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2005-03-21(Mon)

「出版不況」--細く長〜く…ではダメか? 補

 「マンガマスター ―12人の日本のマンガ職人たち」の項で紹介したように、日本漫画がどんどん欧米に紹介され、アチラ側からも積極的に日本漫画を研究する人が増えている。
 俺も昔、ブラスト出版というところから「Comics Underground Japan」(Blast Books)というガロ系漫画のアンソロジーを出したことがある。原稿をセレクトしたり向こうに複製を送ったりしたのが95年ころ、本がアメリカで出版されたのが1996年だから、いくら何でもガロ系の漫画をアメリカで紹介するのは早すぎたか、と。
 その後2000年になって、先に言及した「Secret Comics Japan」(Viz Communications Inc.)を編著書としてVIZさんからやはりアメリカで出版させていただいた。
 その後、ブラジルのConrad Editraがそれらの仕事を見てコラムやインタビューの仕事をくれ、一時は日本での編集エージェントになったのだけど、向こうの経済的事情と体制の変化で解消となった。井上雄彦さんにConradの仕事でインタビューしたのは2002年頃だったか。

 ともかく、日本の漫画やアニメーション、関連してゲームなどが世界的に優れた文化、表現でありコンテンツであることはもう充分認知されている。けれども、優れた漫画やアニメがたぁぁくさん世に出て久しいこの国、他ならぬ日本の、特に政官界がそれに気付くのはずいぶん経ってからだったと思う。宮崎駿さんの作品が国際的に高い評価(『千と千尋の神隠し』が第52回ベルリン国際映画祭金熊賞受賞)を得て、はっきりと「これからは日本の漫画やアニメも世界にアピールできる有力なコンテンツだ」「ビジネスだ」「ひょっとして誇りうる文化かも」となってきたに過ぎないような気がするのね。
 以前から、小野耕世さんのように積極的に世界に向けて日本の漫画やアニメを紹介されていた先達はたくさんおられますが、ほとんど孤軍奮闘というか手弁当っすね。国が力を入れてバックアップするとか保護をして次代の作家を育てるとか、そういう動きは本当に鈍いし不十分だ。
 けれど、では、国なり地方自治体でもいい、要するに政や官の側が「保護」したり「後押し」するようになると、はっきり言って俺らは迷惑なことも多い。
 つまり彼らは自由な漫画やアニメというコンテンツ全てを「保護・育成」しようなどとは思わない。保護して「いいもの・悪いもの」を必ず選別する、いわばそうした「お上のお墨付き」のものとそうでないものに分かれるだろう。で、そういうお墨付き、昔よく言った「文部省推薦」のもので面白いものってあったかね? いやまあ全部がつまらないとは言わないけれど、ガロ系、例えば根本さんとかマディ上原さんとかキクチヒロノリさんとか絶対未来永劫、お墨付きは得られないし、たぶん見つかったら抹殺しようと動かれるかも知れない。
 それは冗談としても、漫画っていうのは人を数百円で笑わせたり泣かせたり感動させたり怒らせたり欲情させたり、ともかく一番手軽な大衆の娯楽だったんすよね。そういうところにお上、官憲だとかが入ってくるとロクなことにならない。だから別にお墨付きもバックアップも本当は必要ないんすよ。必要だと叫んでる人もいるのかも知らんけど、俺は迷惑。ガロ者だからかねえ。

 お上になんか評価されんでも別にかまわない、むしろほっといて欲しい。褒めなくても、世間知らずのキャリアエリートや政治家、お利巧ちゃんの学者だのが無理に理解あるところを示そうとしてか、小理屈をこねまわして漫画を褒めるのを見聞きすると、何かムカムカするのよ俺。漫画も理屈こねなきゃ読めない、不幸な人間のような気がする。
 ともかく、別に日本では漫画やアニメはほっといて、業界に任せといてくれと思う。これから漫画やアニメが世界に誇る日本の文化・表現・コンテンツ・ビジネスになる、それを国が認めバックアップしようと思ってくれるなら、最高のバックアップは「口を出さず、規制をせず、ほっといてくれること」です。
 そうしておいてさえくれれば、諸外国でもちゃんと日本漫画のいいところを理解する人たちはどんどん現れるし、増えてくる。

 最近、やまだ紫「愛のかたち」がフランスの出版社Editions PHILIPPE PICQUIERより仏語訳の刊行が決定した。かの出版社では、この作家の過去の作品を非常に高く評価し、これ以外にも複数刊行したいと話しているそうだ。
 ところが、彼女の漫画作品で日本で読めるものは何点あるのか?
 連れ合いだから言うのではない、編集者になる以前から、連れ合いとなる以前から、「性悪猫」「しんきらり」を漫画史に残る名作だと思っている。当然フランスからも高い評価を受けた、当然だと思っている。なぜ、日本ではその正当な評価をしないのか?  と思うのだ。
 お上の評価など、どうでもいい。われわれ業界や、読者の目に任せておけ…と胸をはって言いたいのに、一般の漫画ファンでも知る人は少なく、著作も弱小版元から3点、それも2点は品切れという津野裕子作品を、アメリカ人が評価する。キャリア30年を越え、新作の評価も高いやまだ紫作品を日本の版元は見殺しにし、フランス人が評価し出版する。こんな情けない状態をいつまで続けてるのだろう、そう思うと胸を張ってお上に「いいから黙って見とけ」と言ってもいられないではないか。

 出版不況でいろいろ考えてきたが、「本当に良いものを長く売る」ということは全てではないが、選択肢の一つとして確かに、ある。
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コメント

日本の漫画

に規制や余計な口出しをして欲しくないと大見得を切るなら、業界側でも見る眼を確かにしとかないと笑われちゃいますね。それにしても日本は海外から評価されると初めて気付いたり慌てて褒めたりするって事態が多いよなあ。昔漫画家だったイワモトケンチさんが初映画監督作品「行楽猿」を撮ったときも、新人のしかも畑の違う監督作品なんか日本では評価してもらえないだろうから、外国で賞を狙う、とはっきり言ってたし。

おかえりなさい

というのも変ですが、あまり無理をされぬよう・・・とはいえ、今回のお話もおもしろかったです。

日本の誇る・・・

優れた漫画やアニメやゲームが何か犯罪があるたびに原因として挙げられて規制をされそうな動きがあることは、危険だと思います。
ここでも書かれておられたように犯罪は犯罪を犯した者が悪いのであって影響を与えたものと勝手に決められて糾弾される側に罪はないですよね。
政府や官公庁は規制緩和だ民間に活力を、などと美辞麗句を並べてますがいつもいらぬ規制をし民業を圧迫しているではありませんか。
公務員の数は多すぎます。そして、あまりにぬるま湯にひたり過ぎだし給与も高すぎます。そして官公庁や自治体にブラ下がり寄生虫のように税金を吸い取っている特殊法人も、公務員と合わせて半減させれば消費税なんて値上げせずに済むはずです。
そんな連中に、半世紀以上熟成されさまざまな才能あふれる漫画家さんたちや編集者、アニメーターなど業界のかたがたが築いてきたコンテンツに口を出してほしくはないものですね。
正しい評価も出来ない=見る眼もないくせに。
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シラトリチカオ

Author:シラトリチカオ
白取千夏雄/編集者。1965年函館市宝来町生まれ。元青林堂「ガロ」副編集長、97年よりフリー編集者・ライター・Web構築・管理他なんでも屋と、専門学校・大学講師など。
2005年夏、白血病告知・余命宣告を受けるが「慢性リンパ性白血病」に近いタイプと判明、無治療・対処療法、2014年より抗癌剤治療、巨脾へ放射線など治療開始。2015年夏左上眼瞼にメルケル細胞癌発症、眼瞼切除、再建手術、16年にかけて放射線も耳下腺に転移、郭清術、放射線治療中に再発、左眼球ごと摘出・皮膚移植。転移再発治療中ながらまだ生涯一編集者として生息中。
二十余年の東京在住ののち、07年から京都在住。09年5月、愛妻=漫画家・やまだ紫を脳出血で失った。
やまだ紫クロニクル

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