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2006-08-20(Sun)

マス・コミックの力に驚嘆

マンガ美術館&スポットガイド

技術評論社

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この本、何かで紹介されていたのを読んでから度々書店に行く機会があるたびに探していたのだが、見つからなかった。そんなんAmazonで買えばいいじゃん、と思われるだろうが、この本の定価1380円。Amazonは1500円以下は送料がかかってしまうのだ(笑)。だが結局、Amazonで「サイゾー」と一緒に購入して手元に届いた、そして一気に読んだ。この「読みたい本が書店にない」という問題はもうずいぶん以前から指摘されているし、このことに関しては言いたいことは山ほどあるため、割愛する。
まず断っておくが、この本は「ガイド」とあるが、写真は一点もない。本当に見事に一点も、掲載されていないのだ。全てが(もちろん地図や目次その他の規定部分以外は)著者である進藤氏のカラーイラストで構成されており、まずはその点に賞賛を贈りたい。
28歳で脱サラし、フリーのイラストレーターになった著者は、矢口高雄先生の故郷に建てられた「横手市増田まんが美術館」に紹介されている矢口先生の「ガロに投稿し30歳で銀行員を辞め、漫画家に」という経歴にわが身を重ねて感動している。幸運なことに家庭で小さい頃よりマンガ好きの両親からマンガについて「英才教育」を受けたそうだが、31歳という著者の年齢を考えると、なるほどそういうこともあるのかと思った。
さて本書に紹介されているマンガあるいは漫画家に関する美術館やスポットは15箇所。矢口高雄、石ノ森章太郎、水島新司、リカちゃん、赤塚不二夫、スタジオジブリ、長谷川町子、田河水泡、藤子不二雄A、松本零士、手塚治虫、水木しげる、富永一朗、いがらしゆみこ、やなせたかし、である。どうだろうか、ジブリとリカちゃんが若干異質な感じが無きにしもあらずであるが、納得のいくラインナップだろう。というか、やはり改めて思うのは「マス・コミック」の力である。
マンガという表現は、横手市まんが美術館が賞するように、「昭和の日本が産み出した最もパワフルな文化」だろう。マンガを日本が世界に誇る文化、表現、コンテンツ・産業として高めたのはキラ星のような、先のお歴々の顔ぶれの功績は確かに大きい。だがもちろん、それを支え受け継いできたのは他でもない、我々マンガファンすなわち日本の国民たちだ。いわゆるビッグ・ネームによる「マス・コミック」は、マンガの持つそうした側面=「文化、表現、コンテンツ・産業」全てにおいて高いレベルにあるもので、単に部数の多いメジャー誌に発表されたからといって、このような作家たちのレベルに名を連ねられるものではない。
近年テレビやゲーム、アニメなどとタイアップしメディアミックス(という言葉さえ死語化したように)「マス」の力でゴリゴリと押し付けられる「作品」はたくさん、ある。掃いて捨てるほど、産み出されては消えていく。発行部数が数百万という信じられないような「マス」の雑誌に連載をし、初版で十万部単位というかたちで単行本が発行されるマンガは、間違いなく量的には「マス・コミック」なのだけど、ではマンガ史に刻まれる、いや、先のビッグネームのように愛され、記憶され、それだけではなくこのような形で残っていくものは多くない。
もちろん、「マス」以外の世界からだって、マンガ史に残る名作はたくさん出ている。一部の研究者やマニアと呼ばれる人たちにしか認知されずとも、マンガを「表現」として捉えた場合に確実にエポックとして刻まれていく作品は、むしろ「マス・コミック」と対等な数存在するのではないだろうか。だが、やはりこの本に掲載される作家・作品に比べると、「文化、表現、コンテンツ・産業」全方位的に高いレベルにあるということがいかに大変なことかがよく解るだろう。
そういったある意味突き抜けたマス・コミックの世界、中には国民的と冠されるものもあるのだが、そのようなものに魅力を感じない人たちもたくさんいるとは思う。だけど、間違いなくここに掲載されているものは後世に残っていくものたちだろう。自分はマンガ業界に居たが、いわゆる非・メジャー、というかマスどころか恐ろしくミニマムな世界の、それも特殊な位置で棲息していた者だ。この『ガロ』という世界でさえ、矢口高雄(ガロに掲載されていた白土三平作品に触発され、投稿)、水木しげる(もちろん初期ガロの重要な執筆者)という方々と直接の接点があった。もっと言えば、手塚治虫は『ガロ』に対抗して『COM』を創刊したわけだし、あの時代にマンガに関わっていた人たちならメジャー・非メジャーを問わず『ガロ』のことは知っていたはずだ。その意味ではマンガは描く側、作る側にとってはみんな「仲間」だった。
『ガロ』者の自分でも、この本は届くや一気にページをめくり、あっという間に読み終えてしまった。顔は終始、ニヤニヤしていたと思う(笑)。これは自分がかつて親しんだ顔ぶれが並んでいることもあるのだけど、やはり著者である進藤やす子氏の力が大きい。画力もさることながら、マンガをマンガによって見せるというある意味非常に難しい作業を、実に伸び伸びと、ご本人が楽しくて仕方がないという風情で描かれているのが大きいと思う。この「画力」という部分では、自分も模写にはかなり自信があり、ここに掲載されている全ての作家の絵を模写したことがある(いがらしゆみこも、ある)者にとって、本当に素晴らしいの一語に尽きる。赤塚不二夫の原画を見て、その線の美しさに驚嘆するというのは、自分が何よりその線を模写してみて実感するからだと思う。(いや本当に、トキワ荘組の線は、物凄い。)

<この項、つづく>
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シラトリチカオ

Author:シラトリチカオ
白取千夏雄/編集者。1965年函館市宝来町生まれ。元青林堂「ガロ」副編集長、97年よりフリー編集者・ライター・Web構築・管理他なんでも屋と、専門学校・大学講師など。
2005年夏、白血病告知・余命宣告を受けるが「慢性リンパ性白血病」に近いタイプと判明、無治療・対処療法、2014年より抗癌剤治療、巨脾へ放射線など治療開始。2015年夏左上眼瞼にメルケル細胞癌発症、眼瞼切除、再建手術、16年にかけて放射線も耳下腺に転移、郭清術、放射線治療中に再発、左眼球ごと摘出・皮膚移植。転移再発治療中ながらまだ生涯一編集者として生息中。
二十余年の東京在住ののち、07年から京都在住。09年5月、愛妻=漫画家・やまだ紫を脳出血で失った。
やまだ紫クロニクル

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