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2010-11-21(Sun)

イチローメジャー2244本・全安打

11月21日(日)

仕事をしつつ、午後からNHK-BS1で放送しているイチローのメジャー2244本・全安打放送というのを見る。何と終了まで7時間! 途中途中ニュースやスタジオでのその年の短いまとめを挟んだりするが、基本的にイチローの全ヒットのみに、守備位置ライトでのスーパープレイ、盗塁、節目節目の記録更新イベントなどの印象的映像を挟むというもの。
仕事をしながらも、どうしても野球好きとしてはテレビに目が行ってしまう。

最近の彼のヒットで一番印象に残っているのは今年9月、LAA(ロスアンジェルス・エンゼルス)を迎えての一戦の内野安打だ。(イチローがメジャーに行く前からMLBの中継はよく見ていたし、当然2001年にイチローが渡米してからも中継があると見てはいたのでたくさんあるわけだが、トシのせいで記憶力が落ちているのだと言われれば否定は出来ない)

さてそのヒットの前、実はヤンキースからエンゼルスに移籍していた松井秀喜の打席。松井は鋭いスイング、打球はライトへのホームラン性の大飛球。ライトを守るイチローは打球に向かって全力疾走し、思い切り飛びつき、掴み取ろうとグラブを伸ばしてジャンプ……。が僅かに届かず、松井の打球はホームランとなった。

投手が力一杯投げ、打者はそれを力一杯打ち返す。守備はそれを力一杯追いかけて掴み、投げる。そういう野球のプレイの中でも、最もダイナミックな現象がホームランだ。よく花火にもたとえられるが、たった一振り・一発で「4塁打」つまり1点を奪ってしまう、何というか、野球の上で最強のプレイ・結果であり表現でもある。どんなに投手が頑張って完全試合をしても、味方が1点も取ってくれなければ試合は引き分けであり、つまり勝てないわけだ。
イチローは当然そのホームランを「殺し」にかかったが、敵わなかった。イチローは松井より一歳年長で、いわゆる「体育会系」の世界では一年違いはきっちり先輩・後輩である。さらにイチローにしてみれば、先にメジャーに来て実績を残しているという自負もある。さらにその上、ホームランだけが野球じゃねえ、という思いもあるだろう。この二人の関係は熱いイチローとちょい引き気味の松井、ずっとそういう感じで続いている。(対談の映像・二人の態度は実に興味深い)

さて、目の前でデカい花火を後輩に、それも自分の手の届かぬところへ打ち上げられたイチローが悔しくないわけはない。そのあと、同じ試合での自分の打席で、イチローは何をしたか、それが「今年一番印象に残ったヒット」である。

イチローは「コツン」といとも簡単にバットにボールをあてて転がすと、全力で一塁へ走り抜けた。内野安打。イチローは「これも野球」ということをプレイで見せたのだろう。
ジャストミートされた打球が外野の前に落ち、野手が「はいはいヒットヒット」と緩慢に内野へボールを戻す…というのも同じ「ヒット」。キャッチャー前にポテンと転がった打球を捕手が必死で拾い、体勢を崩しながらも全力で一塁へ投げる…がイチローは間一髪、一塁を駆け抜けている、それも「ヒット」。
改めてイチローの全ヒットを見ていると、こうした何でもない選手にとっては何でもない内野ゴロが、イチローが打てばたちまちエキサイティングでスリリングな一瞬に変わるということを、まざまざと知らしめられた。アメリカでも同じように思ったファンが少なくないというレポートをよく目にする。

アメリカ人は大雑把、派手好き。ゆえに野球…本当はすさまじく細かいルールと、繊細で絶妙なフィールドという舞台(例えば塁間、投手・打者間などがほんの少し長かったり短かったりしただけで、全く違うものになっていただろうと言われている)で行われるこのスポーツにも、剛速球を思い切り打ち返し、スタンドに叩き込むことこそ至高という価値観があったと思っていた。いや実際どうなのか知らんし、そういうファンの方が多いだろうが。
しかし、これまで「コツン」とバットに当たり損ないのような打球がコロコロと内野に転がる、「ああ、アウトね」というプレイがイチローの脅威の走力によって「ヒット」になる。

ベースボールはアメリカ発祥のスポーツであることは言うまでもないが、日本に入ってきてもう長い。野球がアメリカ人の心のスポーツであると同様に、ある一定年代より上の世代にとっては、やはり野球は物心ついた時から「国技」であり、身近でもあり憧れのスポーツだった。
思い切り投げ、それを打ち返し、思い切り走る。常に「思い切り」「全力」があったはずだけど、高校〜プロと高度な次元になるにつれ、そこはやはり色々な技巧・テクニックも入る。常に全力では体が持たないので緩急の間、というものも必要になる。試合全体もそうだけど、一つのプレイ、一つの投手対打者の対戦中にもそれがある。駆け引きだったり、計算だったり。
ポテポテと内野にゴロが転がる、「ああ、しまった打ち損じた」で緩慢な走塁をするか、左打席から猛然と一塁へ驚異的な走力で走り出すかで、全く質が変わる、そのことに改めて・今さらながら感心する。
「長い」と昨今言われる2時間前後の野球の試合の間には、そういった一つ一つのプレイの細かい波と、試合を決めるような大きなうねりがたくさんある。その「波」は野球に精通すればするほど微細なものを感知できるもので、逆に、野球に親しんで来なかった人間にとっては単なる冗長なものともなり得るのだろう。

それにしても、他のスポーツでも同様だろうが、その競技が生まれた国へ、人種や言語風俗文化何もかもが違う地へと赴き、そこでトップの地位に立つということは並大抵のことではない。しかも、それを10年維持するということがどれほどすさまじい所業であるか。

イチローは野球選手としてプレイすることに加えて、そのマスコミへの対応が独特の言い回し・態度とも相まって、というよりスターとしての宿命もあり、毀誉褒貶にさらされてきている。かく言う自分も「生意気な物言いだな、もっと素直になればいいのに」と思って来た。
しかしこうして異国の地で思い切りバットを振り、走り、跳び、投げ、駆け抜けるイチローを見ると、やはり選手というより一人のひたむきな「生き様」を見せられる思いがする。インタビューや取材ではクールに装う彼も、チームメイトと冗談で破顔一笑し、ケン・グリフィーJrにくすぐられて身もだえ、不仲と言われた内野手のフィギンズとはベンチで打撃論を真剣に交わしていた。
記録すなわち自分のことしか考えていないという批判もあるが、「報道」や「ゴシップ」ではなく、ずっと試合を見てきている限り、チームメイトからはきっちりリスペクトされているし、シアトルのファンからも愛されているのが、この十年の映像を追っていくとよく見えてくる。
今年だったか、イチローがライトへのファールフライを捕りにスタンドまで体を差し入れ、グラブが顔にあたってしまった女子高生は、それこそ「今、あたしの目の前にイチローが!」と狂喜乱舞した映像は有名だ。しかし、実はそれはほんの一例で、別な日に同じような状況で、中高生くらいの男の子がやはりイチローがすぐそばまでボールを追ってきた時に、全く同じリアクションをしている。「見た? あのイチローが今俺の、すぐここまで来たんだぜ?」的にハイになっていた。

イチローの全ヒットの「背後」に映る、そういうフィールドの他の選手や観客たちの表情もまた、面白かった。
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シラトリチカオ

Author:シラトリチカオ
白取千夏雄/編集者。1965年函館市宝来町生まれ。元青林堂「ガロ」副編集長、97年よりフリー編集者・ライター・Web構築・管理他なんでも屋と、専門学校・大学講師など。
2005年夏、白血病告知・余命宣告を受けるが「慢性リンパ性白血病」に近いタイプと判明、無治療・対処療法、2014年より抗癌剤治療、巨脾へ放射線など治療開始。2015年夏左上眼瞼にメルケル細胞癌発症、眼瞼切除、再建手術、16年にかけて放射線も耳下腺に転移、郭清術、放射線治療中に再発、左眼球ごと摘出・皮膚移植。転移再発治療中ながらまだ生涯一編集者として生息中。
二十余年の東京在住ののち、07年から京都在住。09年5月、愛妻=漫画家・やまだ紫を脳出血で失った。
やまだ紫クロニクル

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