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2005-09-06(Tue)

抗癌剤投与またも延期!

9月6日(火)

夕べは寝られたのが11時半過ぎ。ただそのせいか、夜中の点滴交換や見回りで数回目が覚めはしたが、朝6時半の検温まで比較的ぐっすり寝られた。鹿児島に上陸間近の大型台風のニュースやワイドショーを見る。日テレのワイドショーでよく見る男性レポーターが、鹿児島湾に面したテレビ局前の海水が川のように流れ込んでくる歩道で中腰になりながら「私は十数年レポーターをしていますが、台風の中継でこのように立っていることが出来ないほど強い風を受けたのは初めてです!」みたいなことを芝居がかった口調でしゃべっている。スタジオのアナウンサーが「気をつけてレポートしてください」と引き取って音声が途切れた直後、まだ1秒ほど現地からの映像が流れたのだが、そのレポーター氏は必死の形相で中腰だったはずがスッと立ち上がって右にハケていった。ま、TVの世界なんてそんなものだろう。(ちなみに夕方さらに台風が接近した同じ場所からのレポートでは女性記者がもっと暴風の中立って中継していた)

昼食後、教授回診で科長の先生が来た。今日は明日からの抗癌剤投与に備えて、今後の治療方針、スケジュールや使用薬剤、副作用など全般の説明が、午後2時から俺と家族にあると言われていた日だ。教授は俺の首のリンパ節を触り、「うーん、小さくなってる?」と聞くので、「いえ、日によって大きい時もあったりするんですが…今日は小さいかも知れません。あと右脇の下の腫瘍は明らかに入院前の方が大きくてごろごろしてたんですけど」と、後ろにいた主治医だったU先生を見ると、「そうそう」という表情でうなずいていた。仰向けになって脾臓の腫れを触診、「これはここまで来てるんだな…」と下腹部、ほとんどソケイ部の上まで肥大している脾臓を確認。「ともかく、今日2時からご説明させていただきますので」とのこと。
主治医のS先生を呼び止めて、「で、どういう感じなんでしょうか?」と聞くと、「白取さんの場合、非常に進行が遅いというか、症状に変化がないんですよね」というので「だとすると抗癌剤があまり効かない、聞きにくいという状態なんですよね」というと「そうですね、それもありますが…白血球の数値も低いことは低いんですが…ともかくそのあたりを含めましていろいろ検討している次第です」という。また「症例自体が何度も申し上げてますように大変珍しいので、国内の大家と言われる先生も含めて、さまざまな意見を今集めているものですから、やはり症例が少ないのでその辺は慎重に行きたいと思いますので」とのこと。俺も「そうですね、あせって治療に入る必要のない状態ならなおさら慎重にいろいろご検討いただいたうえで、最善の方法を見つけていただいた方が安心ですし」というと「そうですね、ともかく午後にまたお伺いしてご説明差し上げますので」とのことで去っていった。

その後昼飯を食い終わって薬を飲み、一息ついて考えた。
抗癌剤は、癌細胞が活発に増殖を続けているからこそ、ガツンとそれを叩く薬だ。今の俺のようにじわじわと非常にゆっくりと悪くなっている状態だと、効き目も出にくいのかも知れないな。これが慢性リンパ性白血病=CLLのくすぶり型、みたいなものであれば、通常はやはり急に白血球数が上がってきた時などを見計らって治療をぶつけるらしいのだが、俺の場合もそうだということだろうか。だとすれば一度退院し、免疫低下に注意しながら外来へ通ってまめに検査をしてモニタしていき、いつになるか解らないが症状が急変した時=治療どきに入院して抗癌剤投与、ということにならないだろうか。何でもない、これまで過ごしてきた日々の「日常」、それこそが最も今の自分が望んでいたものだ。たとえ癌に侵されていたとしても、治療を急いですることでかえって生命に危険が生じるのなら、それまで家で暮らせる方がいい。一度は抗癌剤も過酷な治療も覚悟はした、数ヶ月か一年は出られないかも知れないと思った、であれば退院させてくれて、マスクの着用や消毒、感染への注意などで不便はしようが、家で連れ合いや猫たちと暮らせる方がいいに決まっている。もちろんそれで癌でさえなければ…とは思うが、少なくとも日常がまた戻ることを想像しただけで、たまらなく嬉しい。もちろん、そう説明されたわけではないし、そんな虫のいい「闘病」などなかろう。だからヌカ喜びになることも解っている。けれど「家に帰る」と想像しただけで、涙が出るほど嬉しい。

1時過ぎ、連れ合いと連れのお姉さんが二人で来てくれる。台風のワイドショーを見て待っていると、2時10分くらいにS先生が呼びに来る。最初ご家族だけという感じだったが、俺も点滴の台を押しながら、出て行くと、問題ないようだったので3人でナースステーションの奥の一角に通された。先ほど教授回診で来てくれた血膠内科長の先生がほとんど説明をしてくれ、主治医のS先生は隣でうなづいているだけだったが、要するにこれまで聞いていたことと同じで、CLLの一種の大変珍しいT細胞性前リンパ急性白血病=T-PLLでほぼ間違いないとは思うが、若干細胞の形や症状などに疑問点もあって、決めかねている部分があるという。なので、最終的に決めるのはもちろん自分たちではあるが、判断材料としては多い方がいいという意味で、病理学者と臨床家の先生に細胞標本を送って診断を仰いでいるところだとのこと。
臨床家の大家の先生(元阪大の方で現在は那智勝浦にいるという)には手紙でお願いをしたが、最初の病理学者の方へ送った細胞見本が戻ってきたのをさらに送る手配になっていて、結局最終的な判断が遅れているということだった。つまりその分治療開始=抗癌剤投与が遅れているが、血液のデータなどを見ても、リンパ節や脾臓の腫瘍の様子を見ても、ずっと同じような状態が続いており、良くなっても悪くなってもいない。従ってこの一週間の抗癌剤投与の延期で急激に悪くなることは考えにくいので、その間になるべくきっちりとした診断をした上で使う薬も決め、治療にかかりたい、なのでそれまで待っていただくことになる、ということ。
抗癌剤投与はまた一週間ほど先に延びることになった。
もちろん一時退院してとか外来でとか、そういう虫のいい話にはならなかった、当たり前だが。それと、こういうくすぶり型でいても、突然急性転化するかもしれない、その場合にはすぐに治療を開始することもある、ということ。要するに(抗癌剤は最初に使う薬剤が最も重要な役目を担う、ここで出来るだけ多くの癌細胞を叩いておくことが重要なのだ)使う薬は最も効果的なものにしたいので、そのためには俺の珍しい病気の型が従来の治療方法のどれにあてはめれば最も効果的か、あるいはどの抗癌剤を投与するのが最もいいのかを決定する判断材料を待っている、ということ。
何か質問ありますか、ということだったが、もう大筋で理解しているので問題なく、「脾臓摘出の可能性はありますか」とか「寛解導入後に移植をする場合、第一寛解期以降の再発からだと生存率が下がっていくんですね」とか確認のために一つ二つ聞いたくらいで辞す。S先生が抗癌剤投与が延びたことで、「今は炎症反応もないし点滴もしばらく外しましょう」ということになった。


2時半過ぎに部屋に戻ってしばらくしてお姉さんと連れは下に8月分の入院費の会計と歯科外来治療費の支払いに行ってくれるついでにお茶してくると出て行った。3時前には看護婦さんが来て、「じゃあこれ抜きましょうねー」と言って点滴を抜いてくれた。これから抗癌剤投与のスケジュールが決まるまで、しばらく自由の身。感染に弱い状態は続いているものの、現在のところは抗生剤も必要ないとのこと、要するにまた準備期間に逆戻りということだ。やれやれ。
その後は三人で台風関連のワイドショーの話をしたり、病気の話をしていて、4時半前に連れは台風が近いせいか(三年前の腎臓摘出手術痕の)腹部が痛むといい、お姉さんと早めに帰るというので、ドアのところで見送る。


それにしても点滴が外れただけでこれだけ動きが楽とは。これが当たり前なのだが、健康のありがたみというのを今さらながら思う。ふだん、当たり前にしていることが出来なくなったりする、それは入院治療中なら当たり前とはいえ、解っていても本当に煩わしいことが多い。いちいち小便を溜めねばならないとか、食後は決められた薬剤をキチッと飲まないといけないこととか、そんなことはたいしたことではない。最も大きいのはやはり点滴、それも24時間というのが実にいろいろと不便だし、まず熟睡は出来ないから、そういう面でのストレスは大きい。また点滴を長く入れているとその血管が固くなったりいたんだりして、血管そのものが痛くなったり輸液が漏れたりするようになる。となるとそのルートを一定期間ごとに変えなければならないのだが、これがまたどの血管にするか、それによってまた痛みや不便度が変わったりもするので、ともかく取れて身軽になれたのが嬉しい。
夕飯をはさんでPC作業をしていると、夜の当直の看護婦さんが来て「点滴取れましたねー、良かったですねー」と言いつつ検温など。点滴がない間はお風呂もOKだし、あと週末の一時外泊も希望してみますか、とのこと。俺は「それはもちろん出来るならお願いしたいけれども、自分の体の免疫力が落ちていることはよく解っているから、絶対外泊したい、というようなわがままは言うつもりはない、ただ主治医の先生から見て、これこれこういうことに気をつけるようにしてもらえれば、週末は自宅で過ごしても問題ない、というのであればお願いしたい」と言う。それは本音でもある。抗癌剤治療前に、たとえつまらん風邪をひいてしまっても怖い。ネコにひっかかれたところが化膿するのも怖いし、何があるか解らないからだ。俺の今の最大の目標は、癌と戦うことだ。そのために万全に体調も精神面も整えておきたい。外泊がその妨げになる危険が大きいと言われれば、それは全く何の問題もなく受け入れられる。
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コメント

お医者さん

白取先生を担当している、お医者さんたちが、慎重で正直そうなのは(もちろん、白取先生が、それだけ熱心にご自身の病気の研究をなさっているからでしょうけれど)私にとってもうれしいことです。

一時外出

週末までに容態の急変だとか、緊急の検査・治療の必要があるという所見が出ない限り、土曜日に外出できそうです。
とはいえ足がけっこう萎えちゃってるので慎重に動かないと…という感じ。
皆さんコメントどうもっす。ROMられてるより、こうして励ましのコメントをいただけるとやっぱり嬉しいっすね。ていうかつくづく、誰が本当に心配してくれるのか、こういうことになって人のありがたみがわかります。逆に普段いい顔しといて無視、とかよお(あ、ヤベ)

Unknown

熟睡できないというのは辛かったでしょうから、点滴が取れてゆっくりと眠れるのは良かったですね。病院にいるうちは何よりのことかも知れないですね。まだまだ大変ですが、最後に改めて聞かれた病気と闘う決意や、思いのほか画像の白取さんの腕っ節が逞しいので少し安心してしまいました。頑張ってください。

あと見てない方のために白取さんが紹介されてた動画→http://www5a.biglobe.ne.jp/~royce/movie/050907-1.mpg" target=_blank>http://www5a.biglobe.ne.jp/~royce/movie/050907-1.mpg

うああああ

点滴とか注射って苦手なんですわ。ひいい。
でも、楽になって良かったですね。

全然違う話ですが。
効果があるかは鰯の頭かもしれませんが、こんなの。
免疫を高めるハーブだそうです。
http://www.menekiplaza.com/herb.html" target=_blank>http://www.menekiplaza.com/herb.html

Unknown

治療法がなかなか定まらないのは、つらいものがありますね。
根性ナシの俺だったら、そうとうなストレスを溜め込んじゃいそうです。
序盤から心理戦のような様相ですが、すでに戦い。がんばってください。(こんな安易な言葉しか出てきませんが。)

点滴って、腕がぼろぼろになるんですよね。
自分は高校の頃に大腸をわずらって入院&点滴生活でした。
なんだか、注射針の跡で覚せい剤中毒者の腕みたいになっていましたよ。
その間、絶食だったんですけど、点滴ごときで高校生のカロリーが満たされるはずも無く(数値上はしらないけど)。眠れぬ夜にベッドの上でひとりで「ハンバーガを食べる真似」とかをしていたのを覚えています。

点滴とれて、よかった。

のっけの台風レポートの下りで、思わず笑ってしまいました。
大変なときにも、ユーモアあふれる文章が書けるなんて。
白取さん、尊敬しますよ。
たぶん、そんな強さが癌の進行を遅らせているのではないかと思います。

看護婦さんから「一時外泊」なんて言葉が聞かれるほどだから、緒戦は優勢っていう証拠ですね。…油断はいけませんけど。
何はともあれ、点滴がとれて良かった。きっとよく眠れることでしょう。
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シラトリチカオ

Author:シラトリチカオ
白取千夏雄/編集者。1965年函館市宝来町生まれ。元青林堂「ガロ」副編集長、97年よりフリー編集者・ライター・Web構築・管理他なんでも屋と、専門学校・大学講師など。
2005年夏、白血病告知・余命宣告を受けるが「慢性リンパ性白血病」に近いタイプと判明、無治療・対処療法、2014年より抗癌剤治療、巨脾へ放射線など治療開始。2015年夏左上眼瞼にメルケル細胞癌発症、眼瞼切除、再建手術、16年にかけて放射線も耳下腺に転移、郭清術、放射線治療中に再発、左眼球ごと摘出・皮膚移植。転移再発治療中ながらまだ生涯一編集者として生息中。
二十余年の東京在住ののち、07年から京都在住。09年5月、愛妻=漫画家・やまだ紫を脳出血で失った。
やまだ紫クロニクル

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