--------(--)

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
2005-08-22(Mon)

「自覚症状、なし」

昨晩7時半ころ、することもないのでナイターを見ていると、主治医のU先生が様子を見に来た。明日歯医者で抜歯などあるけれども、治療に入る前にきっちりやってもらいましょう、ということ。この病気というのは病気が直接の原因というよりも、やはり感染症との闘いである側面が非常に大きい、肺炎だとか虫歯菌もその他の雑菌も含めて、内臓出血や敗血症で亡くなる人も多いという。そういえば女優の夏目雅子の直接の死因は肺炎だったと記憶している、白血病治療中の免疫低下の際にかかったのだろう。
U先生は「とにかく治療前に見つかって良かったですよ、外来だとなかなかそこまでね、今痛いっていうんならお互い気づくかも知れませんけど、そうじゃないと歯のことまでなかなか気がつきませんから。気づかないまま治療入ってたら大変でしたからね」と言う、俺もそう言われればゾッとする。

今はWEBでひととおり以上の知識と情報はその気になれば、得られる。なので国立がんセンターのページから学術論文風のもの、さまざまな人たちの闘病記や看病記などを読みまくった。一応いっぱしのことは専門家でもないくせに、頭に叩き込んではいる、けれども肝心なのは自分が医師でもなく医学の専門家でもないということ。情報はあくまで情報なので、じゃあ自分の場合はどうなんだ、という診断や予測が出来ないことに変わりはない。そう気がついてから、ノートPCのデスクトップに散らばっていた病気関連のブックマークを全てゴミ箱に放り込んだ。

U先生に「この病気は急性か慢性か、っていうと慢性だと聞いたんですが」と聞くと「うーん、そういう分類ってこの病気に当てはまるか、というと実は疑問を持ってるんですよ」とのこと。俺が「これは慢性リンパ性白血病が予後に悪い方へ転化したのが、今の自分のT-PLLだといいますよね」と言うと、「確かにWHOの分類だとそうなってますけど、そういう分類自体もね、症例が少ないからはっきりしないと思うんですね。白取さんの場合、じゃあもし最初に外来に来られたのが3週間前じゃないですか、もしそんなに悪くなったものなら、変な話ですけど当然それなりに悪くなっているはずなんですよ。でもその時(3週間前)の採血の数値と、今回の数値と、実はあまり変化が見られないんですよね。だとすると、極端な話、自覚症状がなかっただけで、実はもっと前からこのような状態が続いていたんじゃないかということも考えられるんですよね」
なるほど、そういえば<リンパの腫れ>などはさすがに普段気にもしなかったので気づかなかったが、その他の典型的な症状である寝汗とか、脾臓の腫れ、倦怠感、貧血からくるめまいや動悸というものはここ数年感じてはいた。もちろん寝汗=もともと汗かきだし、脾臓の腫れ=食後の腹部の膨満感としか思わなかったし、倦怠感や動悸などは「疲れてるんだろう」で済んでしまう。
この病気はあとで「言われてみれば」ということが多く、自覚症状はほとんどないに等しい。まだ骨髄の中で癌細胞が増殖を始めている段階から「俺どうも白血病じゃないですか、調べてください!」なんて患者は超能力者でもないといないだろう。
なので先生に「そういえば一年…あるいはもっと前からあったように思います」と言うと「そうでしょう、それがたまたま健康診断でひっかかったことによって…ということで発見されたと。そういう例は多いんです」とのこと。
俺は白血病に犯されたまま、学校の教壇に立ち、90分間汗だくで講義をしていたのか(笑)! 道理で一日学校へ行き2コマも続けて講義をすりゃあ2kgくらい痩せたわけだ。生徒に「汗だくで頑張ってるんだから眠いとかだるいとか言うな」とよく言ったけど、そりゃ病気だ、つうの。
…しかしだとすれば、俺の病気はそれほど急激に悪化するような、つまり慢性が悪く転化して急性になり、さらに悪化したというような性質ではないのではないか、ということなのだが…。
「とにかく他のタイプと違って、こういう治療をすれば数週間後にはこうなって…という予測がつかないので、治療方法も確立されていないから、その部分だけが申し訳ないんですが」と言われる。俳優の渡辺謙が復帰して知られている「骨髄性白血病」は、もはや適切な治療をきちんと段階を踏んでいけば、決して治らない病気ではなくなっている。急性でも慢性でも、ステージがよほど悪くなっていない限りは、どれとどれの抗癌剤を組み合わせ、何クール投与し、寛解させ地固めし、維持させ、その間に何とか骨髄移植をすればほぼ治癒するということがわかっている。再発してからも同じコースを辿って、移植をすれば、第一寛解期の移植よりは生存率が低くなるとはいえ、それでも可能性はある。再再発した後も薬の種類や強さが変わるが、やはり寛解〜移植を目指す…。

だが俺の場合は、この病気自体が珍しく、治す方法がこれと決まってはいないこと、はもうじゅうぶん理解している。その上で、急激に悪化するものではないようだということが解って、実際大きな安堵感を得た。さらに、抗癌剤治療をすれば、骨髄抑制は必ず起こる。そしてその時の感染症との闘いは、絶対に避けられないということももう理解している。だとすれば、今一番大きな問題は、虫歯ということになるのだ。ならば、痛かろうがなんだろうが、明日からちゃんと治してもらおう、そう強く思った。やはり医師の患者への丁寧な説明、納得のいく応答というものがいかに重要か、自分が身をもって体験した。

わけのわからぬ病気にかかり、わけの解らぬまま意味不明の治療をされる、それで治ればいいが、手遅れでした、さようなら…なんて言われたら、そりゃあ死んだら地縛霊にもなるってものだろう。インフォームド・コンセントというが、そのほとんどは医師側からの一方的な「説明」に過ぎないことが多い。こちらの質問に納得行くまで応えてくれることは少ない。さらにもっと進んで、患者が「こんな可能性はないか」「こういう治療は考えられないか」と踏み込めることは、ほとんどないと言っていいだろう。「素人が余計なことを言うな」で終わりだ。
自分の場合、連れ合いが闘病でここ十年ばかり入退院をずっと繰り返してきた。しかも同じ病気ばかりではなく、病院もいくつも見たし、たくさんの医師にも会った。その中でよく連れ合いと話していたことは、「自分の体のことは自分が一番良く知っている」ということだった。もちろん医学的なことではない、自覚症状のない病気だって多い、だが病気になって医師にかかっている場合は、「もっとも大きな情報源は患者自身である」ということを忘れずに、医師の側も「患者と一緒に治す」気持ちで接してもらいたいと思う。
先日は医師団の中の別の医師に「癌治療は大変です、私たちも頑張りますけど、一緒に頑張ってくださいね」と言われた。そういう言葉で患者は「頑張ろう」という気持ちになる。
スポンサーサイト

コメントの投稿

管理者にだけ表示を許可する

コメント

どうもです

皆さんの励ましには本当に感謝しています。
できればゆっくり個別にレスを書いていきたいんですが、申し訳ないです。
今日は久々に何の検査も外来治療もないそうで、ちょっと平穏な日です。嵐の前の…ですか。
頑張ろう。

Unknown

お久しぶりです、白取さん。

4コマガロでお世話になった「ぼくは16角形」こと田中と申すものです。
いつかお礼を言いたい…と思いながらずいぶん長い時間がたってしまいました。
あのときは本当にありがとうございました。

4コマガロに投稿していたあのころ、ぼくは精神的に結構すさんでいたのですが、4コマガロでの白取さんのコメントが毎月すごく励みになったのを覚えています。それがどれだけうれしかったかはもう表現できないくらいでした。

この時期に僕ごときがここに書き込んでいいものか悩んだのですが、あのときの恩返しとして少しでも白取さんを励ますことができればと思って、迷ったあげくにコメントを書かせていただきました。すいません。

がんばってください・・・

先日、青山のカフェで、十年くらい前、SPAに
闘病について連載していたHIVポジティブの
パトリックさんを見かけました
元気そうで、英字新聞を読んでくつろいでいました
感染症になったら命取りの難病でも、気の持ちようで
普通に生活できるんだと思いました
白取さんも、その冷静な判断力と平常心があれば大丈夫だと
思います!
カレンダー
09 | 2017/10 | 11
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31 - - - -
最新記事
カテゴリ
最新コメント
最新トラックバック
メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

広告
アフィリエイト・SEO対策
検索フォーム
プロフィール

シラトリチカオ

Author:シラトリチカオ
白取千夏雄/編集者。1965年函館市宝来町生まれ。元青林堂「ガロ」副編集長、97年よりフリー編集者・ライター・Web構築・管理他なんでも屋と、専門学校・大学講師など。
2005年夏、白血病告知・余命宣告を受けるが「慢性リンパ性白血病」に近いタイプと判明、無治療・対処療法、2014年より抗癌剤治療、巨脾へ放射線など治療開始。2015年夏左上眼瞼にメルケル細胞癌発症、眼瞼切除、再建手術、16年にかけて放射線も耳下腺に転移、郭清術、放射線治療中に再発、左眼球ごと摘出・皮膚移植。転移再発治療中ながらまだ生涯一編集者として生息中。
二十余年の東京在住ののち、07年から京都在住。09年5月、愛妻=漫画家・やまだ紫を脳出血で失った。
やまだ紫クロニクル

シンプルアーカイブ
リンク
RSSリンクの表示
QRコード
QR
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。