--------(--)

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
2007-12-19(Wed)

漫画家になりたい人へ ( 番外4の補2) オリジナルの力・一ノ関 圭

このところ本シリーズでオリジナリティの重要性について触れ、さらにドメジャーにおけるパクり・安易な「売れ線」規定路線の単純再生産の構造などにもちょっと言及したところ。
複数の方から「ガロ系以外で、とくにメジャーで読むべき漫画家といったら?」という質問をいただきました。

物凄く難しい質問ですね。
いや、難しいというのはたくさんあり過ぎて、という意味です。絵の物凄くうまい人、お話が飛びぬけて面白い人などそりゃあもうメジャー・非メジャー系問わずた〜くさんおられますよ。枚挙に暇がない、というのはこのことっす。関係ないすが最近のメジャーなコミックの世界ではむしろ、「絵が個性的なんだけどヘタクソ」という人が目立つような気がしますね。んでやっぱりそれは「漫画屋」さんに多いような気が…。

それはともかくとして、連れ合い(やまだ紫)とも時々話すんですが、飛びぬけて絵がうまくて、しかも個性があり一目でその人と判り、さらにお話もまたオリジナリティに溢れそれでいて魅力的、何年経ってもその評価にまったく陰りがない…という意味において最強だと思われるメジャー畑出身作家の一人が、一ノ関圭さんではないかと一致しております。
一ノ関さんは『らんぷの下』で1975年にあのビッグコミック賞の本賞を受賞されてデビュー、その後は寡作ながら名作を80年代初頭までコツコツと描かれてきた作家さんです。ちなみにビッグコミック賞は前にも言及したような気がするけど、本賞ってたった2人しか受賞者がいないという、超難関の漫画賞だったんすよね。連れのやまだ紫も、デビューは虫プロ商事「COM」ながら、ビッグコミック賞に入選はしているが本賞は逃しているし。(「やまだ紫、「COM」との出会い」参照)もっと言えば、一ノ関さん同様にやまだ紫も身内びいきとの謗りを敢えて気にせずに言えば「絵がうまくて、しかも個性があり一目でその人と判り、さらにお話もまたオリジナリティに溢れそれでいて魅力的、何年経ってもその評価にまったく陰りがない」作家の一人であると思うけれども。
一ノ関さんの作品集は確か2冊しかなくて、それらは絶版になって久しいと思う。思う、ってちょっと調べりゃ今は解るから、調べてみましたが、デビュー作にして代表作、そして素晴らしい傑作でもある「らんぷの下」と、「茶箱広重」の2冊ですね。
自分はリアルタイムではなくて、ちょっと後で古書店で買って読んだのが80年代のはじめ頃、もう描かれなくなった頃だったと思います。もっと早く知っておくべきだった、と強烈なショックを受けた作家さんでした。
「ガロ」系で言うと林静一さんや、メジャー系では上村一夫さんとかを彷彿させ、それでいて画力では全く引けを取らない(というより、純粋な画力といことであれば一ノ関さんの方が上であるとさえ思う)この作家は凄い。当時漫画家を目指していた自分にとっては震えがくるほどの衝撃を受けたといっても過言ではありませんでした。
画力については一ノ関さんはデビュー当時東京芸術大学大学院に在学中であったということを知って納得した(と同時に学生と知ってもっと驚いた)ものでしたが、時代考証や和装の描写の確かさなど、単に「絵を学んでる学生さんだからうまくて当然」なんてレベルを遥かに凌駕している凄さを感じたものです。ええ、自分なんかもうダメの500乗くらいであると悟らされましたよ。しかもその直後に「ガロ」に入って編集として本物の林さんの原画や丸尾末広画伯の原画とかいろいろ見ちゃった日にゃ…(以下省略)。
その卓越した画力についてやはり語られ賞賛されることの多い一ノ関さんですが、お話の素晴らしさ、特にはじまりからラストまでグイグイ引き込まれていき、ほぉお〜っと溜息が出るような読後感というか、その構成も本当に素晴らしい。
惚れますよ。
前項などで「時代考証が出来ない人が増えてきっちりした時代劇が少なくなった」みたいなことを書きましたが、考証というのは何も平安時代や江戸時代とかだけに必要なのではなく、現代劇にも必要なんすよね。一ノ関さんは近世、明治期なんかの描写も本当にきっちりと描かれていて、凄いと思う。
外見では和装の女性のなまめかしさをきっちりと、そして内面の情念さえも描き出している。男性の体の筋肉とスジの様子もしっかり描け、もちろん男の内面のもろさ、幼さも描ききっておられる。ああ、もう今思い出しても身もだえするようなうまさです。

これらは出版社系の絶版コミック復刻・オンデマンド販売サイト「コミックパーク」で入手可能です。
俺ごときがいくら凄さを書き連ねても百聞は一見にしかず。幸いにしてオンデマンドながら、この宝石のような作品を読むことが出来ます。とにかく読め。漫画家を目指す人なら全員一人残らず読むべきだ。繰り返すけど、惚れますよ。

コミックパーク/作品詳細  らんぷの下 ・ 一ノ関 圭 

コミックパーク/作品詳細  茶箱広重 ・ 一ノ関 圭 


<追 記 07/12/19>
一ノ関圭さんについて、漫棚通信の細井さんより最新情報をご教授いただきました。

> ご存じかもしれませんが、
> 不定期刊で発売されている雑誌「ビッグコミック1(ONE)」に、
> 一ノ関圭氏がマンガ『鼻紙写楽』を
> 2004年ごろより連載されています。
>
> 雑誌自体が不定期刊のうえ、
> 一ノ関作品が休載されることもあるので、
> なかなか読めないのが難点ですが。
>
> 本年11月に発売された12月1日号では、
> 一ノ関氏のイラストが表紙になっておりますし、
> 連載7回目の50ページ作品が掲載されています。
> 今ならまだ、書店で手にはいると思います。

うへえ! 全然知りませんでした。って不勉強っすね自分…。細井さんもおっしゃられているように「ビッグコミック1」っていつ売ってんだ、という雑誌だもんなあ。ノーチェックでした、探します!

あと追加情報として

> また、2001年に発売された
> 服部幸雄文、一ノ関圭絵の
> 「絵本 夢の江戸歌舞伎」(岩波書店)という本は、
> 江戸の芝居小屋を一ノ関氏の超絶技巧によって大きく図解した本で、
> おそらくこれが、今回の歌舞伎を舞台にした
> 『鼻紙写楽』を描くきっかけになったものでしょう。

とうことですが、こちらは連れのやまだ共々、知っておりました。やまだは「絵本作家になられたんだと思っていた」そうです。
それにしても素晴らしい才能がいまだ現役と知って嬉しいです。細井さん、ありがとうございました。
漫画家志望の人は必ず、そうでない普通の漫画ファンも読むべき、ですよ。
スポンサーサイト

コメントの投稿

管理者にだけ表示を許可する

コメント

千葉君のこと

コメントありがとうございます。
恐らくこの記事の前日の記事
http://blog.goo.ne.jp/shiratori-chikao/e/0b5f0ed22dbb12150999f5f562764a6a" target=_blank>http://blog.goo.ne.jp/shiratori-chikao/e/0b5f0ed22dbb12150999f5f562764a6a
へのコメントだと思います。

千葉君が理不尽な死をとげて、犯人が捕まらぬまま、また新しい年が明けてしまいました。
夢を諦めるなと、遠くへ送り出したご母堂の思い、そして無念を考えると胸が締め付けられるようです。
先日も、学部のさそう先生とたくさんの学生らが、大学で作った千葉君の事件に関する小冊子を京都の出町柳駅前で配布しました。
事件の解決を強く願います。

母としての想い

当初からずっと気になり見守っていましたがもう3年目になるのですね。事件の様子を漫画で見たりすると大作君は下を向きジッとしていたような感じで、大声を出すとか車道に飛び出し助けを求めて欲しかったと悔しい思いで一杯です!優しい写真の笑顔がいつも忘れられません。私にも今年から大学に通う息子がいます。精華大の近くの芸大です!お母様のお気持ちを思うと胸が張り裂けそうになりただただ涙が止まりません。もしかしたら犯人にも優しい母親がいて普段は可愛い息子なのかも知れない。でも大作君の夢や才能や将来の希望を奪った犯人は人間ではないし時間が経っても怒りは収まりません。今夜、ムーブでまた特集を観ました。また改めて悲しみは深まり、新情報が手掛かりになってくれることを祈ります。学校の皆さんや先生方が一生懸命に解決策を考えておられる姿に感動しました。本当に沢山の方たちに愛された方だったのですね。残念でたまりません!
カレンダー
09 | 2017/10 | 11
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31 - - - -
最新記事
カテゴリ
最新コメント
最新トラックバック
メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

広告
アフィリエイト・SEO対策
検索フォーム
プロフィール

シラトリチカオ

Author:シラトリチカオ
白取千夏雄/編集者。1965年函館市宝来町生まれ。元青林堂「ガロ」副編集長、97年よりフリー編集者・ライター・Web構築・管理他なんでも屋と、専門学校・大学講師など。
2005年夏、白血病告知・余命宣告を受けるが「慢性リンパ性白血病」に近いタイプと判明、無治療・対処療法、2014年より抗癌剤治療、巨脾へ放射線など治療開始。2015年夏左上眼瞼にメルケル細胞癌発症、眼瞼切除、再建手術、16年にかけて放射線も耳下腺に転移、郭清術、放射線治療中に再発、左眼球ごと摘出・皮膚移植。転移再発治療中ながらまだ生涯一編集者として生息中。
二十余年の東京在住ののち、07年から京都在住。09年5月、愛妻=漫画家・やまだ紫を脳出血で失った。
やまだ紫クロニクル

シンプルアーカイブ
リンク
RSSリンクの表示
QRコード
QR
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。