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2011-04-02(Sat)

散歩

4月2日(土)

早朝、階下でどんがらがっしゃん! という音がしたので、フッ飛んで降りた。いつの間にか人の布団の上で重しのように寝ていたユキがいない。降りてってみると、案の定ユキが階段を上がってくる途中で固まっていた。
耳が聞こえない猫だが、そのぶん人やものの動き、目からの映像や衝撃には逆に敏感だ。
さて、何をやらかしたか…。
そう思って電気をつけると、「カリカリ」(猫用の乾燥エサのこと。非猫飼いには通用しないことを数年前に気付いた)と水のトレイ脇に立ててあった、プラ製の密封容器が倒れて転がっている。どうやらカリカリの新しいのが欲しいらしく、隣の台の上にある大袋を覗こうとして(といってもちゃんと口は閉まっている)、空のプラ容器に手をかけて転がしたらしい。すごい音はプラ容器が床ではねて食器と当たった時のもので、何かが割れたり飛び散っていることはなかった。

やれやれ脅かすなよ…とちょっと安心し、ごはん皿に残っていたカリカリを捨てる。要するに湿気てる、まずい、新しいのよこせ、くれないなら袋覗き込んで勝手にひっぱり出すぞ…という行動だったようだ。
皿を一回洗ってからよく拭いて、新しいカリカリを入れてやると、それらをじっと見ていたユキは「よし!」と言う風情で食べ始めた。この野郎。いやこの女、か…。

時計を見るとまだ6時前、トイレへ行ってふらふらとまた二度寝に戻る。しばらくするとユキが上がってきて、布団に入れろという。もう勝手にしろ…。

その後9時過ぎに起きてトーストと紅茶を食べ、ベランダへ出ると、かなり暖かい。そよそよと風が通り、うす曇りからの陽射しも柔らかくて気持ちが良い。散歩でも行くか、冬の間に萎えた足腰をちょっとでも戻そう。
そう思い、段ボール類を畳んだりゴミをまとめたりした後、昼ころに着替えて外へ出た。

頭が今海兵隊状態(超短髪)なので、一応ニットの深い帽子と、感染予防のマスクはいつもの通り。近所のT交差点方面へ歩き、川端に出て?野川を南に下る。本当に気持ちがいい。昼過ぎになって何か食べたくなってきたが、外でうかつに何かを食べるとたちまち「下る」ことが多いので、外で食べる時はあらかじめ覚悟をして来ないといけない。今日は覚悟をしていない。
しばらくゆっくり歩いたり立ち止まったりしつつ、ベンチで一休み。ああ、カメラを持って来れば良かった、また忘れたな…とぼんやり考えながら、ただじっとしていた。年寄りか。
休日で暖かいせいか、歩いている人も多い。犬連れの散歩、子供連れの家族、若いカップル、老夫婦。御蔭橋まで出て、それから東大路へ出る。つらつら歩いているうち、本格的に腹が減ったので、スーパーへ寄った。

先日、気に入っていた大振りのマグカップを洗っていたら、ボキッと取っ手が取れてお払い箱になった。新しいのを買おうと上階へ行くが、どうも中途半端な大きさしかない。ガブガブと飲みたいんだよ、チマチマ入れ換えたりするの面倒じゃん! という人用のどでかいカップは見あたらないので、しょうがなく一番大きいのを買った。それでも前に使っていたのの3/5くらいで、不満。きっと別なのを買ってしまいそうな確信に近い予感がある。
同じフロアで日用品などもゆっくり見て、それから食品売り場で、まずは目的の菜の花と鯛の切り身を買った。
こないだテレビを見ていたら上沼恵美子のおしゃべりクッキング(笑)で「菜の花と鯛の中華風卵スープ」(だっけ?)というのをやっていたので、作る気満々。
その他適当に細かい買い物をしていると、精肉コーナーで「はい、ただいま牛肉全品4割引ですよ!」と呼び込みの声。4割だと!?とピキーンと反応して、くるりと売り場へ引き返す。
反射的に戻ったとはいえ、1600円のサーロインステーキや3800円の焼き肉セットとか、4割引になってもとても割高なので、結局チラッと見ただけ。
そしてなぜかポークソテー用の豚肉を一枚購入。これは負け惜しみ。

買い物袋を下げて戻ってくる頃には、軽く汗ばんでいた。家の近くのバス停には、くたびれた表情で観光客らしいオッサンが、半袖Tシャツ一枚で腰を下ろしていた。さすがにそれはどうか、と思ったが、マスクをしているのはかなりうざいほど、暖かい。
帰宅2時過ぎ、心地良い疲労感。京都は19℃越えだそう。
買ってきたものを片付けてから、昼飯を買い忘れたことに気付いた。

花菜なので早速、「鯛と菜の花の中華風スープ」を作ることにした。
京都産の菜の花というか「花菜」が1パック、けっこうな量でたったの210円。スープには半分でも多いくらい、残りはおひたしか冷凍か、と思いつつ洗ってから塩で下ゆで。スープ用は後で煮るから早めに水にあげて色止めしておき、中華スープを別に沸かす。
味付けは塩・胡椒のみ。味を調えたら火を消して片栗粉でとろみを先につけておく。

鯛の方は一口大の切り身にして、塩・胡椒・酒・片栗粉を混ぜたものをボールで全体にまぶしておく。
スープに先にとろみをつけるのは、鯛を入れた後だと混ぜる時に鯛の身がほぐれてしまうからだそうだ、なるほど。
とろみのついたスープに鯛を一つ一つ間を置いて落としておき、その上に菜の花を並べて、再び火を弱くつける。鯛に火が通ったらもう完成なので、その間に卵を一個、強く攪拌しておく。
最後に卵をけっこう高い位置から泡立てるように廻し入れて、仕上げにごま油をたらせばもう完成。


…なのだが、溶き卵の混ぜが甘かった。本当は泡のようになるまでかき混ぜて、ふわふわで黄色い彩りになるはずが、ただのかき玉になってしまった。
しかし見栄えは悪いが味は実にいい。鯛のうま味と中華スープ、あとは塩胡椒のみなのに、春の味を堪能。
完成
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記録すること

日本でも、当初は一日じゅう中継されてくる激甚な災害の様子、悲惨な光景が延々と放送され、それが数日続いたことでかなりの数の人が程度の差はあれ、心的に傷ついたと思います。
特にこの度の震災は「映像」が現地の人のものを含め、かなりの数がありました。地震の最中はともかく、それから間を置いて襲ってきた津波を撮影したものは多く、堤防を越えてきた津波が家々を押し流し、田畑を飲み込み、さらには何もかもぶち壊して去っていった後のまさに「地獄」のような光景。
生まれ育ち、ほんのちょっと前まで生活をしていた場所が瓦礫の山と化し、笑い合っていた家族を失う光景。泣くことも出来ず呆然とそれを眺める人…、映像は本当に「真実」「今起きている現実」のむごさをそのままこちらに突きつけて来るものも多く、自分も気持ちが落ち込みました。

ネット上でも普段は冷静な人が取り乱していたり、発言の頻度が激増したり、あるいはデマを無差別に流してしまったり、躁・鬱の振幅が大きく振れ出す状態が続きました。
逆に、自分はそれらを被災地から離れたところから見ていたために、落ち着こう、冷静にならなければいけないと思うことが出来ました。
被災地に近い東京の友人知人に、錯綜するデマや未確定な情報の確認を求める手助けをしたり、自分に出来ることは落ち着いて状況を見誤らないことだと言い聞かせました。

直接に震災の被害がほぼ無かったこちら(西日本)では、連日報道される恐ろしい映像とは対照的な、淡々とした日常を過ごす部分も当然あります。その落ち着いた部分を敢えて記述することで、自分にも落ち着こうと言い聞かせることが出来た側面もあります。日常を普通に過ごすことは無関心ということにはならないし、無関心でいられるはずもありませんよね。

連れ合い・やまだ紫を失ったあとで、狂ったように日々を記録し続けたのも、自分が乗り越えるために敢えて辛さを俯瞰して記述したと理解しています。誰へ、ではなく自分が崩壊しないために書いたものなんですね。
今回も、きっとそういう側面があったと思っています。

そうですね…。

 実は私は、今回の災害をこちらで3日間、中国国営TV(英語放送なので多分外国向け)とインターネットに釘付けで情報を得ようとしているうちに、所謂PTSDになってしまいました。何でも無い場面でも泣けて泣けて…。
東日本はもとより、日本から遠く離れたところで一体何やってんだ~!状態で、我ながら情けなかったです…。
その状態を何とか乗り越えられたのは、白取さんの日々の淡々としたブログ文のお陰です。読んでいると不安な気持ちが、少しずつ落ち着いてきました。更新されていない日には、前の文を繰り返し読みました。ここで改めてお礼を言わせて下さい。ありがとうございます。
ワーワー大騒ぎせず、毎日をいつものトーンで過ごすことも、非常にエネルギー要りますよね。それに第一、ワーワー騒いでも、周りにとってはうるさいだけ、自分でも疲れるだけで良いことなんか一つもないです。何かできる時もそのうち来るかも知れないので、今はひたすら平常心を保ち、日々普通にして元気さを保つことが大切だと思います。

ところで、
ずいぶん以前の文も毎日少しずつ読ませていただいております。山田むらさきさんとの日々、そしてその後。毎日毎日の文が、全部むらさきさんへのラブレターですね。
こんなありがたい文を読ませていただいていることも感謝いたします。









春の味

スープですが、日本だと簡単に顆粒状態の「中華スープの元」がどこでも買えますから、あとは味を調えるだけで料理と呼べるほどのものじゃないです…。
旬の菜の花の緑と卵の黄色に、鯛は皮の薄いピンクと身の白さは桜の色合いですね。

今、日本では東北~関東の甚大な震災被害のあと、今も継続中の原発事故の危機にあり、何か言えば不謹慎、何かすれば感情的な反発を食らうような、白か黒か、1か0かみたいな対立構造になりがちで、殺伐とした雰囲気も一部にあります。
それでも、震災の被害や原発危機、今後の問題も含めて色々考えたり思いつつも、それでも毎日暮らしていかねばなりません。
毎日平常に暮らせることは有り難いんですが、平常でいることをして、震災被害や事故に無関心だというわけではないことも、言うまでもありません。
旬のものを美味しくいただく、桜の季節に花を愛でる、そのことを当然と思うのではなく、感謝して有り難いと思うのは、病気になってから毎年同じですが、今年はまた別の感情もありますね。

ごっくん

中国江西省南昌市郊外から、おじゃましま~す。
「鯛と菜の花の中華スープ」
「中華」という漢字を「豪華」に変えたいこの写真におもわず一言。関西は春爛漫なんですねえ。
南昌は4月3日から5日まで「清明節」(日本で言うと春のお彼岸)で休日です。日本語教師をしている私の宿舎には休日、学生達がよく遊びに来るのですが、(和食を作ってあげたくとも食材が~)と言い訳し、もっぱらカレーライスで接待です。(ああ、こんなスープを彼らに作ってあげたい)て言うか、自分で食べたい!
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シラトリチカオ

Author:シラトリチカオ
白取千夏雄/編集者。1965年函館市宝来町生まれ。元青林堂「ガロ」副編集長、97年よりフリー編集者・ライター・Web構築・管理他なんでも屋と、専門学校・大学講師など。
2005年夏、白血病告知・余命宣告を受けるが「慢性リンパ性白血病」に近いタイプと判明、無治療・対処療法、2014年より抗癌剤治療、巨脾へ放射線など治療開始。2015年夏左上眼瞼にメルケル細胞癌発症、眼瞼切除、再建手術、16年にかけて放射線も耳下腺に転移、郭清術、放射線治療中に再発、左眼球ごと摘出・皮膚移植。転移再発治療中ながらまだ生涯一編集者として生息中。
二十余年の東京在住ののち、07年から京都在住。09年5月、愛妻=漫画家・やまだ紫を脳出血で失った。
やまだ紫クロニクル

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