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2007-06-20(Wed)

日本映画全盛期、だそうだ

ずいぶん前に読んだ笠智衆の『小津安二郎先生の思い出』という本が文庫になったので読み返した。気がついたらこの役者が亡くなってもう14年。小津の映画には端役も含めてほとんどに出演している笠だが、生涯小津のことは「先生」と呼んでいたという。年齢もほとんど変わらなかったというが、笠にすれば小津監督は大部屋俳優だった自分を引っ張ってくれ、ずっと使ってくれた「恩人」であり、もし小津がいなかったら自分は役者をやめて故郷で坊主になっていただろう、という。だから終生、笠は小津のことを「先生」と呼び続けた…。何か明治男の無骨で朴訥な、それでいて頑固な、まさに「笠智衆」そのものという感じがするエピソードだ。
笠は明治37年熊本に生まれ、平成5年3月に亡くなるまで、一貫して「俳優」として現役であり続けた。小津安二郎監督の作品には、昭和3年の「若人の夢」(サイレント)から遺作である「秋刀魚の味」(昭和37年)まで、ほぼ全作品に出演している。その笠が、小津の作品について、自分の俳優人生について語ったのがこの本で、実に面白い。読んでいるうちにあの独特の口調、柔和な表情が浮かんでくるようだ。
小津安二郎先生の思い出

朝日新聞社出版局

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小津といえば、ちょっと下から煽るようなアングル、向かい会う役者をそれぞれ真正面から撮影して語らせるショット、独特の台詞回し…などが思い浮かぶが、それらは全て小津監督の緻密な演出によるものだ。役者にも口調や所作だけではなく、目線や微妙な“間”まで実に細かく指定をし、結果出来上がった画面は計算され尽くされたものであったという。笠はそんな細かい小津演出の中でも、それこそ自分を「NGの王様」と呼ぶくらいにダメ出しをされた役者だそうだ。それでも自らの作品のほとんどに出演させたというのは、やはり役者・笠智衆をそれだけ必要としていたということだろう。
小津監督は酒豪であり愛煙家であることは有名だが、笠はどちらもやらない。もともとが明治生まれの九州男なわけだから、ベラベラとしゃべるわけでも、お愛想を言うわけでもない、映画のとおりの「あの調子」だったそうだ。だから、役者・笠智衆以外の個人的な付き合いやお気に入りで起用し続けた、ということではあるまい。
それにしても、今改めて小津作品を思い出すと、役者たちの実に豪華な顔ぶれに溜息が出るほどだ。笠をはじめ、原節子、佐分利信、山田五十鈴、佐田啓二、田中絹代、杉村春子…と、ざっと書いただけでも物凄いことになっている。もう一人、好きな監督に成瀬巳喜男がいるのだが、成瀬監督は高峰秀子がお気に入りだったようでよく起用していたと思う。小津監督の場合はそれが笠だったと思うと、何だかおかしい。それにしても、この日本映画全盛時の俳優の顔ぶれは物凄い。

…ところで昨年に続き、今年も邦画つまり日本映画が好調らしい。長らく優位だった洋画の興行収入を、去年は邦画がとうとう抜き去ったと話題になり、今年もその勢いは続いているという。かつての、それこそ先の日本映画全盛期をはるかに凌ぐ好調さであり、ここ数年こそが本当の意味での日本映画の全盛時代、なのだそうだ。ほ〜お。
週刊新潮(07/6/14)によると、邦画といっても事実上東宝の一人勝ち状態のようで、その原因が「テレビとのタイアップ」ということだ。東宝の今年4月の興行収入は43億3280万円、次点は洋画ののフォックスだが、たった21億6932万円だから東宝の半分である。何で邦画が、いや東宝がこれほど興行収入を伸ばしたか。テレビとの提携つまりタイアップのお蔭で、完全な新作なら通常宣伝、CMだけで2,3億円はかかるところを、人気テレビドラマの「映画化」なら必要はない。元ネタ提供局であるテレビ局が、いくらでも宣伝をしてくれるし、そもそもテレビ局自体が映画の「制作委員会」とやらに名を連ねてくれていれば、それでもう宣伝費は事実上タダになるということだ。
そうしてテレビでガンガン映画のCMやバラエティ番組とのタイアップなどを見せられるうちに、イッパン大衆は「見なきゃぁ〜、うへへぁうぁえあ〜」とアホ面して何も考えずに映画館へ行く、とまあこういう構図らしい。
ちなみに昨年だけでも
「着信アリ」=日本テレビ
「日本沈没」=TBS
「LIMIT OF LOVE 海猿」=フジテレビ
「TRICK 劇場版」=テレビ朝日
「劇場版ポケモン」=テレビ東京
と、各局満遍なくタイアップする臆面の無さ。
さらに絶好調の今年4月だが、これまた
「名探偵コナン」=日本テレビ
「バッテリー」=TBS
「アンフェア」=フジテレビ
「クレヨンしんちゃん」=テレビ朝日
が好調だったとか…。東宝はもう全映画をテレビとタイアップでやる、と豪語する役員がいるほどだそうだ。洋画離れ、字幕(映画)離れと言われて久しいわけだが、ハリウッド作品やアメリカのゴリ押しする「娯楽」観への飽き、拒絶反応みたいなものがウンタラといろいろ語られてきたが、要するに、日本人が軽〜〜くなっただけの話だろう。ちなみに上に挙げた映画、幸か不幸か俺は一本も見ていないし、今後も恐らくテレビでもDVDでも見ることはないだろう。内容なんか見なくても解る。それこそ普段テレビを見せられていれば、あらすじも登場人物の演技力も何も丸見えだ。もうどーーーーーーでも、いいです。
あ、しまった。何かのはずみで「日本沈没」だけチラっと見てしまった。もちろん前作を見ていたから、どんな風になったか興味もあったわけだけど、途中で夫婦で顔を見合わせて、そうして見るのをやめた。役者の、いやタレントどもの演技のひどさ、とりわけ台詞廻しのひどさ、脚本のリアリティの無さ、つまり映画全体に漂う「金をかけたけど、バカ」映画についていけなくなったからだ。

テレビを見ていると、各局が競ってどーーーーーでもいい映画をお気楽に作っては、暴力とも言える垂れ流し宣伝の物量で見せようと迫ってくる。演技の出来ないジャリタレ、ジャニーズ事務所のガキだの今旬だとかいうモデルあがりのタレントだのを、元ネタがすでに漫画で高い評価を得ているものから映画にしたり、かつての名作を焼き直したり、もうほんっとーに、暗澹たる気分になってくるものだ。いや別に好きで見てる分にゃそういう人たちに何ら文句はないし、勝手にやってくれりゃいいわけで、これまたどうでもいいっすけど。
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シラトリチカオ

Author:シラトリチカオ
白取千夏雄/編集者。1965年函館市宝来町生まれ。元青林堂「ガロ」副編集長、97年よりフリー編集者・ライター・Web構築・管理他なんでも屋と、専門学校・大学講師など。
2005年夏、白血病告知・余命宣告を受けるが「慢性リンパ性白血病」に近いタイプと判明、無治療・対処療法、2014年より抗癌剤治療、巨脾へ放射線など治療開始。2015年夏左上眼瞼にメルケル細胞癌発症、眼瞼切除、再建手術、16年にかけて放射線も耳下腺に転移、郭清術、放射線治療中に再発、左眼球ごと摘出・皮膚移植。転移再発治療中ながらまだ生涯一編集者として生息中。
二十余年の東京在住ののち、07年から京都在住。09年5月、愛妻=漫画家・やまだ紫を脳出血で失った。
やまだ紫クロニクル

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