--------(--)

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
2008-01-25(Fri)

鴨沢祐仁さんが亡くなる 2

朝10時、ベランダからこのところの寒波の影響で、京都は今日も雪だ。昨日も日中から雪が舞っていたが積もるほどではない…と思っていたら、今朝起きたらうっすらと家々の屋根に雪が積もり、さらにひらひらと大きめのぼたん雪が舞っている。強くはないがかなり多いから、このまま降り続ければこのあたりでも積もるかも知れないね、と連れ合いと話す。
連れは大学に用事があるので、11時ころ先にご飯を食べようと、宝が池通りにある「ドルフ」へ出かける。タクシーの女性運転手は「ほんまに今日は凄いですねぇ、今朝は荒神橋も凍ってましたから危なかったですわぁ」と言っていた。荒神橋というのは鴨川にかかる丸太町通りが通る丸太町橋の一つ北の橋で、位置的には京都御所の東側にあたる。運転手さんのニュアンスでは「あの辺りが凍るなんて」えらい寒かった…という感じなので、宝が池や北山周辺ならともかく、ということらしい。
ご存知のように京都の市中は三方を囲まれたすり鉢状になっていて、我々の住む洛北の方に向かってゆるやか〜な上り坂になっている。ちょっと見てもただの平地にしか見えないが、自転車なんかを漕ぐとすぐ解る。行きと帰りで全然ペダルの重さが違うからだ。
ドルフのことも前に書いたけれど、裏庭には大きな欅の木があって、四季折々の風景を楽しませてくれる、いい雰囲気のカフェレストランだ。煮込みハンバーグがおいしい。今日は昼なので俺はカレー、連れ合いはピザトーストにした。ここはパンも凄くおいしい。

しんしんと雪が降る欅の庭を見ながら、亡くなった鴨沢さんのことをしみぢみと少しだけ話す。生前のブログ『鴨沢祐仁の「鴨の水掻き」』を見ていても晩年は決して恵まれた境遇だったとは言えず、いや、ご本人が包み隠さず書いておられたのではっきり言えば、生活保護を受けるほど苦しい生活をしておられた。鴨さんはご自身で書かれているように2003年から「外傷性蜘蛛膜下出血の怪我、失恋、自己破産、専門学校講師退職、自殺未遂、生活保護、新しい恋愛、婚約、絵本の仕事…」という日々を送っていた。その前には「アルコール依存、欝病…」という流れがつく。もっと言えばそれらに至るまでに、自分の評価が世間から思うように得られないことへの苦悩、「作家」であり続けることの懊悩などがずっとずっとあっただろう。
「アルコール依存から生活が荒れ、仕事が出来なくなり人間関係を壊し、あげく亡くなった、ならば自業自得ではないのか」…これが大方の世間の見方であろうと思う。確かにあまり同情の出来ない、こういった破綻の仕方をする人って多いのも事実だ。でも鴨さんの場合は、アルコールへの逃避…それは些細なことからだっただろう、ナイーブな人だったからちょっとしたことで傷ついたり、ウサを晴らすために飲んでいったことでちゃくちゃくと依存を進めてしまう。当然酔い方も悪い方向へ行く。よくいう「酒乱」というやつだ。
むかしむかし…だけど、青林堂の何かの集まりだったかパーティだかの飲み会の席で、鴨さんが「おい、こっち酒ねえぞ酒!」と怒鳴っているのを目撃したことがある。なんだか凄い形相だった。あんなに声を荒げる人だったっけ、とやまだ紫先生と後で顔を見合わせたものだった。件のY先輩から鴨沢さんの酒癖についていろいろと聞くようになったのはその後だったと思う。
何がこういう繊細な人をアルコール(や薬物)へ逃避させるのか。…それは「弱いから」なのだろう。その辺の傲慢なオッサンががぶがぶ酒を飲んでいるのとは違う、ふだん自分を抑圧して自省してつつましく生きているからこその、酒への逃避と自分の解放。その心地よさが依存を招き、依存からやがて仕事や友人を失うことに繋がっていく。
きのう、「ガロ」の作家さんには酒への逃避・依存に陥る人が多いと書いた。ざっと思い出すだけでけっこうな数の作家さんの名が浮かぶ。みな、酒さえ無かったらなあ、と言われる人たちだ。
なんだかとりとめがないが、同じマンガを生業にしていても、自分を作家などとは思わず、版元や編集の言うことをホイホイ聞いて原稿を金に換えるぜワッハッハ的な生き方が出来れば楽だったよなあ、とも思う。そうすれば若くしてけっこうビックリするくらいの金がザックザク溜まる可能性がある。その時点で「オレ本当はこんなマンガ描きたくないんだけどな、金のためだからな」と思っていても、金があれば大概の憂さって晴らせるもんだ。
「金さえもらえれば何でも言うことをききます、何でも描きます!」…そんな人ならもともと「ガロ」からデビューなんか、しねえんだよな。そういう才能ある知人がお金に困っている、そんな境遇にあると聞くのは本当に切ない。もっともたぁくさんそういう例を知ってるんだけど。
ともかく「ガロ」は原稿料が無かったことをよく最近の若造は知ったようなことを言って批判するが、馬鹿野郎と言いたい。なぜ、そうだったか。なぜ、それでも素晴らしい作家・作品が集まったのか。なぜ、潰れなかったかをちゃんと学べよ、と言いたい。そして、「ガロ」以外に、作家に向かって「タダだけど作品をかけ」などとは絶対に言ってはいけない。
鴨沢さんは確かに酒と抗鬱剤と睡眠薬という危険な3点セットを服用し続けた結果、昏倒したのかも知れない。だけどそこまで追い込んだのは何だったのだろう、そう考えると「自業自得」だなんて言葉は口が裂けても言えまい。
よく知りもしないのに、根拠もなく人より高みに立って人を「結局あの人はコレコレなんだよね」なんて勝手に「総括」してみせる奴がいる。お前は神か? 何も世に残しておらず誰も感動させたこともなく、何も生み出してもいない凡人が、自己を削って作品を世に出す作家に向かって解ったような事を言ってんじゃねえ。俺は昔からいつも強くそう思ってきた。当り前だが作家ではなくとも、誰にでも親があり歩んできた人生がある、他人が簡単にうわべだけを見て語れるものか。
鴨沢さんのブログの一日一日の記録を追っていくと、鴨沢さんが生きていた、確かな息遣いが伝わってくる。あとは鴨沢さんの遺した素晴らしい作品、記憶を後世にどう語り継いでいくか、遺していくかが、残された者の課題だ。
スポンサーサイト

コメントの投稿

管理者にだけ表示を許可する

コメント

鴨沢ファンの一人です

鴨沢さんの「酒と犬の日々」を読みとても切なくとても感動したのでネットで調べていたら既にお亡くなりになられたことを知り鴨沢さんの人となりをこのサイトで知った次第です。
鴨沢さんは今頃天国で愛犬ペロくんと逢って楽しい日々を過ごされているでしょう。
人間社会ではいろいろあったでしょうが愛犬だけは鴨沢さんがかけがいのない存在だったでしょう。この事実に敬意を表しご冥福をお祈りします。今度生まれ変わる時は人間でない方が良いでしょう。。

ども。>龍

いや、何か余りに曲解されているような気がしましたね。
実は旧知の人からもこれを読んだ感想とか貰ってますが(メールなどで)、アルコール依存者は本人に一方的に責任があると読める、というような指摘は皆無だったわけで。もっと言えば、自分はむしろそういう「偏見」みたいなものの反対側にいるつもりだし、アルコール依存専門の病院に取材へ行って、専門家の人に聞いた時にも繰り返し言われたのはそういう世間一般の誤解や無理解、無知で「患者」を一方的に苦しめても、何ら解決にはならないということだった。

このブログも長くなりましたからね(笑)、最初からずっと読んで下さっている人は俺という人間がどういう思考・志向・嗜好の人かはだいたい知ってくれてるんでしょうけど、検索エンジンなどでポッと一つの記事だけ読まれると、(それもうわべだけ)誤解や曲解が生じるんでしょう。
我々もネット社会にいる分、そういう部分には注意しないといけないということですね。

ども。

いやはや余りにヒドいイチャモンだったので呆れていたんですがwww
白取さんのこの文章を読んで、鴨沢さんだけではなく、編集部におられたYさんや、他の作家さんたちへの切ない思いと、アルコール依存という「病気」への理解と怒りなどがひしひしと伝わりこそすれ、
「依存症者に一方的に責任があるかのような」
印象は全く受け取れなかったもので。。。
自分なんかが書いてもアレなんですが、かっての吾妻ひでおさんの書評などでも、アルコール依存への深い理解がご自身の経験とともに語られておられたと思うし、要するに、ネットでググってつらーってここだけ斜め読みして、噛み付いた。。。ってことなんでしょうな。
こういうことがあっても、逐一対処しなければならない。それはご自身が病気と戦いつつ、なら面倒で大変なことだと思います。
だから、コメント欄を閉じられたのに。やはり閉鎖空間では、という思いから開けたらまたこういう輩が出てくる。それでもあけた以上真摯に答える義務がある。
やっぱり閉じておいた方がいいのかも知れませんね。

うーん

コメントありがとうございます。
この記事だけを通りすがりで読まれたということなので、アルコール依存に関しては、以前もここで専門治療病院へ取材へ出かけたこと、知り合いにも複数おられたこと、また身近で複数の様子を見た経験があること、さらに専門家の話を実際に聞いたこと、などを念のため書いております。

一方的に依存症者に責任があるなどと、書いた覚えもありませんし、この文章がそういう意図に取られるという意見も、今まで一度もいただいておりません。
もっと言えば、むしろその逆で、自分としては本人にももちろん責任はある(意思の問題など、いろいろあります、完全にあります)、しかし、だからといって「病気」になってしまった以上、本人に一方的に責任を押し付けても何ら解決にはならず、周囲の偏見や無理解・誤解が症状を悪化させていくことも熟知しているつもりです。
よく本文を読んでいただければお判りかと思いますが「そこまで追い込んだのは何だったのだろう、そう考えると「自業自得」だなんて言葉は口が裂けても言えまい。」と書いています。なぜそれが「一方的に責任があるかのような印象」なのか、残念ですがよく理解できません。
またそのような印象をたくさんの人に与えているのなら自分の力が足りず、書き換えるなどをしなければなりませんが、たくさんの人の反応はむしろ「賛成」と「肯定」であった以上、申し訳ありませんが、どこか拙文を誤解されているのではないでしょうか。
とにかく、「依存症者に一方的に責任があるかのような」記述は一切していないつもりです。それはご理解いただきたいと思います。

アルコールの問題

完全な通りすがりなのですが、(鴨沢さんの名前を検索していてお邪魔しました)どうしても伝えたいことがあります。

『何がこういう繊細な人をアルコール(や薬物)へ逃避させるのか。…それは「弱いから」』
このあたりの一連の依存に関する記述は、偏見だと思います。

アルコール依存は、病状が進行性の花粉症のようなものだと、私は捕らえています。
『それでも最初に口にしたのは本人だ、問題があるのを自覚できないのは本人だ、自覚しても断酒できないのだから本人の弱さが問題だ』と言われるのなら、仰る通りかも知れませんが。

こちらの文章からは、依存症者に一方的に責任があるかのような印象を受けます。
私の意見こそが一方的で偏ったものだと思われても、是非いちど、専門家の意見を調べてください。
カレンダー
05 | 2017/06 | 07
- - - - 1 2 3
4 5 6 7 8 9 10
11 12 13 14 15 16 17
18 19 20 21 22 23 24
25 26 27 28 29 30 -
最新記事
カテゴリ
最新コメント
最新トラックバック
メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

広告
アフィリエイト・SEO対策
検索フォーム
プロフィール

シラトリチカオ

Author:シラトリチカオ
白取千夏雄/編集者。1965年函館市宝来町生まれ。元青林堂「ガロ」副編集長、97年よりフリー編集者・ライター・Web構築・管理他なんでも屋と、専門学校・大学講師など。
2005年夏、白血病告知・余命宣告を受けるが「慢性リンパ性白血病」に近いタイプと判明、無治療・対処療法、2014年より抗癌剤治療、巨脾へ放射線など治療開始。2015年夏左上眼瞼にメルケル細胞癌発症、眼瞼切除、再建手術、16年にかけて放射線も耳下腺に転移、郭清術、放射線治療中に再発、左眼球ごと摘出・皮膚移植。転移再発治療中ながらまだ生涯一編集者として生息中。
二十余年の東京在住ののち、07年から京都在住。09年5月、愛妻=漫画家・やまだ紫を脳出血で失った。
やまだ紫クロニクル

シンプルアーカイブ
リンク
RSSリンクの表示
QRコード
QR
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。