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2007-02-14(Wed)

「痛み」について・・・大杉君枝さんの自殺に思う

日本テレビのアナウンサー、大杉君枝(旧姓・鈴木)さんが2月3日に投身自殺をしたニュースは、当日のネットで知った。実は連れ合いの次女Yちゃんの親友で我々夫婦とももちろん長年面識のある子と旧姓が同姓同名(漢字は違う)なので、テレビで見かけるたびに「あ、キミエちゃんだ」などと言い合っていた。そういう「遠いのだが近く思っている人」の死、それも自殺という形に驚くと同時に、何故という思いが強く湧き上がった。
君枝さんは昨年10月に男児を出産後から原因不明の難病「線維筋痛症」で悩んでいたという。全身に絶え間ない痛みを伴う病気で有効な治療法も、発症の原因なども分かっていないという奇病だ。日夜痛み、痺れなどに苦しめられ、不眠や疲労感から鬱病などの精神的症状が見られることもあるというが、今回の自殺の原因がこの病気に悩まされた挙句ということは間違いないのだろう。
離婚、再婚〜高齢出産で念願の子宝を授かったばかりの幸せの絶頂で、その幸福と引き換えのように襲った病魔との闘い。その結末を自ら命を絶つという方法で選択した心中は、察するに余りある。

実は今更このことをこうして思い出しているのは、「痛み」について今朝から考えさせられているからである。

今朝・早朝、痛みで目が覚めた。時計を見ると6時。傍らには猫が丸くなっていつものように密着して寝ていて、その向こうには連れ合いの背中も見える。胸部から下腹部全体までのなんともいえない痛みというか疼きというか、そういう不快感でじっとしていられない。寝相を左、右、仰向けと変えてみるがどの体勢も不快で仕方がない。しばらくはそのまま悶々としていたが、ひょっとして排便すれば治るかもと、トイレに立ってみたが、少量の便が出たものの痛みは収まらない。布団に戻れば、また便意が来た時の出入りで連れ合いを起こすのも可哀想なので、居間のソファに暗いまま横になる。
主治医のU先生によれば、俺の脾臓は通常の数十倍に巨大化し、下は骨盤まで達しているという。当然胃などの臓器も圧迫されて、腹腔の中の空間でおしくら饅頭をしているような形になっているのだろう。時々消化不良を起こしたり、便秘になったりするのは病気になってからの運動不足もあるのだろうが、やはり臓器が圧迫されている物理的な要因もあると思う。気を紛らわすためにテレビだけつけて凝視していると、連れが起きて来てどうしたと聞くので、いつものことだと説明する。
痛みは転げまわるような最上位の激痛を10とすると、今の自分の痛みは2,3といったレベルだ。なので痛みそのものは我慢できないというものではない。けれど、従来脾臓が収まっているべき位置が日常的にズキンズキンと疼くことがある。またある時は、骨盤のあたり、脾臓のエッヂあたりが圧迫されて痛むこともある。またある時は、胸の縦隔にあるリンパ節がズキンズキンと痛む。脾臓に圧迫された肝臓のあたり、右のわき腹から背中にかけて鈍痛がすることもある。こういった一つ一つは弱い、レベル1〜3くらいまでの痛みが単独である場合は、お笑い番組なんかをみてワハハハと笑っていられるし、もちろん食べたり寝たりも普通に出来るのだが、3つ4つと重なった場合は、胸部から下腹部全体にかけてズキンズキンピリピリビクンビクンモヤモヤと、痛みやら疼きやら圧迫感やら、なんとも言えない不快感に覆われることになる。これは単に歯の痛みがレベル9で…というような痛みそのものの不快感に匹敵するようなことになるのだ。
癌宣告をされる前、脾臓の腫脹が今ほどではなかった頃、よく正中のあたりに時折鋭い痛みを感じることがあった。今にして思えば、それは縦隔リンパが腫れて疼いていたのだと思うのだが、当時はストレスから心臓が痛んだのだろうかとか、タバコの吸いすぎで肺がやられたのかとか、いろいろ心配した。また入院中も、脾臓のあたりがズキンとするたびに、とうとう癌が本格的に暴れ出したか、脾臓は破裂しやすいというが大丈夫だろうかと、そのたびにイヤな気分になったものだ。
人間というのは適応力に優れた生き物であると、つくづく感心している。こういう健康な人たちなら血相変えて病院へ駆け込んでもいいようなことも、慣れてくると我慢できるようになるものだ。自分のような巨脾になると、うつぶせには寝られない。寝られないどころか、日常腹を下にして読書したり、運動をしたりなどは一切できない。最初はひどく落ち込んだし、実際不自由も感じたものだが、今ではそれにも慣れてしまった。多発する痛みも、同時多発的に襲われない限りは、外から知らない人が見れば健康体と思われるように暮らすことが出来るようになった。
しかし世の中には、激烈な痛みが、しかも同時多発的に、さらに絶え間なく襲う…という病気がある。先の君枝さんがかかり自ら死を選ぶことで絶つしかないほど、それは苦しいものだと思う。

連れ合いも右の腎臓の摘出手術後( 編集長日記 2002−3)、杜撰な処置のためにその後一年以上、激痛に悩まされた。手術痕が時折カミソリでスパッと切られるような痛み方をし、患部全体がビクンビクンと強烈に24時間疼くのだ。当然眠れず食欲も失せ、四六時中横たわっては眉間に皺を寄せてウンウン唸り、そんな中不定期に襲うカミソリの攻撃に悲鳴をあげる。その合間に小刻みに浅い睡眠が取れるか取れないか、という状態がしばらく続いた。あまりにひどい時は救急車を呼び、手術をした病院へつれて行ったりもしたが、執刀医は「処置はちゃんとしてあるし手術痕も異常はない」と言い、最終的には「気のせい」と放言した。その後ペインクリニックへ通っては無駄足になり、この漢方がいい、この薬がいい、これが神経にはいい、この整体が効くなど、あらゆる方策を試しては、徒労に終わった。
今連れ合いは時々ビリッと右腹部に痛みが走ることがあるが、その他は低気圧が近づくと疼き、鈍痛がするという状態だ。ここまで回復したのは何でもない、「時間」が解決してくれただけのことだ。ひどい手術のせいで(結局腎臓は脂肪腫という良性の腫瘍であった)神経ごと腹筋も寸断され、連れ合いの右わき腹は醜く歪み、ぽっこりと腫れている。くしゃみをする時は患部を抑えていないと、腸が飛び出そうで怖いという。ベルトで締め付けられないので、近所の洋裁をやる奥さんに頼み、オーダーメイドでオーバーオールを何着か作ってもらい、それを外出着にして大学にも通っている。何も知らない人たちは「その服可愛い!」と言ってくれるそうだ。

痛みは感じている本人にしか解らない。医師の中には人の痛みが解らない連中がいて、こういう「原因不明」の痛みを訴える患者をせせら笑い、気のせいだ、他へいけと突き放したりする場合もある。「今ここにある痛み」を「今訴えている患者」に対し適切な処置をしようというペインクリニックが出来たのはつい最近で、まだまだ数も少ない。
君枝さんの「痛み」は死をもって解放されることを望むほど、激烈なものだったのだろう。改めて、ご冥福をお祈りする。
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シラトリチカオ

Author:シラトリチカオ
白取千夏雄/編集者。1965年函館市宝来町生まれ。元青林堂「ガロ」副編集長、97年よりフリー編集者・ライター・Web構築・管理他なんでも屋と、専門学校・大学講師など。
2005年夏、白血病告知・余命宣告を受けるが「慢性リンパ性白血病」に近いタイプと判明、無治療・対処療法、2014年より抗癌剤治療、巨脾へ放射線など治療開始。2015年夏左上眼瞼にメルケル細胞癌発症、眼瞼切除、再建手術、16年にかけて放射線も耳下腺に転移、郭清術、放射線治療中に再発、左眼球ごと摘出・皮膚移植。転移再発治療中ながらまだ生涯一編集者として生息中。
二十余年の東京在住ののち、07年から京都在住。09年5月、愛妻=漫画家・やまだ紫を脳出血で失った。
やまだ紫クロニクル

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