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2011-05-06(Fri)

近付く「別れ」

5月6日(金)

夕べは12時前に休む。
夜中も2度ほどシマの様子を見に行くが、呼吸は弱いものの、ちゃんと生きてくれている。頭蓋骨がはっきり判るほどに痩せ、背骨はごつごつと皮一枚で指にあたる。なのに腹は水が溜まっているせいで、ぷっくりしている。
いったん戻り、朝6時ころ起きて様子を見ると、タオルに緑色の液体が漏らしてあった。尿だろう…。

それにしてもシマは強い。
この状態になり、これだけ生きている猫は今まで見たことがない。実家で5匹、連れ合いと一緒になってから4匹、友人知人を入れるともっと多くの猫の死を見てきた。もちろん犬もいる。水を自力で飲めなくなった猫を輸液で生かしておくことができることも、その残酷さもよく知っている。
シマはもう下半身に力が入らない。両手だけでギリギリ立ち上がり、ふらふらしながら移動しようとして、一・二歩でへたり込む。そして首を支えることさえもしんどい様子で、じっとこちらの顔を見る。
目で何を言っているか解る。こっちへ来たいのだろう。タオルに乗せ、くるむようにタオルごと持ち上げて、あぐらをかいた足の内側へ置いてやる。以前甘えてそうしてきたように、シマは足に顎を乗せ、満足そうに目を閉じた。
もちろんゴロゴロとも言わないし、前のように手の爪を時々ググッとこちらに食い込ませたりもしない。
まだ「甘えたい」「甘えられて満足」という回路が生きている。目に力が残っていることに驚く。
満足した様子なので再びつづらに移し、仕事でパソコンに向かっていると、ふらふらと立ち上がってこちらへ来ようとしてへたりこんだ。そうしてまたじっと目を見ている。
これはひょっとして…と思い水を皿に入れて置いてやると、なんと水を舐めた。
顔のすぐ下にあてがうように皿を置いたので、顔を支えられずに顎が水につく、それが嫌なので飲むというよりは舐める…というのが弱った猫のパターンなのだが、明らかに「水を飲みたい」という意志があり、ちゃんと自分で舐めた。
ただたくさんは飲めないので、そのまま顔を支えていると、水面に鼻まで浸ってしまう。なので鼻から水を吸ってむせないように鼻の脇へ皿をずらしてみると、顔をそちらへ向けて舐める。明らかに「水を飲んでいる」。
正直、驚いた。
水を自力で飲めなくなったのはもう二週間も前、ここ一週間はスポイトで無理に飲ませようとしても頑なに顔をそむけて嫌がった。水が飲めなくなった猫は間違いなく、長くても十日で死ぬ。シマの場合は病院でかなり大量の点滴を入れたので、それで持っているだけで、時間の問題だと思っていたのだが…。
ただ、だからといって腹水はあり、回復する見込みのないことも知っている。
ああ、「末期の水」を自ら欲したのか。最後まで懸命に「生きる」ということに必死な姿を見せてくれている。

それから夕方までシマは落ち着きがなかった。水を少し飲めたのならひょっとして…と、生餌を柔らかくしたものも並べるが、そっちには全く興味も示さなかった。
5時過ぎになってケホンケホンと苦しそうに何度ももがき、胃の中にあった水を吐いた。吐瀉物は赤茶色で、やはり水も受け付けない体になっていたのだった。
「よしよし、怖いな、でも大丈夫」と言いつつ撫でてやる。虚空を見上げて、思わず連れに「最後は安らかに連れてってやってよ」と声をかける。
猫だって不安だろう。
どうしたんだろう、どうなっちゃうんだろう。怖い、助けて、と思っているかも知れない。
「しょせん動物」「猫ごときに」と言う人もいるだろうが、十数年共に暮らし、苦楽も共にし、たくさんの幸せをくれた大切な「家族」だ。そしてその「命」が恐らく、というか確実にもう助からないことが判っている。
暗いところに居たいという時期は過ぎたんじゃないか。そう思ってつづらを自分が座っているすぐ脇に移動させた。
数分おきに様子を見る、声をかけ撫でてやる。
先ほどまでの険しい顔が嘘のように、笑っているかのような穏やかな顔になり、荒かった呼吸は静かに、ゆっくりしたものになった。
触ると気のせいかちょっと体温が低い気がする。
猫は人間よりほんの少しだけ体温が高いので、人間はそれを暖かなぬくもりと感じ、わしっと抱く時にその暖かさと共に幸福感を噛みしめる。
シマはもう体の床側以外は骨が浮き、目は落ちくぼんでいるが、それでも撫でてやると明らかに喜ぶ。その喜びは、こちらと共通のものなのだ。
別れが確実に近付いている。
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コメント

ゆっくりと

数年前の我家での猫達の看取りを思い出しながら見守っています。
偉そうな物言いに聞こえてしまったら申し訳ありませんが、最後まで一緒にいられることこそが今の幸せなのだと思います。
ご本人のお体も心配ですが、苦しみ少なく、ゆっくりと一緒の時間を過ごせますよう、お祈りしております。

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Unknown

突然のコメントをすみません。
昨年の5月に新聞に載ったある方のエッセイで、
やまだ紫さんが1年も前にお亡くなりになっていたことを知りました。
それから時々こちらにお伺いしています。
シマちゃんのこと。
私も5日に紫さんが迎えに来てくれるのでは、と思っていました。
シマちゃんの残された時間が優しく過ぎますように。
シマちゃんが苦しむことがありませんように。
祈っています。

しらとり様も無理をなさいませんように。
どうぞお身体を労わってくださいませ。
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プロフィール

シラトリチカオ

Author:シラトリチカオ
白取千夏雄/編集者。1965年函館市宝来町生まれ。元青林堂「ガロ」副編集長、97年よりフリー編集者・ライター・Web構築・管理他なんでも屋と、専門学校・大学講師など。
2005年夏、白血病告知・余命宣告を受けるが「慢性リンパ性白血病」に近いタイプと判明、無治療・対処療法、2014年より抗癌剤治療、巨脾へ放射線など治療開始。2015年夏左上眼瞼にメルケル細胞癌発症、眼瞼切除、再建手術、16年にかけて放射線も耳下腺に転移、郭清術、放射線治療中に再発、左眼球ごと摘出・皮膚移植。転移再発治療中ながらまだ生涯一編集者として生息中。
二十余年の東京在住ののち、07年から京都在住。09年5月、愛妻=漫画家・やまだ紫を脳出血で失った。
やまだ紫クロニクル

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