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2005-03-02(Wed)

「出版不況」--細く長〜く…ではダメか? その2

 寡占化の激しい出版業界では総売上高から案出する一社平均の売上額、発行点数などは意味をなさない。同様に資本金額や従業員数などの規模をならして平均しても意味がない。出版社の大手と非大手では何もかも、あまりに差がありすぎるからだ。つまり、出版業界、そのうち特に版元はごく一部の大手と、残り数千の零細の全く二つに分類されるということになる。これをごく一部の大手出版社による寡占状態、と言う。
 ではどれくらいの寡占状況かというと、数年前のデータで出版社全体の売上高は2兆4千億円ほどだが、

・法人所得上位10社で売り上げの市場占有率(シェア)が約40%
     上位20社で                約50%
     上位50社で                約70%      なのである!

 ということは、単純計算で業界全体約4500社全ての売り上げ高約2兆4千億円のうち、実に1兆6800億円を上位50社でたたき出していることになる。残った7200億円を4350社で分け合っているということは、1社当たり実にたった1億6600万円。当然上位100社まではもっと多いだろうから、それ以下の会社の売り上げは想像に難くない。つまりは、そういうことだ。
 こうした数字にはほとんどの人がピンと来ないかも知れないが、同年の日産自動車一社の売上高が約3兆円、トヨタになると約8兆円。パチンコ業界は数年前に10兆円市場と言われていたのが、現在では30兆円を越え、一説によると40兆とも50兆とも言われている。広告業界は6兆円だ(ちなみにその45%を5つの大手広告代理店が占有)。

 さらに新刊出版点数は1982年に年間30000点を突破。その後15年で倍以上(62000点)へと増加した。一年間に今では7万点を越える新刊が出版されているのですぜ旦那!? しかし一点あたりの平均発行部数は年々減少しており、2001年にはついに一点あたり2万部を割り込んだ。これはどういうことだろうか? つまり、前の項でお伝えしたような、タイトル数が増えてはいるものの、小部数で寿命の短い、いわば「Hit&Away」つまり「出して、その時売ったら終わり」というものが増えていることも事実だ。簡単に言えば粗製濫造というわけですな。

 こうした粗製濫造の例としてはいくつかパターンがある。
●企画力の低下=安易な「パクリ」本(売れた企画があれば恥も外聞もなく追従する)
●内容、質の低下=タレント本(安易にネームバリューだけで選び内容を問わない)
●出版理念の低下=一時のブーム本(長く良書を売ろうという気概がない)
 などなどが考えられるだろう。
 むろん、点数あたりの刷り部数の減少は、このような粗製濫造だけが原因ではない。例えばよく言われるように、若者の好みが「タコツボ化」「ディープ化」したと言われるようになった80年代以降は特に、一部のサブカルチャーやオタク本関連などは最初からその筋のオタク・マニアを選んでディープな本を出すから、当然数百万部のベストセラーを最初から狙っているわけではない。少ないコアなマニアにきっちり行き渡らせればそれでいいわけだ。とにかく、こうした傾向はしっかりと頭に入れておくことが必要だと思う。

 いっぽう販売チャンネルである書店はというと、96年にはじめて廃業店舗数が新規出店数を上回り、以後その傾向が続いている。日本から書店が減り続けているのだ。けれど、そのことは単純に消費者=読者の「書店離れ」と言いきれない側面もある。
 1991年の新規出店数536に対し新規書店の坪数は平均57.1。けれど96年には平均坪数が87.8坪と増加している。つまり、街に古くからあった零細の個人営業の小さな書店が廃業し、大型・特にメガ書店と言われる1000坪越クラスの大型書店の出店が目立ちはじめたのが、やはり96年だからだ。
 もちろん従来の個人経営の小書店が廃業していく背景には後継者不足などの理由もあろうが、やはりコンビニエンスストアの伸長も見逃せない。というより、それがもっとも大きな原因だろうと思う。
 かつて、本や雑誌(いわゆる出版物)は出版社によって作られ、取次を中心とする流通ルートを通して書店に送られ、購入される(出版社→取次→書店→読者)のメインルートが一般的で、1945年代には出版物の90〜95%を受け持っていた。つまり「本は書店で買うもの」であり、それが当たり前であった。しかし、このメインルートのシェアが1960年代から低下し始め、現在では70%前後である。流通ルートが変化し、現在では本は書店以外でも買えることが当たり前となっている。

 そうした書店以外の販売チャンネルで、近年伸張著しいのがコンビニエンス・ストア(以下CVS)というわけだ。流通ルート別の構成比推移(%)(1995年→2000年)を見てみると、書店が68.2%から65.4%に減少したのに比べ、CVSは15.9%から19.5%に増加している。その他のチャンネル…例えば大学生協や鉄道弘済会=キヨスクその他のルートはほぼ横ばいなので、書店の減少分をCVSが奪っているという構図が見える。
 けれど大型書店ではなく、ダメージを直撃されているのは零細書店だ。なぜなら、CVSで売られる「出版物」はほとんどが雑誌(扱い)だ。CVSの主力商品は何かというと、おにぎりや弁当、そして雑誌である。CVSの出版物の取り扱い比は週刊誌・雑誌が96%、文庫・新書などが4%で断然雑誌中心だ。皆さんも週刊誌やマンガなら、CVSで立ち読みするか、弁当のついでに買うかするだろう。わざわざ書店へ赴いて週刊誌を買い(立ち読みに対しても書店の方が厳しいし)弁当や茶は別に買う、という人はあまりおるまい。
 このCVSの影響を最も受けているのが小書店なのである。実は20坪以下の中小の個人経営の書店の主力商品は、やはりこうした雑誌やコミック(ほとんどが雑誌扱い)である。売上構成比で50-70%を占めている。つまり、同様の商品を主力にするCVSが増え続けていることによる打撃は甚大なものがある。CVSが近くにできると大きな打撃を受け、廃業に追い込まれる書店もある。
 このように今日の書店業界は、大変厳しい。書店の大型化やCVSの影響で中小書店や町の本屋さんは廃業に追い込まれる。

 そしてCVS全体での雑誌の売上額は数年前に5000億円を超えた。出版業界全体での「雑誌扱い」の売上額が概算で1兆6000億円とすると、CVSは全雑誌の約30%を販売していることになる。いいですかお客さん。日本では全雑誌の流通量の3分の1をCVSが販売しているのですよ!
 ちなみに1996年にはCVS最大手であるセブンイレブンが、出版物の売上1300億円を突破し、書店のトップ紀伊国屋書店チェーンの1104億円を約200億円も上回ったことは大きな話題となった。ほとんどが雑誌の売上である7-11に対して紀伊国屋の方はもちろん、書籍も合わせた合計だ。しかしこのことで、日本一の書店は何とセブンイレブンだ、ということになったのである。
(この項つづく)
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シラトリチカオ

Author:シラトリチカオ
白取千夏雄/編集者。1965年函館市宝来町生まれ。元青林堂「ガロ」副編集長、97年よりフリー編集者・ライター・Web構築・管理他なんでも屋と、専門学校・大学講師など。
2005年夏、白血病告知・余命宣告を受けるが「慢性リンパ性白血病」に近いタイプと判明、無治療・対処療法、2014年より抗癌剤治療、巨脾へ放射線など治療開始。2015年夏左上眼瞼にメルケル細胞癌発症、眼瞼切除、再建手術、16年にかけて放射線も耳下腺に転移、郭清術、放射線治療中に再発、左眼球ごと摘出・皮膚移植。転移再発治療中ながらまだ生涯一編集者として生息中。
二十余年の東京在住ののち、07年から京都在住。09年5月、愛妻=漫画家・やまだ紫を脳出血で失った。
やまだ紫クロニクル

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