先生の連載『バカを訪ねて三千里』はぜひご覧いただきたい。
「教訓----ところで、イチローは確かに天才だけど、ヒデって天才だったっけか?」けだし名言である。

自分のキャラを作り、それをメディアと共に既成事実化させて拡大再生産してゆく、その術に非常に長けた先達がいた。もちろん国民全てはフシ穴ではないものの、95%くらいはだませてるんじゃないだろうか…。

サイゾー 2006年 08月号 [雑誌]

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コメント

>まりさん

どうも、たまたま今この記事へのコメントへのレスを新しい記事に(ややこしいっすね)アップしたところでした。
「若気の至り」ってありますよね。あります、誰にでもそれはあるけど、今「旧車会」だっけ、元珍走団の連中がいい年こいて爆音撒き散らしてるじゃないすか。みんな死ねばいいのにね。あ、じゃなくてみんなちゃんと大人になればいいのに。そうすれば「若気の至り」なんだけど、いつまで経ってもバカはバカ、だと社会でまっとうに生きてる人たちの迷惑っすよね。

すいません、カンガルーの陰嚢…じゃなくてイラストはデカすぎたようで、クリックで別窓表示に変えました!

Unknown

自分が若かった頃をふりかえると、もう穴があったら入りたいというか自虐ネタにして笑うにも痛すぎるというか、本当にいただけない奴でした。また、いつの時代もその時代ごとの問題を抱えていると思います。なので、「いまの○○は・・・」と言いそうになるまえに何事もつとめて冷静に考えるようにはしてるのですが、それでも、それでも昨今、「すごいことになってるなあ」と思ってしまうことが多かったので、一連のコメントを拝読して、たましひを虫干しして頂いたようにすっきりしました。

カンガルーのダブルバイセプス、笑わせて貰いました!
切れてます!大きい!

明日から沖縄ですわ

安いフリーツアーで、本島の田舎側にある伊計島に行って来ます。

昔、演劇部時代のバイトでよく手に入れていた各種の台本を、子どもたちに見せてやると、かしこい子は、テレビ番組は、ほんっとに作り物なんだと理解します。

「子どもの夢を壊すな」という批判をもらったこともありますが、まぁ、事実だし、物証もあるんで、「本物の夢を見せた方が良いのではないですか」と差し向けると、かしこい親はたいてい頷きます。
クソがつく親やガキは、どう説明してもアナーキーだったり、思考停止しているので、結局無駄にはなるんですが、時間までは仕事なので対処はしますね・・・。

本の紹介のところにもコメントをつけておきましたが、うちらが新人類と呼ばれたのとは、ちょっと異質な区分が必要なようです。
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シラトリチカオ

Author:シラトリチカオ
白取千夏雄/編集者。1965年函館市宝来町生まれ。元青林堂「ガロ」副編集長、97年よりフリー編集者・ライター・Web構築・管理他なんでも屋と、専門学校・大学講師など。
2005年夏、白血病告知・余命宣告を受けるが「慢性リンパ性白血病」に近いタイプと判明、無治療・対処療法、2014年より抗癌剤治療、巨脾へ放射線など治療開始。2015年夏左上眼瞼にメルケル細胞癌発症、眼瞼切除、再建手術、16年にかけて放射線も耳下腺に転移、郭清術、放射線治療中に再発、左眼球ごと摘出・皮膚移植。転移再発治療中ながらまだ生涯一編集者として生息中。
二十余年の東京在住ののち、07年から京都在住。09年5月、愛妻=漫画家・やまだ紫を脳出血で失った。
やまだ紫クロニクル

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