--------(--)

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
2009-08-20(Thu)

精華大やまだ研究室の片付け

8月20日(木)

朝目を醒ましてデジタル時計を見ると「4:44」。思わず苦笑して「三津子ぉ…」と声が出た。その後また少しうとうとした後、7時半頃に朦朧としたままトイレに立つ。このところ割合薬が良く効いて寝られていたのだが、どうにも眠い。
ソファでうとうとしていると9時前にドアフォン。いつもの宅急便のドライバさんで、思潮社さんに送った原稿の宛先が今「建て直し中」とかで、このままだとこちらに返送されてしまうと連絡が来たそうだ。なのでこちらへ一度確認するようにと言われたので、そのまま先方が言う転送先へ転送の指示を出しておいた、という報告。いったん戻されてまた新たな転送先へ…というのは時間の無駄という判断で、こちらも助かった。
結局そのまま起きて朝のことを済ませる。

今日は、先日メールで精華大の教務課に三津子の研究室の片付けへ行くと伝えてあったので、とりあえず朝は面倒だったのでカップ麺で済ませた。
一息つくと今度は郵便局が小包だというので受け取ると、旧知のBunさん(もちろんハンドルネーム)からだった。開けて見たらティファールの湯沸かしの箱で「?」と思ったら中に「また造ったからどうぞ」と、梅酒の入った瓶が入っていた。
昨日、Fさんと久しぶりに再会して、三津子とみんなで舟渡の浮間公園でやった「梅酒オフ」の話もしたのだが、Fさんから聞いて送ってくれたのだろうか、偶然ということはないだろう…。
ありがたく、冷蔵庫で冷やす。氷入れてチビチビやるとうまいんですな、これが。Bunさんありがとう。

それから11時過ぎに、支度をして、精華大の教務課へ「30分くらいで行きます」と伝えて家を出る。メールで伝えておいた学部担当のMさんは今日まで留守というので、直接研究室のある棟へ行くことにする。

外はやはり暑い。まずスーパーまで行き、ゴミ袋、梱包用のエアキャップ(プチプチ)、それから厚手の段ボール箱を3つ買う。ビニルテープやカッターは研究室にあるだろうと判断。宅急便の着払いの伝票は一枚しか家になかったので、それに俺宛の住所を書いた上で、タオルと一緒に持って行く。
スーパーを出てタクシーに乗り、精華大へと告げる。個人タクシーの運転手のおっちゃんは「どうやって行きます?」と言うので「深泥池ぐるっと廻って叡電超えてでいいですよ」と告げる。

大学へ行くのは久しぶりだ。自分の講座は今年2月に終了。それから三津子の講座に呼ばれて「ガロ」やメジャー・マイナー漫画についてなどを講義した。

三津子、いややまだ紫は、数年前に末期ガンのランディー・パウシュ教授の講義「心から伝えたいこと」の映像を俺と一緒に見た時から、
「あなたにも、学生たちに「命の講義」をして欲しい」
と言ってくれていた。

個性よりも流行の絵柄を描いたり、技法ばかりに拘泥したり、あるいは作家性などよりも単に売れれば勝ち…と考えがちな学生たちへ、「こういう漫画もあるのだ」「作家性とはこうあるべきだ」と伝えて欲しい。
白血病という癌に冒されている人間だからこそ、安直に人生を流さず、今という時間を、自分という個性を大事にして作品を創っるようにと、伝えて欲しい。
そのことは必ずしも、大学の方針とは合わないかも知れない。
それに、個性を尊重して貰える確証もなく、逆に、そういう創作を続けることは「荊の道」を歩むことになるかも知れない。
でも、あなたはそういうことをうまく伝えられる人だと思う。

そう言ってくれていた。
そう言いながら、涙ぐんでいた彼女の顔を、忘れない。

だから昨年度に俺が「作家研究」という座学の講座を持ったことを、一番喜んでくれたのは彼女だった。
そして、それがたった一年で無くなったことに、俺よりも一番落胆していたのも彼女だった。
「大学で漫画を教育するということ。」でも書いた通り、俺にはまだまだやるからにはたくさん、伝えたいことがあった。
しかしもうその場は失われた。
そして、やまだ紫という偉大な先達も、精華大学マンガ学部から失われた。
俺の熱意も、もう失せた。

精華大のマンガ学部の教室や研究室のある「自在館」へ着くと、3階はAO入試の最中だった。どうやら実技試験中らしく、受験生は皆黙々と漫画の原稿用紙に向かっている。
教室はオープン教室なので、その横の中廊下をそっと通り、研究室側の廊下へ抜けると、三津子の研究室の前に女性が一人立っていた。
その人が教務課の人で、今日までいつも担当だったMさんが留守なので対応すると行っていたKさんかOさんらしい。らしい、というのは名乗られなかったからで、不明だったからだ。
こちらが「やまだの夫の白取です」と言うとすぐ了解してくれ、鍵を出すともう開けてくれてあった。もう鍵は返却済みだと思っていたらしく、俺が鍵を持って来たと知るとちょっとびっくりしていたので、俺が「…ということは今日、入試で開いてたから勝手に入れば良かったんでしょうか」と言うと「あ、ええ、いや、そうですね」と困った様子だった。そうか、入試中だから開いてるわけだった。
やまだ研究室の入口

研究室に着いたのは12時ちょっと過ぎだったか。
教務課の女性が去ったので、まず暖簾のかかっている入口をデジカメで撮影した。俺がパソコンで打ち出した「やまだ紫」という名前と彼女のキャラクタ「やま猫」のイラストの紙をはがし、ドアの前に置かれた「やまだボックス」と彼女が書いた箱の中から、返却するよう言っておいた本を数冊取り出して、中に入る。
ドアを開けると、彼女が椅子に座って机に向かっているような気がした。
カレンダー

それから中もデジカメで撮影した。彼女が勤務していた時、そのままの状態。テーブル、本棚、ソファ、事務机…。
机の上は彼女が出勤していた時そのままで、壁際に立ててあった本や資料、書類は斜めに崩れている。その手前にノートPCがあって、窓際には彼女が使っていたカレンダーが4月のまま、倒れていた。

机の手前の椅子に彼女が「学校に忘れてきた」と言っていた黒のカーディガンがかかっていた。そのカーディガンを拾って抱きしめると、気のせいか彼女の匂いがするようで、少し涙が出た。
「頑張ってくれて、ありがとうね…。」と声に出した。
小さい体で、病気で、組織に属したこともなかったのに、にこにこと学生たちに接し、病気の俺を心配し、終わったらすぐに俺の元にすっとんで帰ってきた。
ご苦労様でした。ほんとうに、本当にお疲れ様でした…。
研究室の机

泣いてばかりいられないので、気を取り直し、まずは水まわりから片付ける。クーラーのスイッチを入れるが、効きが弱いのか、全く涼しくならない。ドアを閉めて19℃設定にするがぬるい感じ。それでもタオルを出して首からかけ、汗を拭きながら作業開始。
研究室には小さな流しがついていて、そこにはペットボトルが数本置いてあり、一本は中が入っていたので捨てる。意外と片付いていたので、後任の人でも使えるような紙コップや割り箸、プラスチックのスプーン類はそのまま棚に整頓しておき、その他のものは思い切って捨てることにする。
冷蔵庫の中には毎食前と就寝前に打っていたインスリン注射針の他は、「ウコンの力」に麦茶の瓶が一本。それらはよく冷えており、汗だくなので賞味期限を確認してから、二本立て続けに飲み干す。それだけで冷蔵庫はもう空になった。
入口手前のテーブルの上には学生たちの出席票や資料のコピー、書類が雑然と置いてあり、脇にはコーヒー類、緑茶や紅茶のティーバッグ類もあったが、それらも残されても困るだろうと思い、思い切って全部捨てる。
困るのは書類なのだが、もう何年も経過して不要と思われるものは捨てて、成績表や三津子の字が書かれてあるもの、学生のプライバシーに関わりそうなものは何かあると困るので、一応取っておく方向で進める。
ソファの上にも本や書類が積み上げてあるので、それらも整理していく。

本棚も、基本的に上半分には青林堂や「ガロ」系のA5判の漫画や三津子の著作、それから彼女が資料として買ったり持ち込んだ画集などもあるので、それらをキチンと並べ替えて整理する。
上半分のものはこれで、もう大学へ寄贈というかたちを取らせて貰うので、後進に活用して貰えればいいだろう。
帰って来ない貴重な本もたくさんあるが、本と人というのは「出会い」だ。これもまた出会いなのだから、もう仕方が無い。その子が「いい本に出会えた、このまま持っていたい」と思ったのなら、それもいいだろう。
研究室の本棚

下半分は学生の提出した課題の原稿や講義の資料などがあるので、軽く整えるだけで、基本的に手をつけずにおく。
そして、彼女がいつも帰りに学校の野良猫にあげていた、乾燥エサの袋もあった。「本当はいけないんだけど、あの子たちのせいじゃないんだから可哀想」と言って、猫たちの鳴き真似をして呼び寄せ、笑顔でエサをあげていた。学校で履いていたスニーカーもあった。一つ一つが短い間だったとはいえ、濃密な思い出につながっていて、切ない。

事務机の整理は大変だった。机の上は書類や学生の提出物、コピーなどの整理用に買った大きな20個くらい引き出しのついた書類整理棚があるが、その中にももちろん書類やら資料が詰まっている。
それらも、基本的に本と書類と資料を分けていき、本は本棚へ、書類は明らかに不要なものは捨て、保存しておくものは積んでいく。
資料は彼女がコピーしたものは本棚にオリジナルがあるので捨てる。彼女が自ら作成したものはそのオリジナルを保存。成績類、学生の態度へのメモ類はプライバシーに関わることなので安易に捨てられず、いったん保管の方へまわし、大学側で不要と言うならシュレッダーにかけるなりするか、いずれにしても教務に聞くことにする。

とにかくぶっ続けで作業のし通しで、汗を拭き拭き休み無く働くこと約3時間半、部屋は何とか片付いた。
家に着払いで送る遺品や書類などが段ボールに3箱満タン。スーパーで買ってきた箱がちょうど3箱で、いい読みだった。
それと燃えるゴミがずっしり45リットル袋に2つ、燃えないゴミが1つ。ソファや衝立、プリンタ、足元ヒーター、電子レンジなどは不要なのでそのまま置いておき、後任の人が使うか捨てるか判断してもらう。電子レンジなんか一度も使ってないんじゃなかろうか、と思うくらい新品に近い。

研究室片付け後

最後に片付いた室内をもう一度一通り見回して、最後に合掌した。改めて、本当にご苦労様でした、と祈った。

クーラーと電気を消して施錠して出る。入試会場の教室を見ると暗くなっていて、何かのビデオを見せられている風情だったので、中廊下を通るのはやめて、階段で外へ出る。
蒸し蒸しとしていて、暑い。しかも作業をブッ通しでやった後なので、ダラダラと汗が出る。それをタオルで拭きながら本館へ戻り、教務課のマンガ学部担当に行くと、最初の女性はおらず、別の若い女性にいったん片付けは終わった旨、伝えた。
それから学バスで帰ろうと思ったが、全く来る気配すらない。しかも陽があたってじりじりと暑い。仕方がないのでエッチラ坂を登ってまた降りて、叡電の駅まで歩いた。
駅のホームにはどこかの運動部らしい女子高生がギャーギャー騒いでいて、その他にもけっこうな人が待っている。しかし電車の来る気配がまったく無い。かなり待っている風情の人もいる。
いったん座って待つが、とにかく疲れたし暑いので、心が折れる。
もう一度階段を登って本館へ戻り、アオイタクシーの配車を頼んだ。タクシーは数分で来てくれて、ホッと一安心。国際会館手前から上高野、旧大原街道をまっすぐ下がっていつものスーパーの真ん前へ抜けた。たった1290円。これが最短だったのか? …もう、どうでもいいが。

スーパーで野菜類と夕飯に巻き寿司を買って、コンビニで文春を買おうと思ったら売り切れ、帰宅すると4時半。
もうくったくたに疲れているのが解る。
でも、懸案がまた一つ片付いた。いや、片付いたわけじゃないが、一段落はした。今日まで留守という教務課のMさんに今日の報告をし、あとの手配のお願いのメールと、学生だったG君に三津子が預かっているパネルをどうするか聞くメールを出し、この記録をつけている。
G君からはすぐ返信が来た。「今度こそ、飲みましょう」と言ってくれた。そう、俺たち夫婦二人が偶然ばったりバス停でG君と会った時、「今後うちに飲みにおいでよ」と約束したっきりになっていた。
もう5時半だ、お疲れ様…。
スポンサーサイト

コメントの投稿

管理者にだけ表示を許可する

コメント

ハム、ね。

以心伝心、時間差攻撃(笑)
でしたね!

届きましたか~

梅酒、無事届いたようで安心しました。
(変な梱包ですんません(笑))
送ったその日の午後に、ジョンさんから「白取さんに会ったよ」って話を
聞いたんで、こりゃまた奇遇だなぁと思ってたんですよ。
これも何かの引き合わせかしらん。
ちょっとしかお分け出来なくてすんませんが、また来年送りますんで
ご勘弁下さい!

そのうち時間作って上洛しますんで、その時にはよろしくです。
噂の蕎麦屋、教えて下さいね(笑)。
カレンダー
10 | 2017/11 | 12
- - - 1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 - -
最新記事
カテゴリ
最新コメント
最新トラックバック
メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

広告
アフィリエイト・SEO対策
検索フォーム
プロフィール

シラトリチカオ

Author:シラトリチカオ
白取千夏雄/編集者。1965年函館市宝来町生まれ。元青林堂「ガロ」副編集長、97年よりフリー編集者・ライター・Web構築・管理他なんでも屋と、専門学校・大学講師など。
2005年夏、白血病告知・余命宣告を受けるが「慢性リンパ性白血病」に近いタイプと判明、無治療・対処療法、2014年より抗癌剤治療、巨脾へ放射線など治療開始。2015年夏左上眼瞼にメルケル細胞癌発症、眼瞼切除、再建手術、16年にかけて放射線も耳下腺に転移、郭清術、放射線治療中に再発、左眼球ごと摘出・皮膚移植。転移再発治療中ながらまだ生涯一編集者として生息中。
二十余年の東京在住ののち、07年から京都在住。09年5月、愛妻=漫画家・やまだ紫を脳出血で失った。
やまだ紫クロニクル

シンプルアーカイブ
リンク
RSSリンクの表示
QRコード
QR
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。